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ランニングが脳に与える「知られざる効果」とは?:“脳を鍛える”ランニング法

Saki Shinoda

2016/07/28(最終更新日:2016/07/28)


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ランニングが脳に与える「知られざる効果」とは?:“脳を鍛える”ランニング法 1番目の画像
by Curtis MacNewton
 ランニングをすることで脂肪燃焼や筋力の強化、体力向上など、様々な効果を得ることができる。ダイエットや健康維持のために、ランニングを習慣にしている人も多いのではないか。しかし身体だけでなく、脳もランニングによって多くの効果を得ていることはご存知だろうか。

 1990年代以降、脳の測定技術が急速に発展したことにより、「脳が有酸素運動によって活性化する」という研究結果が次々と明らかになった。また脳内の様々な神経物質も、運動によって発生が促進されることが分かっている。その中で、手軽に有酸素運動を行えるランニングが、脳に効果的に刺激を与えるということが注目されているのだ。

 そこで今回は、ランニングで活性化する脳の部位や発生する脳内物質、そしてそれらの働きに効果的なランニング法を紹介する。

脳のワーキングメモリー“前頭前野8野・46野”

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by Sean MacEntee
 前頭前野は「脳の最高司令塔」と呼ばれており、人間の様々な精神活動を司っている。ランニングによって効果を得ることができるのは、前頭前野の中でも8野と46野だ。

 「脳の作業机」や「ワーキングメモリー」と呼ばれる8野と46野は、複雑な作業を行う際の一時的な記憶を、分析や思索のために保持しておく機能を司る。暗算や会話を行うことができるのも、この領域の働きによるものだ。脳の作業机である8野と46野を活性化させることにより、創造性や問題解決能力を高めることができる。

前頭前野を活性化させるランニング法

 前頭前野は、ランニング程度のスピードで走っている時に活性化する。ジョギングのペース(時速5キロ)では運動野や運動前野しか活性化しないため、前頭前野を活性化させるためには時速9キロのペースを意識してランニングを行おう。

脳の認知力とストレス耐性を司る“海馬”

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by .tafo.
 海馬は記憶や空間学習能力など、脳の認知力を司る領域だ。海馬は日常の新しい記憶を全て集めて整理し、次第に大脳皮質へと送ることで記憶を定着させる。記憶がまず海馬に保存されても、大脳皮質に送られなけらば9時間程度で忘れてしまうため、長期記憶を形成するためにも海馬の働きは重要だ。

 さらに海馬は、欲望やストレスを司る視床下部が暴走しないよう制御する働きも持っている。そのため海馬を活性化させれば、脳の認知機能や記憶力を高められるだけでなく、ストレスに対する耐性を強めることもできるのだ。

海馬を活性化させるランニング法

 ランニングによって、海馬を活性化させることができる。但し速いペースで走ると、ストレスを司る視床下部を刺激してしまうため、時速7〜8キロ程度のペースで走るのがベストだ。前頭前野とは異なるので気を付けよう。

ランニングで分泌される神経物質

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by dierk schaefer
 ここまでランニングによる脳の部位に関する効果を紹介してきた。ここからは、そんな脳の中で伝達されている物質について言及したい。

気分を安定させる“セロトニン”

 セロトニンは脳内や中枢神経で、気分と感情のコントロールを行う神経伝達物質だ。怒りや攻撃性に関わる物質の過剰分泌を抑える働きを持ち、精神を安定させて心身にやすらぎを与えることから「幸せホルモン」とも呼ばれる。また、セロトニンは夜になると睡眠ホルモンのメラトニンに変化し、寝付きを良くしたり睡眠の質を向上させる働きも持っている。

セロトニン分泌を促すランニング法

 セロトニンは、一定のリズムで同じ動作を繰り返す運動によって分泌が促進される。そのため、一定のペースをキープするように意識して走ることが大切だ。また、日光もセロトニン分泌を促す効果を持っているため、晴れた日に屋外でランニングを行えばさらに効果的だ。

モチベーションを司る“ドーパミン”

 意欲や快感を司り、運動調節の機能も持つのがドーパミンだ。何かの行動を行う際にドーパミンが分泌されることで、脳は快感を覚える。ドーパミンは快感を覚えた行動を記憶させる働きも持っており、それらの行動を積極的に行うように動機づける役割を担っている。モチベーションを生み出す神経物質と言えるだろう。

ドーパミン分泌を促すランニング法

 全身の動きを司る自律神経のうち、活動や緊張によって働く交感神経がドーパミン分泌を促進している。夜間は副交感神経が働いており、身体がリラックス状態になっているため、交感神経が働く状態にするには時間がかかってしまう。そのため、ドーパミンを効果的に分泌するためには明るい時間帯にランニングを行うとよいだろう。


 脳にプラスの働きをするランニング方法を紹介してきた。しかし、注意してほしいことがある。それは走り過ぎてしまうと「脳内麻薬」と呼ばれるエンドルフィンが多く分泌されてしまうということだ。いわゆるランナーズ・ハイの状態はエンドルフィンが過剰分泌された状態であり、肉体の痛みを打ち消してしまうため、身体の故障などを引き起こしてしまう恐れがある。ランニングで身体と脳の両方に良い効果を与えるためには、無理のないペースで適度な距離を走ることを心がけよう。

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