AI(人工知能)は電気のように日常を流れ、VR(ヴァーチャルリアリティ)は現在のスマートフォンのような存在となる。インターネットの誕生以降、私たちを取り巻くモノ・サービスが急速なテクノロジー化を見せている。今や私たちにとって、「利便性の高い社会」を目指すことは当たり前となっている。しかし、昔の日本社会は決して現在のような社会ではなかった。昔の日本社会では、「長生きすることができる社会」を目指す傾向があったのだ。
一体、何がきっかけとなって、現在のような「利便性の高い社会」を目指すこととなったのだろうか。また、現在も続く急速なテクノロジー化は未来も続くのだろうか。次々と新たなテクノロジーが誕生していく現代だが、いずれ限界を迎えるのではないだろうかと思う人も少なくないだろう。
そこで今回は、WIRED創刊編集長であるケヴィン・ケリー氏の『〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則』から、なぜテクノロジー化の波は生まれるのか、そして未来においてテクノロジーに限界は訪れるのか考えていきたいと思う。知性がまるで家庭の電気のようにモノに流れ込む時代に何が起こるのか?
“現代は未来から見ればフロンティアである”
出典:www.mining-technology.com 「現在の社会にはない何かを世に生み出したい」「何かアイデアはないだろうか」と、日々頭を悩ませる人たちの中には、「テクノロジーはやがて限界を迎える」という持論を展開する人もいる。しかし、ケリー氏はこうした考え方に対して、未来から現在を見つめることを提案している。
実際、30年前の社会を思い返してみると、「今の自分が当時の社会に存在することができたら、次々と画期的なアイデアを実現させることができるのに」とは、思わないだろうか。つまり、現在の社会も未だに「未開拓の地」と言えるのだ。
未開拓の地であるからこそ、テクノロジー化(開拓)は急速に進んでいる。そのため、私たちが手に取るモノ・サービスはすぐにアップロードされていく。例えば、iPhoneは日進月歩でバージョンアップして発売されている。ユーザーは新しいバージョンへと追うようにして購入するだろう。すると、前のバージョンの使い方をマスターしても、すぐに新しいバージョンの初心者ユーザーとなってしまうのだ。つまり、私たちは常にテクノロジーを追い求めると同時に、トレンドという波に追われているのだ。
21世紀テクノロジー代表・インターネットが作り出す未来像
出典:www.fastcompany.com 現代社会において、テクノロジーの主軸にあるのはインターネットであるが、30年後の未来においてもその主軸は変わらないようだ。IoT(Internet of Things)と呼ばれるテクノロジー化の潮流が30年後の未来までも続くが、そのクオリティは現在よりも遥かに高くなると予想されている。
特に最近では、AI(人工知能)がIoTの質を高くする機能として注目されている。今後の未来において、インターネットは私たちからアプローチをかけるものとしてではなく、インターネットから私たちに語りかけてくるものとなることが予想されている。つまり、私たちの生活には常にインターネットという第三者が欠かせない存在となるのだ。
30年後の未来においてもインターネットがテクノロジーの主軸にあるということから、インターネット市場もまだまだ「未開拓の地」であると言えるだろう。さらに、現在も存在するIoTという潮流に逆らうことなく、その潮流に沿って未来のテクノロジーの質を高くしていることが分かる。既存の潮流に逆らうことだけが、革新的なテクノロジーを生む方法ではないのだ。
“テクノロジーの源泉は人の不満足” 人とテクノロジーの関係
出典:blog.arcsystemsinc.com 序文でも言及したが、昔と現代の社会では目指すべきものが異なる。「長生きをする」という目的は、「利便性を高くする」という目的と比較するとテクノロジーから遠い存在だ。つまり、テクノロジー化の波は社会の目的が変化したことに起源を持つと言えるのだ。
社会の目的が変化した要因は、私たち人間が生きていく中で「長生きをすること」だけでは満足できなくなったことである。ケリー氏は、こうした人間の不満足を満たす行為がテクノロジーを生み出すこととなると考えている。もし、私たちが不満足と感じるポイントが「不便」から別のポイントへと移行すれば、未来の社会は想像もつかないことになっているかもしれない。
未来を考える時、私たちはあらゆる感情を持つこととなる。それは「期待」であったり、「不安」であったりするだろう。こうした感情を持つ要因は、未来が想像もつかない社会へ「開拓される」と潜在的に意識しているからである。テクノロジー化の急激な進歩は、一見私たちとは隔離された所で進んでいるように感じられるが、テクノロジー化の根源こそが人間の不満足から生まれている。つまり、私たち人間が社会のハンドルを握っているということを忘れてはならないのだ。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう