平成28年4月より、国税庁はたばこ税関係法令を改正。それに伴いJTは、主力ブランド「メビウス」など6ブランドを10〜50円アップすることを発表した。
そんな近年の“タバコ事情”だが、タバコに関連する世の中のカネの動きについて考えたことはあるだろうか。本稿では、意外と知られていない“たばこ税”について見ていこうと思う。
「たばこ税」とは?
たばこ税のそもそもの始まりをご存知だろうか。タバコが専売制だった1898年〜1984年は“国たばこ税”が存在せず、1985年専売制が廃止された際に“国税としてのたばこ消費税”が定められた。その後1989年、消費税法の施行の際に名称が“たばこ税”に変更されて今に至る。
たばこ税の種類
- 国たばこ税:タバコの価格の24.1%を国に治める
- 地方たばこ税:タバコの価格の27.8%を都道府県・市区町村に治める(うち3.9%が都道府県、23.9%が市区町村)
- たばこ特別税:タバコの価格の3.7%を国に治める
- 消費税:タバコの価格の7.4%
税負担率が6割を超えるタバコだが、“たばこ税”で得た税収入はどのように使われているのか、次の項目で見てみよう。
税収としてのタバコ、医療費としての喫煙コスト
担税物品の税負担
タバコ以外にも担税物品は存在し、それぞれの税負担率を比較すると、タバコ:63.1%、ビール:47.7%、ガソリン:42.6%、ウイスキー:28.4%、灯油:10.0%となっている。つまり、タバコは担税物品の中で税負担率が最も高いのだ。
国税収・地方税収のたばこ税の割合
国や地方に治められるたばこ税だが、国たばこ税とたばこ特別税は国税収全体の1.8%(1兆608億円)、地方たばこ税は地方税収の3.1%(1兆1,057億円)を占めている。そのため、たばこ税は国にとっても地方にとっても、重要な収入源となっている。
国たばこ税と地方たばこ税の使用用途は定められていないため、各市町村で自由に割り当てているのが現状だ。使用用途の例としては、観光地の開発や、公共施設、福祉施設の運営費、医療費などがある(たばこ特別税の使用用途は旧国鉄・国有林野事業の負債の返済など)。
たばこ税の喫煙コスト
一見タバコの税収入が国や地方の財政を助けているように思えるが、実際はどうなのだろうか。
医療経済研究機構が発表した2005年度の「喫煙コスト」推計は下記のようになる(喫煙コスト≒①喫煙による健康面の費用+②喫煙による施設・環境面の費用+③喫煙による労働力損失)。
①喫煙が起因する疾患を診断・治療したり、予防したりする費用(虚血性心疾患・脳血管疾患・気管支炎及び慢性閉塞性肺疾患・喘息など):約1兆8,000億円
②喫煙が及ぼす施設や周辺環境への費用(喫煙に係る火災の消防費用・喫煙にかかるごみ処理費用):約2,000億円
③喫煙が原因で生じる労働力損失(喫煙関連疾患による入院やタバコを原因とする火災被害による入院で生じる労働力損失):約2兆4,000億円
これら三項目を合計すると、約4兆2,000億円となる。JTが発表した同年2005年度の「たばこ税」の収入額は約2兆2,401億円となっている。税収入の金額と「喫煙コスト」の金額の差を単純計算すると、約2兆円の損失となっていることが分かる。
また、国立がんセンター後藤公彦氏の試算によると、タバコ産業経済メリット(税収や産業賃金)が約3兆円、タバコによる社会損失(医療、損失国民所得や休業損失)が約6兆円であり、約3兆円の損失があるとも発表されている。
喫煙が起因する死者数と“JTの見解”
喫煙が起因する疾患の医療費や労働力損失をカネで見ても莫大な金額だが、喫煙による死者数も年間約13万人という極めてインパクトのある数字になっている。
2010年には、喫煙が原因となって発症する肺がんや心筋梗塞で、年間約6,800人が命を落としていると厚生労働省の研究班が発表した。そのうち受動喫煙が原因とみられるのは、半数以上の約3,600人だったということも報告されている。
しかしJTは、これらの「喫煙コスト」の計算は根拠がなく、タバコは国・地方の大きな財源として貢献していると主張している。
出典:www.stuff.co.nz 上述の通り、“タバコ”に対しては様々な意見が存在する。だが、一概に断言はできないものの、タバコは国・地方の大きな税収の一つであることは事実だ。
読者諸兄の中にもタバコをたしなむというビジネスマンは多いだろう。この機会に日々何気なく吸っているタバコによる、世の中のカネの動きや経済状況を把握してみてはいかがだろうか。
そして喫煙者のみならず、受動喫煙という形で多くの人が命を落としているという事実は決して忘れてはならない。
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