あの大ヒット作はどのように生み出され、世代を超えた幅広い支持を生み出したのだろうか。宮崎駿監督をはじめ、ジブリスタッフの見えない努力や徹底的なこだわりが映画を大成功に導いてきた。今回はそのヒットの裏側に迫り、私たちビジネスマンが学べることを紹介したい。
ジブリを支える陰の功労者と興行収入ランキング
1位『千と千尋の神隠し』興行収入:304億円
公開年 2001年
日本公開の歴代映画興行収入のぶっちぎりの1位。かのタイタニック、ハリーポッターの第一作品目を抑えた超人気映画だ。
日本公開の歴代映画興行収入のぶっちぎりの1位。かのタイタニック、ハリーポッターの第一作品目を抑えた超人気映画だ。
作品が制作された当時、スタジオジブリは弱体化に苦しんでいた。「もののけ姫」の終了後に優秀なスタッフが次々にジブリを引退、宮崎駿監督は超過密スケジュールで疲弊しきっていた。そこでやむなく、スタジオジブリは方向転換。新人スタッフや、今まで敬遠していた韓国のアニメスタジオの力を大量に投入したことにより、偶然にも作画の乱れが作品の世界観とマッチした。画面に不安定な印象を与え、千尋の不安定な心理状態を映し出すことに繋がったのだ。
旧体制を脱却し、大胆な方向転換に臨んだことが新たな成功と莫大な興行収入に導いた、という例だ。
2位『ハウルの動く城』興行収入:196億円
公開年 2004年
公開二日目で観客動員数110万人、興行収入14億8,000万円を収め、日本映画としては当時の歴代最高のオープニングであった。
公開二日目で観客動員数110万人、興行収入14億8,000万円を収め、日本映画としては当時の歴代最高のオープニングであった。
作中でも印象的な、城が移動するときの重い音。ジブリ制作スタッフはあの音を表現するのに苦労したという。スタジオに大工を呼び、建材を組み立てて、それを擦ったり動かしたり壊したりした色々な音を練り合わせた。
このうえなくファンタジーで美しい世界観を表現するために、逆に、リアリティのあるサウンドを追求した。
作品を魅力的にするためのこだわりを徹底的に追求することで、受け手に響かせることができた。
3位『もののけ姫』興行収入:193億円
公開年 1997年
当時の日本映画の歴代興行収入第1位を記録。1999年1月22日に『金曜ロードショー』で初のTV放送がされ、関東地区で35.1%、西日本地区で40.8%の高視聴率を記録した超ヒット作だ。
当時の日本映画の歴代興行収入第1位を記録。1999年1月22日に『金曜ロードショー』で初のTV放送がされ、関東地区で35.1%、西日本地区で40.8%の高視聴率を記録した超ヒット作だ。
もののけ姫のキャッチコピーとしてはあまりにも有名な「生きろ。」は糸井重里氏によるもの。
スタジオジブリでは完成までに鈴木敏夫プロデューサーの間で激しいやり取りがあり、没になったコピー案は50本近くあった。主な候補に「おそろしいか、愛しいか。」「だいじなものは、ありますか。」「おまえは、まぶしい。」など。
それまでのジブリ作品では糸井のキャッチコピーはすんなりと起用されていたが、本作品においては毎日のようにFAXのやりとりがあったという。ワンフレーズを追求する丁寧さ、妥協を許さない姿勢には驚かせられる。
4位『崖の上のポニョ』興行収入:155億円
公開年 2008年
観客動員数1,200万人以上。全米で興行収入は約1,500万ドルであり、『千と千尋の神隠し』の米国における興行収入の約1.5倍の数字を記録した。
観客動員数1,200万人以上。全米で興行収入は約1,500万ドルであり、『千と千尋の神隠し』の米国における興行収入の約1.5倍の数字を記録した。
活動的で愛らしいポニョ。その舞台裏には、ジブリの作画スタッフに「容赦ない」とまで思わせた膨大な絵コンテ、アクションシーンの追加など、徹底的なこだわりがあった。
ときには、宮崎駿監督は一日かけて描いた絵コンテを「気に入らない!」と丸ごと捨ててしまうこともあったという。
そぐわない、と思ったら白紙に戻して再スタートを切る潔さは、重大な岐路に立たされたときになくてはならない決断だ。
5位『風立ちぬ』興行収入:120億円
公開年 2013年
興行収入120億円を超える、スタジオジブリのヒット作の一角。2015年2月20日のテレビ放送時は、視聴率19.5%を記録した。
興行収入120億円を超える、スタジオジブリのヒット作の一角。2015年2月20日のテレビ放送時は、視聴率19.5%を記録した。
本作品では、飛行機のプロペラ音、蒸気機関車の蒸気、車のエンジン音、関東大震災の地響きなど、劇中のさまざまな音が人の声で再現されている。
宮崎駿監督はCGではなく手描きで描くことにこだわり続けた。なぜなら「関わった全ての人の仕事が要素になっているのが、アニメーションの良さ」という考えだからだ。
一見非効率的で現代にはそぐわない手段に見えるかもしないが、自分のフィールド内で信念を持ってこだわり続けたからこそ、評価される大ヒット作へと結実したのだ。
大胆な方向転換や妥協を許さない姿勢など、スタジオジブリの裏側は努力やこだわりに満ちあふれている。そんなスタジオジブリの作品には、ビジネススタイルへのヒントが包含されていると言えよう。
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