「らでぃっしゅぼーや」は、有機・低農薬野菜や日用品を自宅に届ける宅配サービスだ。住宅街などで、赤いラディッシュの模様があしらわれたトラックを見かけたことのある人も多いのではないだろうか。全国の約108,000世帯に商品を届ける、有機・低農薬野菜宅配サービスの草分け的存在だ。
らでぃっしゅぼーやは設立以来、安全・安心な野菜を食卓に届けることにこだわってビジネスを行ってきた。そして現在、その姿勢を貫きながらも、NTTドコモのグループ企業として、ITを活用した新たなチャレンジに挑もうとしている。
今回は、2016年7月14日放映のテレビ東京系『カンブリア宮殿』に合わせて、らでぃっしゅぼーやのサービスとIT領域における新戦略について見ていこう。
有機・低農薬農産物にこだわる宅配サービス
by Muffet らでぃっしゅぼーやは、環境NPO「日本リサイクル運動市民の会」を母体として、1988年に会員制の有機・低農薬野菜宅配サービスを開始した。翌年からは野菜以外の食品や、日用品の取り扱いも行っている。当時、有機・低農薬野菜の認知度が現在ほど高くなかったにも関わらず、創業5年目にはユーザー数が3万人を突破している。それほど、安心・安全な食品や日用品が自宅に届くサービスは画期的だったのだ。
NPO団体を母体とする設立の経緯から、らでぃっしゅぼーやは「食品の安全」と「環境保全」に配慮したビジネスを続けてきた。「有機・低農薬農産物の生産と消費の環を広げることで、持続可能な社会を実現する」という考え方に基づき、品質や環境に配慮した商品を提供するスタイルは現在も受け継がれている。
らでぃっしゅぼーや社長に元ドコモ・国枝俊成が就任
出典:corporate.radishbo-ya.co.jp らでぃっしゅぼーやは、リーマン・ショック前の2008年に過去最大の売上を記録したが、それ以降は減収減益を続けていた。そして、2012年3月NTTドコモの傘下に入り、全国のドコモショップでらでぃっしゅぼーやの入会案内が行われるようになった。しかし、ドコモショップの新規会員をらでぃっしゅぼーやの定期宅配会員に移行させるハードルが高く、契約者数は伸び悩んでいた。
そんな中、2014年5月にNTTドコモ出身で元ドコモエンジニアリング・常務取締役の国枝俊成氏が社長に就任。国枝氏はこれまでエンジニアやマネジメントの領域でキャリアを重ねており、らでぃっしゅぼーやの社長就任まで食品に携わった経験がなかったという。
国枝氏はドコモショップ店頭でのセールス体制の見直しを行うため、ドコモショップ限定の定期宅配商品「らでぃっしゅセレクション」を投入した。この戦略に関して、国枝氏は以下のように述べている。
この戦略が功を奏し、「らでぃっしゅセレクション」定期会員の定着率は2倍に増加。そして前期に11億6,000万円の損失となっていた営業利益を、2015年2月期には2億500万円の増収増益とすることに成功した。
ITの力で有機野菜をもっと身近に
ドコモショップ店頭で「まず試してもらう」ためのプロモーションを行うことにより、らでぃっしゅぼーやは売上を大きく伸ばした。だが今後はそれに加えて、ドコモが持つITの力を活用することで、有機・低農薬農産物の魅力をより多くの人に「まず知ってもらう」方針だ。国枝氏は2015年6月に、今後の目標に関して「ライフタイムバリューを重視し、顧客が離脱しにくいビジネスモデルを構築する」ことを掲げている。そして具体案として、以下のように述べている。
また、らでぃっしゅぼーやは今年3月からキュレーションメディア「Radish Pocket」の提供を開始した。「忙しくても丁寧な暮らしを心がけたい」と感じている女性に向けて、旬の野菜や食材・時短家事情報などを提供している。さらに4月には、ドコモが知育サービスとして提供しているアプリ「dキッズ」で新コンテンツ「ハローキティファーム」を監修。そのミニゲームによって、食材の旬や食の知識を深める内容となっている。
らでぃっしゅぼーやは、ドコモが持つ「ドコモショップ」と「IT」というふたつのフィールドを活用することで、有機・低農薬農産物を消費者に浸透させる戦略を進めている。日本の有機食品市場は1,500億円程度であり、2014年に4.5兆円規模を突破した米国と比べるとかなり小規模だ。有機食品の魅力を行き渡らせ、日本の食卓における有機野菜を日常的なものにするということが、らでぃっしゅぼーやの最大の目標だ。
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