世界的に爆発的なブームを巻き起こしているポケモンGO。連日各メディアで大きく取り上げられ、読者の皆さんも耳にしたか、あるいはすでにユーザーとしてポケモンGOを楽しんでいるかもしれない。街を歩いていると、スマートフォンの画面に夢中になりポケモンを探しているらしき人を多く見る。ユーザーをここまで夢中にさせたポケモンGO。その開発会社「ナイアンティック」は一体どんな手法を使ったのだろうか。
今までのゲームにない新しい理念
ゲームといえば室内で遊ぶテレビゲームやポータブルゲームが想像される。家の中でごろごろしながらコントローラーを握ってテレビに集中する。それが従来のゲームスタイルであった。ポケモンGOはそんな従来のゲームと大きく異なる。プレイした人ならご存知だろうが、ポケモンGOは街を人が歩き、スマートフォンを使ってポケモンを探し、捕まえる。そう、屋外でプレイするゲームなのだ。
これがナイアンティックがゲームを提供する上で大切にしている理念だ。この理念はCEOのジョン・ハンケ氏が家の中でゲームばかりしている息子を外出させるために、外出しないとクリアできないゲームを作ろうと思い立ったことから生まれたのだ。
ポケモンGOのユーザーは外を歩き回り、街の中で新たな発見をしている。ポケストップ(アイテムが入手出来る場所)をめぐるうちに、近所なのに知られなかった銅像や壁画を発見する。そしてポケストップに集まってきた見知らぬ人と友達になる。ポケモンGOはナイアンティックの理念を体現し、ユーザーに受け入れられている。
ポケモンGOを可能にした技術
ナイアンティックはグーグルマップを取り入れることによってゲームと現実を一体化することを可能にした。ただ、この取り組みは決して平坦な道ではなかった。
ゲームにGPSを取り込む、その技術を可能にしたのはCEOのジョン・ハンケ氏の尽力が大きい。ハンケ氏は元グーグルの社員でグーグルアースやグーグルマップの開発に携わったエンジニアだ。ナイアンティック自体も元はグーグルの社内ベンチャー企業であり、グーグルの組織編成を発端に独立した。
出典:gamecity.org 独立後、2012年にナイアンティックにとって初めての位置情報ゲーム「イングレス」を発表。写真のようにGPSを活用した陣取りゲームだ。このときのキャッッチコピーは「あなたの周りの世界は、見たままのものとは限らない」。この技術がポケモンGOのゲームシステムの基になっている。
ナイアンティックのビジネス戦略
ポケモンで知名度アップ
by Sadie Hernandez 前述したイングレスはゲーマーの間では高評価であったが、グーグルからの評価は芳しくなかった。そこで、ナイアンティックは有名キャラクターを使った位置情報ゲームの開発を進めた。白羽の矢が立ったのは日本が世界に誇るポップカルチャー「ポケットモンスター」だ。
ポケモンの位置情報ゲームが受け入れられているのは、単に知名度があるからというわけではない。ポケモンのゲームシステムと位置情報ゲームの相性はとてもいい。ポケモンはゲーム内でポケモンを捕まえ、育て、友達と見せ合う。現実世界での虫取りの要素があるゲームだ。
一方でイングレスは現実の世界の見せ方を変え、ゲームと現実の距離を近くするように試みるゲームを作っていた。この二つのゲームは現実の感覚を大事にしている点で共通している。ポケモンGOは見事に両者のいい部分を引き出している。
位置情報ゲームならではのスポンサー
出典:bgr.com ポケモンGOはスポンサーをつけやすいゲームでもある。ただ、ここでのポンサーは単にブランド広告のみを目的にしていない。各スポンサーが狙っているのは店舗をポケストップ(アイテムを入手出来る場所)やジム(ポケモンを戦わせる場所)に指定することによって、客足を増やすことだ。日本での配信の際、日本マクドナルドとの提携は話題を集めた。提携する店舗は約2900店に上っており、スポンサー料も相当な額になっているはずである。
今までになかったスタイルのゲーム、“ポケモンGO”。その人気が高まるにつれ、「ながら歩き」の危険性や夜間の徘徊などの問題点も指摘されている。ただ、新しいものは批判されると決まっている。街に出て歩いてみればわかるはずだ。少なくともナイアンティックはユーザーに“楽しさ”を間違いなく与えている。
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