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「本気で遊べ」 “報道ステーション”のオープニング映像を作った男が母校で語る、美大生のあり方とは

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2016/07/09(最終更新日:2016/07/09)


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 『報道station』のオープニング映像や『BABYMETAL』のアートワークなど、クリエイティブの第一線でご活躍中の田中紫紋さん(写真左)。武蔵野美術大学、通称「ムサビ」のご出身である。

 現在でも仕事を共にすることがあるという同校のご学友でアートディレクターの藤井亮さん(写真右)と、母校の卒業・修了制作展へ凱旋した。現役在学生に案内されながら、彼らの質問や相談にもお答えいただいた。

藤井亮さん

三戸なつめさんのMV『前髪きりすぎた〜落書き編〜』やPiTaPaの『記憶イラストリレー』を企画・制作するなど、大変ご活躍中のアートディレクター。田中さんとは大学一年生の頃からのご友人で、同じゼミに所属するなど、親睦の深い間柄とのこと。

田中紫紋 プロフィール

たなか しもん/映像作家/デザイナー
1979年神奈川県横浜市生まれ。武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科卒。■代表作・イラスト・デザイン
BABYMETAL リリース作品全般・アートディレクション/ さくら学院 1stアルバム / 雑誌「ヘドバン」表紙・MV制作アーティスト(演出・アニメーション等)
BABYMETAL / CASCADE / Chara / MONOBRIGHT / RED SPIDER / SiM / THE 野党 / 水曜日のカンパネラ / 星屑スキャット・TV番組(演出・アニメーション等)
テレビ朝日「報道ステーション」/ NHK「七色のおばんざい」 / NHK Eテレ「プレキソ英語」 / (NHK BSプレミアム「たけしの“これがホントのニッポン芸能史”」/NHK BSプレミアム「額縁をくぐって物語の中へ 」 / フジテレビ「息もできない夏・スポット」/ NHK「突撃!アッとホーム」 / SPACE SHOWER TV「音樂無双」 / NHK「大航海ごはん」 / BSフジ「旅する音樂」

とにかく本気で遊んだ学生時代。

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——展示を見ていると、学生時代の頃を思い出されたりしますか?

田中:平面の展示を見ているとそうでもないけれど、映像を見ると思い出すところはありますね。こういうことやったな!みたいな。昔は設備がなかったので、自分たちでプロジェクターを借りて上映していました。

藤井:僕は学校や講義で習ったことほとんど覚えていない。授業中に何をして遊んだかは覚えているけれど(笑)。具体的な授業の内容は全然思い出せないです。不思議と考え方は身についているんだけど。

田中:俺は色彩学の授業でプリズムをいじったのとか覚えてるよ。すごい授業が好きだったからね(笑)。

藤井:そうだったっけ?(笑)  そんなイメージまったくないけど。

田中:僕は一年生の時点で既にかなり多くの授業を履修していたんです。せっかく大学に入ったのだから、全部授業をやってみようと、毎日9時から19時まで詰め込みました。土曜日にも4時間入れたんじゃないかな。そうしたら3年生の段階で既に卒業に要する単位数に近いくらい単位を修得していたため、気が緩んでしまい卒業が危なくなってしまった(笑)。

——お二人にとってムサビで過ごした学生時代はどのようなものでしたか?

藤井:遊ぶためには、一切手間を厭わなかった(笑)。深夜にわざわざ学校へ忍び込んで“だるまさんがころんだ”をしたりしていましたね。

田中:“ケードロ”もよくやりました。国分寺駅から何キロか範囲を決めて、100人くらいの大規模なものをするんです。50:50で対決したのですが、僕は逃げる側でした。完璧な女装をして、逃げることもなくずっと喫茶店でコーヒーを飲んでいた(笑)。
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 今年度初の積雪が見られた1月の中旬。屋外展示には少し過酷な環境でしたが、どの展示スペースにも魅力的な作品ばかり。 
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 作品は、平面・立体・映像などその表現方法も様々。まるで学生時代に戻ったかのように、どの作品にも熱心に目を通すお二人。 
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 なかでも映像作品の展示が見つかると、すかさず入室。残念ながら中の様子はお伝えできないが、技術や構成に関してお二人で意見を交える場面がありつつも、笑いどころではしっかりと楽しんでいる様子だった。 

遊びの延長に創造がある。学生時代の失敗は買ってでもしろ!

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 懐かしの学食で、在学生の方から質問や相談があった。

一森加奈子さん(写真、左手前)、鈴木健一さん(写真、左奥)

◆お二人とも映像のイメージが強いのですが、映像の道に進もうと思ったきっかけはありますか?

藤井:僕らの時代からiMacが出始めて、家でも編集が出来るようになったのが一番大きいんじゃないかな。

田中:そうだね。学生が買えるような身近な機材でCGとかが作れる時代になりつつあった。だからやりたくなった。

みんなでつるんでいる時に、遊びが映像作りだったんですよね。この機材いじって良いらしいぜ、と。それで色々やり始めたんです。楽しいから、どんどん新たな技術を取り入れていく。感覚的には、現在仕事として作る映像も、遊びの延長にあるようなイメージですね。映像を始めたきっかけはそれだな、きっと。

◆大学に入学する前にやりたかったこととは別に、学校で勉強しているうちにやりたいことが出てきました。手広く色々なことをやるうちに、結局何がしたいのか自分でもわからなくなってしまう危機感を抱いています。

藤井:それはすごく良いことだと思う。大学生活は、自分が何をしたいのか見つけるタイミングにちょうど良いと思います。色々と挑戦できるのが大学の良いところ。とりあえず好きなことは何でもやってみるのが良いんじゃないかな。

田中:専門学校との大きな違いはそこにあると思う。やりたいことがブレて良いのが大学。決まった道を極める専門学校では、すごいプロフェッショナルになれるかもしれないけれど、他の可能性を狭めてしまったり、他の表現の誘惑に勝てないこともあるかもしれない。

藤井:デザインをやりたくて大学に入ったのに、他の誘惑で色々な可能性を試した結果、最後にまたデザインへ戻って来る人も周りにいましたよ。

田中:今は色々悩める、本当に楽しい時期だと思う。だから色々なことにチャレンジした方が良いと思います!

◆目の前に魅力的なものがたくさんありすぎて、どれに手をつけて良いのかわからなくなってしまうことがあります。

藤井:インターネットの普及や技術の進歩によって、自分がやりたいことが一人で完結して、しかもそれがすぐに評価されてしまうのが怖いこともありますね。昔は作ったら身内に見せておしまいだったけれど、今はそれをネット上にアップできてしまう。評価される、誰にでも点数をつけられてしまうのは怖いところだと思います。

田中:僕らの時代は不特定多数の人に見せようという気持ちは全くなかったよね。今は何か作って、それを世間に出すつもりがなくても、そうなってしまう可能性がある。気を遣って社会人のような作り方をしなくてはいけないのはネット社会の弊害かもしれないね。

藤井:卒業作品を見てみても、少し気を遣っている節があるよね。ちゃんとしている。でも公共に発表するものは、社会人になると死ぬほど作らなくてはいけなくなるから、むしろそうでないものを今のうちに作っておいた方が良いかもしれません。

田中:これは人に見せられない!みたいな、黒歴史をたくさん作っておいた方が良い(笑)。自作のポエムとか、そういうちょっとあとで見ると悶えてしまうようなものは、今しかできないことだからやっておいた方が良いんじゃないかな。あえて失敗しに行って欲しい。僕らは勝手に失敗していたけれど、それを狙ってやって欲しい。

藤井:自分の格好つけた「俺写真集」を出版するとかね。ずれてる方が絶対良いと思います!

田中:デザイン云々よりも、頭からのアウトプット、出力のバリエーションみたいなものを増やせるのは、今の時期だけだと思います。何か思いついた時に、映像で作るか、平面で作るか、立体で作るかパターンを様々持っておいた方が良い。そういう意味で、何にでもチャレンジできるのはすごく大学の良いところだと思います。楽しく、これからも頑張って下さい!

取材協力:武蔵野美術大学

Interview/Text: 石川ゆうり
Photo: 近藤宏一


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