信頼関係を築くための心理学のひとつ「ラポール心理学」を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
本記事では、ラポールを形成するコツや、ラポールを使った心理学テクニックなどをご紹介します。
心理学を上手に使って、人間関係の構築に役立てたい人はぜひ参考にしてください。
- ラポール形成とは?
- 負の状態「アンチ・ラポール」とは?
- ラポール心理学を使った4つの心理学テクニック
「ラポール」形成とは?
そもそも、「ラポール心理学」「ラポール形成」とはどのような意味があるのでしょうか。名前だけ聞いたことはあっても、意味について詳しく知らない人も多いでしょう。
「ラポール」とは、フランス語で「架け橋」を意味する心理学用語です。
ラポール形成は、本来は「精神感応」という意味でした。
精神感応とは、言葉にすることなく、相手の言いたいことやしたいことが何となくわかることです。
しかし現代では、相手との間に橋がかかった状態、つまりお互いに打ち解けあって信頼している状態のことをいいます。
ラポールを形成するメリットと、形成するためのコツ
ラポールを形成することは、お互いに打ち解け合い、信頼している状況だとわかりました。
ラポールを形成している状態は、コミュニケーションにおいて基本中の基本。信頼関係を構築することで、遠慮なく意見を言えたり、言ってもらえたりできます。
どんなにいい意見を持っていても、「否定されるのではないか」「面白くないのではないか」などと相手が思っていると意見を引き出せません。
一方、ラポールが形成できていると、「否定的なことは言われないだろう」と思ってアイデアや意見を堂々と発言してもらえます。
ラポール形成されていることでコミュニケーションが活発になり、新しいアイディアや企画なども生まれやすくなるでしょう。
実は、ラポール形成をするにはコツがあります。詳しく確認してみましょう。
ラポール形成のコツ1.相手の尊重と傾聴
ラポールを形成するコツの1つ目は、「相手を尊重して、相手の言うことをよく聴くこと」です。
「相手をコントロールしてやろう」といったエゴイズムを持っていると、相手にも伝わるもの。ラポールを形成するのは難しくなってしまいます。
ラポールを形成するためには、何よりもまず、「相手と信頼関係を築きたい」という誠実な気持ちが大切です。
誠実な気持ちを具体的な行動で示すのが「傾聴」です。傾聴とは、自分が聞きたいことを聞くのではなく、相手が言いたいことを聴く姿勢のことであり、人と向き合う基本的な姿勢そのものです。
また、相手にはそれまで生きてきた経験から形成された価値観があります。自分の価値観とは違っていたとしても、相手の価値観を否定するのではなく、尊重することが重要です。
まずは否定することなく相手を尊重して、何を伝えたいのかよく聴くことに注力してみましょう。
ラポール形成のコツ2.類似性の法則
ラポールを形成するコツの2つ目は、「類似性の法則」です。
類似性の法則とは、「人は自分と似たものに安心感や好感をもつ」という心理です。
例えば初対面の人との会話で、相手が同じ出身地の人だとわかったときに、ぐっと距離が縮まったような経験がある人も多いのではないでしょうか。
似た境遇や環境、また趣味、好きなものが似ていると、それだけで安心感・好感・親和性が高まります。
類似性の法則をもとにラポール形成が行われるため、相手との共通点があった場合には、積極的に伝えてみましょう。「自分と似ているな」と思ってもらうことが重要になります。
負の状態「アンチ・ラポール」とは?
アンチ・ラポールにある状態だと、相手に対しての興味を失い、警戒し、心を閉ざしてしまいます。
アンチ・ラポールになりやすい人の特徴
- 危険を感じる人
- 不潔だと思う人
- 自分とは違うと感じる(価値観と相反する)人
- 否定してくる人
上記のような人に対して、人間は敵意を抱くため、信頼関係を形成することは難しくなります。
特に、自分と違った意見の人を否定してしまいがちな人は注意が必要です。人間関係がうまくいかないと悩んでいる人のなかには、無意識に相手のことを否定している人も。日頃の自分の言動の中に少しでも心当たりがあれば、すぐに改めましょう。
ラポールが形成できていれば、たとえ相手と意見が違ったとしても好感を持ったままの状態を保てます。しかし、アンチ・ラポールの状態では、たとえ利害が一致していても相手の意見には否定的な感情が湧いてくるため、自分が損をしてでも相手への協力を断ることがあります。
ビジネスをする上で、アンチ・ラポールの状態は自分にとってもデメリットが大きいことを認識しておきましょう。
ビジネスシーンで使える!ラポールを使った4つの心理学テクニック
円滑にビジネスを進めるためには、ラポールを形成する必要がある、と気づいた人も多いのではないでしょうか。
以下では、実際のビジネスシーンで使える4つの心理学テクニックを紹介します。
心理学テクニック1.ペーシング
ラポール心理学を使った1つ目の心理学テクニックは、「ペーシング」です。
ペーシングとは、相手の話し方と呼吸のペースを合わせるテクニックです。
相手がゆっくり話すならこちらもゆっくりと話し、相手が早口ならこちらも早口で話すようにしましょう。呼吸のペースを合わせる際は、相手の肩や胸の動きに注目すると、リズムを合わせやすくなります。
また、ペーシングで重要になってくるのが相槌です。タイミングの良い相槌を打つと、相手は自分の話を聞いてくれているという安心感から気持ちよく話ができます。
相槌は、相手が息継ぎをしたり、次に話すことを考えていたりする間に行いましょう。
相手との会話の中でうまくペーシングができれば、その空間に一体感が生まれ、一体感が親近感や安心感に繋がります。
心理学テクニック2.ミラーリング
ラポール心理学を使った2つ目の心理学テクニックは、「ミラーリング」です。
ミラーリングとは、相手のしぐさを真似るテクニックです。
例えば、自分と相手がカフェでコーヒーを飲みながら話している場合、相手がコーヒーを飲んだら同時にこちらもコーヒーを飲んだり、相手が顎に手を当てたら、自分も顎に手を当てたりすることをミラーリングといいます。
ただし、マネをしていることがバレてしまうと逆に不信感を抱かれるので注意してください。ミラーリングは、あくまで「さりげなく」行うことが大切です。
相手の動きに合わせて行動することで、無意識にお互いが似ている存在だと伝えられます。
心理学テクニック3.バックトラッキング
ラポール心理学を使った3つ目の心理学テクニックは、「バックトラッキング」です。
バックトラッキングとは、いわゆるオウム返しをするテクニックです。
例えば「私はランニングが趣味なんだよ」と言われたら、そのまま「ランニングが趣味なんですね」と返すことをいいます。
バックトラッキングをする際に気を付けるべきことは、相手の言ったことをそのまま返すだけではなく、ポイントをまとめて要約して言い返したり、キーワードを使って返したりすることです。
バックトラッキングも、ミラーリングと同様に、相手のマネをしていることを相手に悟られてはいけません。
上の例を少し言い換えて「ランニングがお好きなんですね」のように返すと、より自然な返答になります。
相手の言ったことを自分も改めて言うことで、相手の話を聞き、受け止めていることを伝えましょう。すると、相手は「自分と同じ考えを持った人だ」と感じ、こちらに好意を抱いてくれます。
心理学テクニック4.キャリブレーション
ラポール心理学を使った4つ目の心理学テクニックは、「キャリブレーション」です。
キャリブレーションとは、相手のことをよく観察することです。
例えば、何かの説明をしたときに「わかりました!」と元気よく相手が答えてくれると、本当にわかったのだなと感じ取れます。
しかし、「わかりました……」「あ〜……はい」などと答えられると、「本当はわかっていないのでは」と思った経験がある人もいるのではないでしょうか。
コミュニケーションとは、言葉だけで行われるものではありません。
相手の表情や声のトーン、姿勢などから、相手の気持ちを感じ取れることもあります。
話している内容だけではなく、非言語的なものに注意することで、相手の本当の気持ちがわかるようになりましょう。
先ほどの例のように、相手が理解していなさそうであれば「何か気になる点はありますか?」「わかりにくいところがあれば、聞いてください」などとサポートをして、コミュニケーションをとっていきましょう。
意識的にラポールを形成してみよう
- 相手を尊重し、相手の話をよく聴くことで信頼関係を構築する
- 相手の話し方と呼吸のペースを合わせたり、相手の仕草を真似たりすることでラポール形成しやすくなる
- オウム返しをしたり、相手をよく観察したりする
仕事を円滑にすすめるためには、相手との信頼関係が重要です。
「信頼を得る」「好感を持たれる」ために、学問として確立されたラポールの心理学を応用すれば、ビジネスシーンでも使えるテクニックになります。
本記事で紹介した心理学テクニックを雑談や会議などで実践し、周囲とラポールを築き一歩先を行くビジネスパーソンになりましょう。
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