日本は外国との争いとは無縁の国、そう思っている人も多い。だが、領土問題はどうだろうか。血を流す争いではないが、れっきとした外国との争いである。ただ、領土問題は私たちからしたら馴染みのない問題であり、その影響も実感しづらい。本記事では日本が抱えている領土問題を再確認していきたい。
知っておきたい領土問題のためのワード
出典:www.wallpapersdb.org 海に囲まれた日本の領土問題のニュースで度々登場するワード「EEZ」。EEZの他にも領海や接続海域、公海など用語が多く、何となくはわかるけど正確には理解していない、という人も多いのではないだろうか。領土問題を正確に理解するためにも知っておきたいワードを簡潔に解説したい。
出典:www1.kaiho.mlit.go.jp領海
領海とはもっとも領土から近く、領土から12海里(約22.2km)離れている海域。海外船は安全を害さない範囲で運航することができる。領海には領土と同じく本国の主権が及ぶ。すなわち、国の法律が及んでいるのだ。よって海外船は勝手に漁や貿易をすることは許されない。
接続水域
領土から24海里(約44.4km)離れている海域が接続水域。この海域では密漁や密入国などの法令違反をする恐れがある船を取り締まることができる。EEZに含まれていることもポイントだ。
EEZ(排他的経済水域)
EEZ(排他的経済水域)は領土から200海里(約370.4km)までの海域。国はこの海域で資源や人工島開発、漁業の優先権を持っている。許可があれば外国船も漁をすることができるが、そうでない船は取り締まりの対象となる。
公海
どこの国の影響も受けない海域。各国が自由に航海、漁をすることができる。
日本の海域は世界第6位
出典:garden.accueil.ne.jp 上の画でわかるように、日本の領海、EEZはかなり広い。日本の領土の広さは約38万km²で世界第61位だが、領海とEEZを足した面積は約448万km²で世界第6位になる。日本の領土問題を理解する上で、EEZでの利権をめぐる問題は非常に重要だ。次項からは日本が抱える領土問題を解説していく。
G20サミットで新たな展開へ:北方領土
by sjrankin 北方領土とは歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島からなる地域を指す。第二次世界大戦でロシアが占領してからはロシア人が住んでいて、現在でも実効支配している。日本政府は自国の領土と主張しているが、世界的にも北方領土はロシアの領土だという認識が強い。
両国が北方領土獲得に躍起になる理由の一つに資源がある。北方領土周辺には豊富な石油、天然ガスが眠っており、その総量は日本の一年間の消費量に匹敵する3億6千万トンと推計されている。他にも択捉島にはレニウムというレアメタルが発掘されており、別名「宝島」とも言われるほど地下資源が豊富だ。
また。北方領土近海のオホーツク海は世界有数の豊富な漁場だ。オホーツク海で取れる鮭やホタテは私たちの生活にも馴染みのあるもので、オホーツク海で漁業が出来なくなると私たちの生活にも影響することがわかる。
しかし、実効支配しているのはロシアであり、オホーツク海にもロシアの目が光っている。日本漁船が北方領土近海で漁業をしていた際、銃撃されるなどの事件があったため、現在では協定が結ばれ、入漁料を支払えば漁が認められているという状態だ。
9月の杭州で開かれたG20サミットで、ロシアのプーチン大統領が歯舞諸島と色丹島の2島返還案を提示したが、日本政府はこれを拒否した。60年以上進展のない北方領土問題だが、12月にプーチン大統領が訪日することから歩み寄りが期待される。
歴史認識の歪み:竹島
by turnerw82 竹島は日本、韓国双方が領土権を主張している日本海に浮かぶ島。島根県所属の島となっているが、実効支配しているのは韓国である。この領土問題では、二国間で竹島の歴史認識が違うことから問題が堂々巡りになっている。
竹島は狭い日本海にあることから、EEZを決める上でも障害になった。そこで漁業権を決める協定では竹島をないものと考え、韓国は朝鮮半島の領土、日本は日本列島の領土を基準に海域を制定した。
また、竹島は韓国の政治的パフォーマンスで度々使われることがある。韓国政治では反日が政策のカードとして切られることがあり、竹島もその一環だ。2012年、当時大統領だった李明博の支持率は金銭がらみの不祥事などにより下がっていた。そこで、国民の日本への歴史問題の不満を解消するため現職大統領として初めて竹島を訪問し、日韓両国で大きく報道された。
中国と緊張が続く:尖閣諸島
by heuristicus 最後に紹介するのは東シナ海にある沖縄県所属の尖閣諸島。実効支配しているのは日本だが、地下資源が発掘された1970年ごろから中国、台湾が領有権を主張し始めた。その地下資源も尖閣諸島に及ぶ主権が曖昧になっているため、本格的な調査が行われていない。
豊富な地下資源が尖閣諸島問題をこじらせている要因の一つであるが、近年は中国の露骨な領土拡張戦略が目立ってきた。日本が自国のEEZとみなす海域に中国漁船が侵入する事件は後を絶たない。
それらの事件で特に注目を集めた事件は2010年に起きた衝突事件だろう。日本領海をパトロールしていた海上保安庁の船と、領海からの退去を勧告された中国漁船が衝突した事件である。中国への配慮から非公開になっていた衝突時の動画を海上保安官が動画サイトで公開したことで、波紋を呼んだ。機密情報を公務員が漏らしたことや政府の情報公開が消極的だったことが批判されたが、それ以上に尖閣諸島の現状が物議をかもすことになった。
自国の国益を求めるのが国家の性だが、求めすぎたゆえに武力衝突が起きるのはどの国も望んでいないはずだ。各国が納得する解決策、せめて妥協策を見出すことがさらなる国際協力への近道だ。
また、領土問題は他の問題に対処するためのカードとして使われることがある。ロシアのクリミヤ半島編入への経済制裁に日本が加担したことで、北方領土の対話が後退したことがその例だ。領土問題だけではなく、他の対外問題と併せて考えることで国際情勢をもっと理解できるだろう。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう