万年筆のセルフメンテナンスはもちろん可能だが、高価で精密なものであるので無理したメンテナンスは逆効果になってしまうことも。そこで今回は万年筆の肝とも言える、ペン先の調整について特集していく。
万年筆のペン先の交換時期は?
ペン先を交換した方が良いケースは主に二つある。一つ目は、ペン先が磨耗してしまったとき。ペン先については、その材質より長持ちする・しないの差がある。一般的に、ステンレス製の万年筆はゴールド製に比べると腐食しやすく、劣化が早い。物理的な寿命という点では、ニブポイントやペンポイントと呼ばれるペン先についている小さな球が磨耗した場合、もしくはペン先の金属疲労による弾力の衰えが来た場合である。しかしながら、物理的な寿命を迎えることはほとんどないので、起こりうるとしたら圧倒的に多いのは落下などの衝撃によって生じるペン先の変形か、メンテナンス不足による劣化だと思っていて良い。
二つ目の場合は、ペン先がフィットしない場合である。特に初心者においては、ペン先選びを失敗する場合も多くインクが出過ぎるなど、扱い辛いと感じることもある。特に注意が必要なのはペン先が柔らかいもの。柔らかすぎるペン先では、ペン先が開きやすいため書き方や筆圧によってはインクが出すぎてしまう可能性がある。もしも万年筆の購入後ペン先が合わないと感じたら、すぐに自分にあうものに取り替えることを考えた方が良い。
万年筆のペン先の調整はどこでしてもらう?
万年筆のペン先は他のペンと違ってとても精巧に作られているため、調整が必要なこともあるが、その調整はプロでないとできないことも。そのようなときに行くべきなのが、ペンクリニックである。ペンクリニックとはどのようなものかというと、ペンドクターと呼ばれる万年筆の専門家たちが、無料で万年筆の調整をしてくれるイベントである。
部品交換が必要な場合は費用が発生するが、インクが出ないといったことやもっと細字にしてほしいなどトラブルから好みの調整まで万年筆に関わるケアをなんでもしてくれる。このイベントは販売促進を兼ねているため、万年筆のメーカーが百貨店の万年筆売り場や万年筆を扱っている文房具屋さんなどで開催している。基本的にはどこのメーカーのものでも、外国製でもカジュアル万年筆でもなんでも診てもらえるので、自分の使っている万年筆で気になるところがあれば是非診てもらうと良い。
自分に合った万年筆のペン先の調整の仕方!
自分でペン先を調整するのはリスクがあるが、ここでは簡単な調整方法を紹介する。用意するものは、ルーペ、ラッピングフィルム(粗い4,000番と極細の10,000番)のふたつである。インクを入れたまま普段の筆記角度を保ちラッピングフィルム上ですりすりと円を描いたり、ニブポイントの左右上下をなめらかな球状になるように擦り付けたりするだけである。
最初はルーペで見ながら少しずつ行うと良いが、粗い番号のラッピングフィルムではニブポイントの貴重なイリジウムが少しずつだがはっきりと削られていく。筆記角度のみ削ると太くなり、筆記角度の変化への追従性が落ちてしまうので、筆記角度の周辺で角度を変えてすりすりと書くようにしてもらいたい。最後によくペン先を洗ってあげれば完成である。削り過ぎてしまった場合などは元に戻せないので、どうしても自分で調整したい場合や失敗しても良いと思えるもの以外の時は、専門家に頼むようにした方が良いだろう。
今回は万年筆のペン先の調整について紹介した。ペン先の調整は自分で行うことも可能だが、精密なものなので確実に調整したい場合は専門家に頼む方が良いだろう。ペンクリニックを駆使して自分にフィットする万年筆に調整し、万年筆を長く使用できるようにしてもらいたい。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう