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リストラは転機である。:チャンスを示唆する「米IT企業の大量リストラ」から学ぶこと

Mariko Idehara

2018/09/08(最終更新日:2018/09/08)


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出典:mbacasecomp.com
 最近、アメリカの大規模なリストラが目立つ。直近では、アメリカ大手IT企業であるCisco Systemsが大規模リストラを行う予定であることがわかっている。

 従業員数7万3,000人に対し、9,000人から1万4,000人をリストラするという大規模なものだ。

 正確な理由は未だ公表されていないが、Cisco Systemの中枢がハードウェアからソフトウェアに移行し、注力事業の変換による人員削減が要因ではないかとされている。

 また、買収したNokiaの社員3万2,000人を解雇していたMicrosoftも、新たにスマートフォン事業の合理化を理由に追加で1,850人解雇することを発表している。

 なぜ市場が活発なIT業界で大規模なリストラが行われるのか?今回はその理由と背景にある体制に迫っていく。

なぜ超有名IT企業が大規模リストラを行うのか?

 MicrosoftやCisco Systemsといったアメリカ大手IT企業が大規模リストラを次々に行っている。

 IT業界で大きなシェアをもつ企業が、なぜ計画性もなく大規模なリストラを実施せざるをえないのか。そこにはIT企業のシェアの拡大が隠れている。

アメリカのIT企業は次のステップへ向かっている

 現在アメリカ大手企業の大規模リストラが目立ち、業界の不振が垣間見えているようだが、実際は既存のビジネスから新たなビジネスの開拓へ向かうための一時的な休息とみる見方が強い。

 アメリカのIT企業のイノベーションは、すでに新たな事業計画に向いているのだ。

 先を見越した大手企業が次々と新事業のため事業形態を再構築していく一方で、そのイノベーションの熾烈な争いに乗り遅れる会社も存在する。

 急速な進展を続けるIT業界を生き抜くには、有名IT企業ですら既存の体制に大まかな改変を加えて、新たなフォーカスエリアの構築を行っていく必要があるのだ。

アメリカのリストラ制度

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出典:www.orlofskylaw.com

大規模リストラで適用されるレイオフ

 アメリカで近年行われている大規模なリストラは、レイオフ(一時解雇)を指す。

 レイオフの本来の意味は企業の事業が悪化した際に、事業回復時の再雇用を条件に一時的に解雇する一時解雇を指していた。

 しかし近年は、再雇用はほとんど行われず「解雇」と同様な意味をもつ。アメリカは雇用規制が緩和されているので、日本よりも比較的簡単にレイオフが行えるのだ。

雇用規制を緩和する雇用契約の存在

 アメリカで雇用規制が緩和されている理由は“At-will employment”という雇用形態にある。

 これは雇用契約時に行われるもので、企業側と従業員側の双方の合意のもと雇用が成立するというものである。

 従って、両者間の意志による契約となるので、いかなる理由、いつ何時であれ、雇用を解除することができる。

 これがアメリカの解雇が許容される法的根拠となり、また人材が流動する所以である。

リストラ=チャンス:優秀な人材の獲得に着目するアメリカ

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出典:www.hksilicon.com
 リストラは基本的に企業の事業悪化時に、事業縮小や経営維持を目的とする人件費削減のために行われる。

 また、事業転換を行う際にもその部門ごとリストラを行う。先に述べたMicrosoftのリストラはこれにあたる。

 大規模なリストラは、人件費の中に含まれる光熱費や場所の提供が人員とともに無くなるので、大きな経費削減となる。大規模に行われるのは、一斉に行うとこのような経費削減が見込めるという思惑もあるのだ。

 経営立て直しの一側面しかフィーチャーされていないと単なる人員削減の施策にしか見えないが、リストラを支える体制がアメリカには存在する。

 その体制により、雇い主と被雇用者双方がより経営が良い方向に向かう秘密が隠されている。

アメリカの年金体制

 アメリカは能力主義かつ先ほど述べた雇用形態によって、頻繁にリストラを行う。

 また、アメリカでは、“K401”と呼ばれる年金体制が存在し、転職しても年金を担保できる体制がある。それゆえ、リストラを宣告されても日本の解雇ほど大きな打撃はないのだ。

 人によっては専門的知識を武器に独立して起業する人もいる。この体制を利用して次のキャリアを考える人も少なくはない。

アメリカの雇用環境

 アメリカは能力主義で、能力に見合わなければ即解雇というのが当たり前だ。そして、基本的に人材の受け入れには寛容である。

 日本のように新卒を大量に採用して教育するよりも、中途採用でより優秀な人材を獲得する方が効率が良いと考えられているのだ。

 このように受入が柔軟であるゆえ、リストラされて一回現場を離れ、学問を学び直してきた者や一回解雇した者が独立して起業することも多い。そうした独自の技術をもつベンチャー企業を新たな資本として内部に取り込むこともできる。

 これらの体制により、企業側が積極的にリストラを行い、事業を拡大していく一方で、個人がその企業体制や時代の潮流に柔軟に応じていく力を自然と身につけていく可能性が高い。

 短期的にみると、大規模な人員削減はコストがかかるが、この柔軟な雇用形態により可能にする企業の成長は中長期的に見た時にメリットがある。

 レイオフの導入により、個人や企業両者の選択の幅が広がることも多いにあるだろう。



日本でも猛威を振るうリストラ旋風

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出典:www.thespec.com

長く日本社会を支えて来た終身雇用体制の終焉

 日本企業でも、近年大規模なリストラを行うようになってきた。

 しかし、経営立て直しの一側面しかみられず、アメリカ企業のようにな将来的にお互いが成長する可能性はいまだ提示できていないようだ。

 日本はアメリカとは違い、新卒で大量の人材を採用して長期にわたり人材育成を行う終身雇用の体制をとっていた。真面目に会社で働き、積年の知識を蓄え、会社に貢献するというメリットがあった。

 しかし、クラウドサービスの台頭などにより、技術者が多ければ良いという考えはもはや太刀打ちできなくなった。

 現在世界でのIT企業の急速な発展についていくのは、柔軟に体制を変えていけるシステムが必要であるし、企業と被雇用者双方が雇用のあり方を認識しなければならない

リストラ後、再就職がみつからない実態

 リストラの中にも、希望退職という形で会社を辞める人も少なくない。なぜなら、早期退職を希望すれば、退職金を通常より多くもらえることが多いからだ。

 会社からリストラを行う前に形式的に人員削減を目的として早期希望退職者を募集するケースもある。

 シャープが2015年に実施した早期希望退職者の応募は3,234人であった。しかし、一年以内に再就職先をみつける人は2割を下回るという。

 シャープは再就職支援会社を退職者に登録させたが、なかなか就職先がみつからないという実態がある。やはり、日本での再就職は容易ではないのだ。

 日本にもK401といった転職の際に妨げにならないような体制が整備されると、リストラを行う企業もそれを受ける被雇用者も滞りなく次の段階に進めるのではないだろうか。


 今回は、アメリカ有名IT企業の大規模リストラの現状を紹介した。われわれビジネスパーソンの上司の世代であれば、「リストラ=一巻の終わり」という概念から脱せられない人もいるかもしれない。

 確かに、アメリカのリストラ制度は日本とは大いに異なる。しかしそんな日本も、IT企業の新しい体制の整備や人材採用など、めまぐるしく日々を変化している。

 日本企業にはまだまだ根付いていない雇用のあり方を、アメリカIT企業の大規模リストラから学びたいものだ。

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