「SAKE」という言葉を目にしたことはあるだろうか。「SAKE」は、海外における日本酒のことを指し、今世界で「SAKE」が注目されている。なぜ注目されるようになったのか、また海外に向けた日本酒の戦略を見てみたいと思う。
「SAKE」が海外で知れ渡った背景
2013年12月、ユネスコ無形文化遺産に日本の「和食」が登録されたのは記憶に新しいだろう。これを契機に和食文化が少しずつ世界に浸透していった。
「和食」が登録されたと言っても、寿司や天ぷらなど料理そのものが登録されたわけではなく、「和食文化」が無形遺産として評価されたのだ。
ユネスコが定める和食の定義
- 多様で新鮮な食材と、その持ち味の尊重
- 健康的な食生活を支える栄養バランス
- 年中行儀との密接な関係
つまり、和食の特徴である「日本の四季」に寄り添って培われてきた、食に関する習わしが評価されたのである。
この「和食」が無形文化遺産に登録されたことで和食ブームが世界中で起こっている。そして、そのブームから日本酒も注目されるようになった。これを皮切りに日本酒の海外での需要も今まで以上に増えたのだ。
海外で日本酒の需要が増加した証に、2015年度の日本酒の輸出金額は約140億円(対前年比133.0%)となり、4年連続で過去最高額を記録した。
工夫をこらす、「SAKE」の世界進出
日本酒が「SAKE」として世界に進出・浸透し、世界のお酒と対抗するために、全国各地の酒蔵は様々な戦術を行ってきた。そこでいくつかの戦略を紹介しようと思う。
世界の宗教に対応する:コーシャライセンス
日本酒が色んな人種に浸透するために行った戦略の一つが“コーシャライセンス”の獲得である。
コーシャとは、ユダヤ教の教義に従った安全な食品であるという認定を得た飲食品のことで、コーシャライセンスを取得した食べ物はアメリカでは安心・安全なイメージがあり、ユダヤ教徒以外にも人気があると言われている。
実際に、旭酒造(株)の“獺祭”や(株)南部美人の“南部美人”などの日本酒がコーシャライセンスを取得している。
和食だけではない:国に合った日本酒の飲み方
世界では、冷酒を白ワイングラスで飲むのが通とされてる地域もあり、飲み方も和食とだけでなく、洋食・中華・韓国料理など様々な国の料理との飲み合わせを提案するイベントを各地で行っている。フランスではチーズと一緒に日本酒を嗜む人も多いという。
日本酒を世界に広める:クールジャパン戦略
クールジャパン戦略では、日本酒における地域コンソーシアムの形成のため、プロデューサー人材の派遣が行われている。事業例としては、数馬酒造(株)の日本酒と神社をテーマにしたビジネススタイル(聖地巡盃)の構築などが挙げられる。
また、国内におけるマッチング事業も推進されており、海外で稼ぐために異業種連帯の機会を設けている。吉野酒造(株)では、ナイジェリアに放送局を開設する日本のアニメ製作会社の仲介で、日本酒で仕込んだ「梅酒」を現地食品卸会社へ輸出した。
公の場で日本酒を世界にアピール
2015年にはロンドンにて世界最大級のワインコンテストにて、(株)本家松浦酒造場の「ナルトタイ 純米 水ト米」が最高金賞を受賞し注目を集めた。
また、2016年伊勢志摩サミットでは、三重県の清水清三郎商の“作”大田酒造の“半蔵”を世界各国のVIPが口にし、話題となった。
日本の酒蔵の戦略
国内には沢山の小さな酒蔵があるが、なかなか小さな酒蔵が世界に進出するのは難しいのが事実だ。そんな酒蔵の為に、クラウドファウンディングや海外市場向けの製品を作り出すマーケティングのサービスも数多く存在している。
また、酒蔵のホームページを英語対応にしたり、国税庁の取り組みで海外の酒類教育機関の日本酒講座に対する支援や、在日外交官・大使を対象に酒蔵ツアーを開催するなど世界に日本酒をアピールしてきた。
株式会社西山酒造場
株式会社西山酒造場では、ジェトロ(日本貿易振興機構)を活用し、海外の市場に参入。海外で売られている日本酒は、パッケージが似たり寄ったりだった所に目をつけ、スタイリッシュなパッケージとデザインにすることで若い世代の富裕層をターゲットにした。今ではその戦略が功を奏し、売り上げの全体の3割が海外だという。
妙高酒造株式会社
妙高酒造(株)では、世界市場に向けて世界の様々な料理と合うように「Montmeru(モンメル)」という新ブランドを設立。ワイン以上に世界各国の料理に合う酒として、ワイン市場への積極的な展開を目指している。
永井酒造株式会社
永井酒造(株)の「水芭蕉ピュア」は、世界ではじめて瓶内二次発酵で製造された発泡日本酒だ。永井酒造はスパークリングワインに代わる日本酒の開発に力を入れ、見事、世界発スパークリングの日本酒の製造に成功した。この開発のおかげで、和食レストランだけでなく、ミシュランに載るような世界のレストランでも高く評価されている。
我々ビジネスマンが会食などでも口にすることの多い日本酒だが、名前を変えた「SAKE」は世界で活躍している。酒蔵の歴史や世界で活躍するための戦略などの知識を持っていれば、海外からの来客をもてなす際に“SAKEの肴”になるだろう。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう