上司とは、本来は部下が仕事がしやすいように正しく引っ張り、助け、部下がミスをした時には責任を取るものである。だが、部下に責任をなすりつけたり、仕事を押し付けたりするような上司ばかり、目につかないだろうか。とはいえ、仕事に上司はつきものであり、これを読んでいるあなたもいずれは上司になるのだ。
では、部下のパフォーマンスを最大限に引き出せる上司の姿とは、どのようなものなのか。今回は、コンサルファームで有名なマッキンゼーに務めたことのある服部周作氏の『47原則ー世界で一番仕事ができる人たちはどこで差をつけているのか?』から、上司として部下のパフォーマンスを最大化に引き出す方法を、3つのポイントに絞って紹介する。
#1:上司として、部下の仕事を良くするコミュニケーションとは
出典:www.theodysseyonline.com そもそもコミュニケーションとは、言葉のキャッチボールというように、自分の言葉と相手の言葉を交換しあうことが基本である。しかし、上司と部下の関係となれば、その会社の風土や上下関係を意識したコミュニケーションが行われることが多くなる傾向にある。それでは、きちんとしたコミュニケーションが取れず、仕事を行うことが難しくなるだろう。そこで、本書が提言するコミュニケーションスキルを紹介する。
1. 伝えたいことは、手短に
オフィスに出社して、仕事をする時間は限られている。とはいえ、仕事内容は早口にならず、しっかりと指示する必要がある。そこで、手短なコミュニケーションを図るために便利な7つのヒントをまとめておく。
「手短なコミュニケーションの準備」に必要な7つのヒント
- すでに知っていることは何か
- このプロジェクトの終了時にどんな収穫があるか
- 無視したり、なくしたりするべきものは何か
- どんな制約や制限があるのか
- 主要な利害関係者と顧客は誰か
- 包括的なスケジュールと、節目となるものは何か
- このプロジェクトが他のものより優れているのはなぜか。全体像として魅力を感じるのはどのような点か
2. 自分から話すより、聞き役に徹する
部下を引っ張ろうとする上司ほど、自分の意見ばかり述べがちな傾向にある。部下がどのように仕事をしたいのか、また上司とどのように仕事をしたいのかは、上司だけが意見を述べるだけでは建設的ではない。だからこそ、部下の話に耳を傾けて、最大限のパフォーマンスを引き出す手伝いをしたほうがよいはずだ。
本書によると、極めて有能な人はとても謙虚だという。そうした人は、自分の仕事上の業績について話すよりも、相手から新しい話をたくさん聞き出すことをする。また、質問をすれば相手は気分が向上し、自信がつく。言い換えれば、上司は部下に質問をすることで、部下のやる気向上に貢献できるということだ。その時注意したいのが、価値のある質問を心がけてほしいということだ。聞き上手な上司になるためには、以下の3つに注意してほしい。
聞き上手上司になるための3つのテクニック
- 話題をコロコロ変えないこと。相手の話に対して関心を寄せ、話題を掘り下げていこう。
- 自分の無知を素直に認めること。たとえ、部下であろうと、自分にはない知識があるということを素直に認めよう。
- 興味深いポイントを瞬間的にとらえて、簡潔な言葉でフォローアップしよう。
#2:部下のモチベーションを上げる、上司の“共感術”
出典:www.theodysseyonline.com まず、共感とは、「相手の感情を理解して共有する能力」である。そのため、部下が仕事でどのような感情を抱いているかを理解し、その上で仕事で抱いた感情を共有する必要がある。しかし、相手の意見には耳を傾けず、仕事内容を指示するだけの上司が存在する。そんな上司では、共感を引き出せず、部下のモチベーションを上げることは難しいだろう。そこで、本書から、相手と心を合わせる「上司の共感術」をピックアップし、紹介する。
1. 真っ先につながる「共通点」を見つける
仕事の打ち合わせでは、その部屋に入った瞬間から仕事の話をしがちである。それは、仕事とプライベートを切り離したほうが無難だと考えているからだろう。しかし、仕事以上に相手のことを理解することが必要だと、本書では述べている。相手との共通点を探し、良い雰囲気を作れれば、短期的な成功を得られるだけでなく、長期的に見ても有益な関係としてお互いにプラスの価値を提供できる存在になりうる。
2. 励まされる人から、励ます人へ
仕事をしている以上、ストレスはつきものである。だからといって、部下にあたっては理不尽な上司と思われてしまうだろう。上司である自分がストレスを抱えているということは、当然部下もストレスを抱えているはずだ。だからこそ、強いストレスを感じる状況であっても、上司として部下の気持ちを理解し、場の雰囲気を改善することができれば、チーム内の不安を拭うことができるだろう。
3. 部下の仕事以外のプライベートな面を知る
仕事ではプライベートな話は持ち込まないようにする人がよく見られる。また、仕事では上下関係にある人間同士が、気軽にプライベートな話をするのは難しいかもしれない。だが、こうした話しづらい内容こそ、上司が率先して耳を傾け、相手の気持ちを理解しようと努めれば、お互いの理解が深まり、日常の人間関係を良質なものへと変化させられるだろう。
#3:部下の仕事をポジティブにする、理想の上司とは
出典:publicrelationssydney.com.au 部下から嫌がられる上司は、「権力を振りかざして、自分論を語る」「仕事を丸投げする」「自分の価値観を押し付ける」といった特徴があると言われている。これでは、理想の上司からはほど遠い存在であろう。ここでは、チームメンバーを思いやった理想の上司になるにはどう振る舞うべきか、について紹介していきたい。
1. メンバーを正しく評価する
仕事を割り振る時、誰にどのくらいの仕事量を任せるかを決めているだろうか。上司ともなれば、他人の能力を見極めるスキルが必要になる。しかし、上司がきちんと仕事を割り振れなければプロジェクトは失敗に終わりかねない。そのためには、メンバーの適切な評価が必要になる。そこで、本書からメンバーの評価に役立つ5つの視点を紹介する。
メンバーを正しく評価する5つの視点
- プロセス
- 問題分析
- 仕事に対する意思・姿勢
- 協調性
- 過去の実績
2. やりがいのある仕事を割り振ってあげる
メンバーを正しく評価することにも通ずるが、仕事をする上では、惰性ではなく有意義に行える内容と環境が必要だ。そのためには、以下の3点を意識して仕事を任せられる上司へとステップアップしたい。
やりがいのある仕事をつくるには
- メンバーが主体性を発揮できる仕事にする - 他と重複しない、一人でこなすことのできる仕事を割り振る
- 難しく、やりがいのある仕事にする - 簡単に解決できないが、ワクワクする仕事
- 評価に値する仕事にする - 誰に対してもインパクトがある内容
3. その仕事にポジティブなフィードバックを
相手の気持ちを傷つけるつもりはなくとも、ネガティブに相手に響いてしまうことはよくある。気持ちの落ち込みが、仕事に影響を及ぼしてしまうのはもったいないことではないだろうか。そこで本書から、ポジティブに批判するために仕組みを紹介する。
ポジティブ批判のテクニック
- まず、褒める
- 直してほしいポイントを伝える
- もう一度褒めて、会話を締めくくる
上司とはいえど、部下と同じ人間であることに変わりないから、すべてを実践することは難しいことかもしれない。しかしながら、今回紹介したような少しの工夫が、部下に対する上司のイメージを劇的に変えるキッカケとなり、こうした積み重ねが仕事の質を向上させるため、ぜひ取り組んでみてほしい。時間をかけて習得すれば、まさに上司の鑑として部下から尊敬されることだろう。
47原則―――世界で一番仕事ができる人たちはどこで差をつけているのか? : 服部 周作 : 本 : Amazon
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