現代の日本の景気は良化の兆しを見せることはなく、日本は長期にわたる経済停滞を抜け出せずにいます。そんな中、イノベーション・新しい価値を創造することの重要性が高まっています。
本記事では、経済学者であり経済成長の創案者、ヨーゼフ・アロイス・シュンペーターのイノベーションについてご説明します。
イノベーションを起こせる人になりたい人や、価値創造できる人材になりたい人はぜひ参考にしてください。
- シュンペーターが語る資本主義経済のイノベーションとは?
- 「起業家」こそが資本主義的主体になる
- イノベーションを起こす・価値創造できる人材になる5つのポイント
シュンペーターが語る資本主義経済のイノベーションとは?
「イノベーション」という言葉を最近耳にすることも多いのではないでしょうか。特に、Apple社のスティーブ・ジョブズ氏が、iPhoneやiPod等の革新的な製品を開発したことは、イノベーションという言葉が一躍有名となるきっかけを作り出したといえます。
実は、このイノベーションという概念は、シュンペーターが創出したものなのです。シュンペーターは資本主義がイノベーションを基軸にし回転していると分析し、企業が行うイノベーションこそが経済成長をもたらすという理念を構築しました。
創造的破壊の過程こそが資本主義の本質
シュンペーターの考え方として有名なものが創造的破壊の過程です。
イノベーションには、発展と衰退がつきものです。新たな技術が生まれたり、いまだかつてないマーケットが確立されたりすれば、旧産業界のシステムは刷新され、既存のマーケットが消滅する可能性が大いにあります。これによって、一部の企業では解雇者が増加する可能性が常にあります。
しかし、シュンペーターは資本主義の本質を、テクノロジーの刷新、すなわちイノベーションに見出しました。そのため、イノベーションを展開する上で新たな市場に移るための人員整理は仕方のない事だと捉え、「創造」であると同時に、「破壊」でもあると定義しました。つまり、創造的破壊の過程こそ資本主義の内在的な存在根拠なのだと考えたのです。
シュンペーターが考える5つのイノベーションモデル
5つに分類されるイノベーションの要因
- まだ消費者の間で知られていない新しい財貨の生産
- 特定の産業部門における、新しい生産方法の導入
- 新しい販路や市場の開拓
- 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
- 独占的地位の形成や打破をもたらす新しい組織の実現
シュンペーターの危惧していた未来=今の日本経済?
最近、シュンペーターが話題となっている理由は、シュンペーターの思想がまるで予言のように、現代の日本経済を映し出しているといわれているからです。
「イノベーションの後に不況が必ず来る」——これは一見、マイナスな感情を抱きがちですが、そうではありません。このことはシュンペーターの考える資本主義の定義であり、この後に再びイノベーションによる経済発展、つまり好況が起こればいいということです。
しかし、シュンペーターが本当に危惧していた点は、企業が発展を遂げたときイノベーションを起こすことよりも、生き残ることだけを重視してしまい新たなイノベーションを起こすことを考えなくなることです。さもなくば、イノベーションがもたらす景気循環が停滞してしまい、好景気は訪れないということになります。
果たして、現代の日本の企業はどうでしょうか。革新を求めようとせず、「技術だけはあります」ということになっていないでしょうか。シュンペーターは日本の抜けられない不況をイノベーションを起こす気概のなさという視点から予知していたのかもしれません。
「起業家」こそが資本主義的主体になる
では、これからのビジネスマンは何を意識するべきなのでしょうか。
シュンペーターは、資本主義社会における経済的変化のメカニズムは、「起業家」活動を軸として回転すると考えました。ここでいう起業家とは、シュンペーター理論の「主役」です。
そんな、シュンペーターが主役と位置付ける起業家は、経営者とも、資産家とも、発明家とも異なっています。
起業家と混同されやすいのは、発明家です。発明家が単にアイデアを生み出して終わるのに対して、起業家はそれをビジネスとして市場に展開します。経営者の場合は、イノベーションを生み出すというよりは、イノベーションができ上がったうえで、それを利用する存在です。また、資産を有し、イノベーションに投資する資産家とも異なります。
シュンペーターは、現代では、ほぼ消滅したマルクス主義のような、労働者に資本主義の「主役」を見出すのではなく、根本的な「技術」の洞察に戻って、イノベーションの担い手である「起業家」の活動にこそ真の価値を見出したのです。
重要なことは、シュンペーターが、資本主義をイノベーションに見出しているため、それをビジネスとして着想できる存在者=「起業家」こそが、真の資本主義的主体であることです。そして、この「起業家」がこれからの日本経済を支える重要な人材なのだといえます。
イノベーションを起こす・価値創造できる人材になる5つのポイント
日本の停滞してしまった社会には「起業家」が必要なことをご紹介しました。
以下では、シュンペーターのいう「起業家」つまりイノベーションを起こす・価値創造できる人材になる方法についてご紹介します。
1.さまざまなことに好奇心を持つ
イノベーションを起こす・価値創造できる人材になるための1つ目のポイントは、さまざまなことに好奇心を持つことです。
新しいことを作り出すためには、古いものを知る必要があります。一見矛盾しているように思える人もいるのではないでしょうか。
しかし、新しいものは、過去の経験や努力によって見つけられるようになります。過去に使われていたものを知り、分析し、何が足りないのかを考えてみましょう。
また、さまざまなものに好奇心を持っていると、仕事とは全く関係のない知識や、仕事と密に関係する知識などさまざまな知識が手に入ります。後者の知識は仕事に直接利益をもたらし、前者は意外なところで力を発揮する可能性があります。
調べれば何でもわかる時代でも、情報は自分の頭の中に入れる必要があるのかと疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。頭の中に入っていないと、他の情報と組み合わせて使えません。
情報は組み合わせてこそ価値があるものです。好奇心を持ち、調べたことは必ずストックしておく、残すことをおすすめします。
2.効率化できないか考える
イノベーションを起こす・価値創造できる人材になるための2つ目のポイントは、効率化できないか考えることです。
マニュアルを信じすぎた仕事をしている人もいるのではないでしょうか。もっと効率化できそうな過程があっても、マニュアルと違うことをするのは気がひけると思っている人もいるのではないでしょう。
このように、新たなことに挑戦せず、昔の考えを踏襲していくだけではイノベーションは起こることはありません。
今や新しい技術がたくさんと出ています。外部の技術を利用してさらに効率化できないのか考えてみましょう。
古いものを新しくすることで、イノベーションを起こしてみてはいかがでしょうか。
3.自問自答を繰り返す
イノベーションを起こす・価値創造できる人材になるための3つ目のポイントは、自問自答を繰り返すことです。
毎日の仕事で疑問に思っていることはあることがある人もいるのではないでしょうか。イノベーションの種はその「疑問」です。
本当はこうしたほうがいいのではないかと疑問に思っていることを改善することでイノベーションが起こります。
しかし、疑問のすべてがイノベーションにつながるわけではありません。何度も考えてその考えが本当に正しいのか間違っているのかを考えてみましょう。
特に昔から受け継がれてきたものを改良するのは、保守派が多い企業では難しいのではないでしょうか。自分の意見を採用することによってえられる利益、不利益なども全て考えてから、「こうするべきではないのか」と提案することをおすすめします。
4.ユーザーについて深く考える
イノベーションを起こす・価値創造できる人材になるための4つ目のポイントは、ユーザーについて深く考えることです。
商品を売るとき、「売れるためにはどうすればいいのか」を考えがちです。その時点で売れる商品を作るのは難しいでしょう。
なぜなら、商品を買ってもらう「ユーザー」のことを忘れているからです。どのように工夫したらユーザーが手にとってくれるのかとユーザーメインで考えましょう。
5.とにかくアイデアをアウトプットし続ける
イノベーションを起こす・価値創造できる人材になるための5つ目のポイントは、とにかくアイデアをアウトプットし続けることです。
「ここはこうしたほうがいいのじゃないか」と思っているだけでは何も変えられません。考えはアウトプットして初めて価値を持ちます。
アウトプットして実際の計画を立ててみると、自分のプランの欠点が見つかったり、成功を掴んだりするかもしれません。
イノベーションを意識して業務に取り組もう
- イノベーションを起こさなければ、不況からは脱せない
- 「起業家」になることによって、イノベーションを起こす
- 好奇心を持ち、自問自答を繰り返すことによって、イノベーションを起こす
本記事では、シュンペーターのイノベーションについてご紹介しました。
停滞している社会で、イノベーターは真に必要とされています。つまり、イノベーションを起こしやすくなっているといっても過言ではありません。
本記事を参考に、「起業家」になるための努力をしてみてはいかがでしょうか。
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