ディズニーとユニバーサルスタジオジャパン(USJ)、何かと比較される日本を代表するこの2つのテーマパークの明暗が分かれた。1983年の開園以来、「不動の日本一のテーマパーク」としての地位を守ってきた東京ディズニーランドの経営が不調であるというのだ。一方で、2001年に開園し、2004年には経営破綻状態にまで陥っていたUSJが、2015年に東京ディズニーシーの総入場者数を抜いて、国内2位のテーマパークにまで成長する好調さを見せている。
「ハリーポッター」や「ジュラシックパーク」などの映画の世界を体感できるUSJ、世界的アニメーション・ディズニーの夢の世界を体感できるディズニーランド、双方ともにテーマパークのコンテンツは世界最高レベルである。しかし、なぜ東京ディズニーランドとUSJの明暗は分かれたのだろうか。
明暗を分けた要因はいくつかあるが、大きな要因としては、「観光客の取り込み」「上海ディズニーランド」「価格戦略」の3つが挙げられるだろう。今回は、ディズニーの不調とUSJの好調をこれら3つの要因に視点を置いて、見ていくとしよう。
明暗分ける分岐点①:「爆買い観光客」の取り込み
出典:chinesetourists.wordpress.com 中国人観光客による「爆買い」は、日本のあらゆるビジネスに多大な影響を与えている。そのため、多くの企業が中国人観光客を取り込むための施策を行なっており、取り込みに成功すれば、新規顧客層の獲得成功ということになり売上を伸ばす要因となる。USJやディズニーといったテーマパークも同様に、日本に流れ込んでくる中国人観光客をどれだけ取り込めるかが明暗を分けるポイントとなるのだ。
2016年1月25日に発表された「春節旅行者が選ぶ世界人気都市ランキング」では、大阪が1位となっている。大阪が選ばれる要因は、「地理的な近さ」「LCCの増便」などがあるが、USJの存在もまた大きく貢献している。USJでは、世界的に有名な映画の世界を体感することができる上に、日本の人気アニメにも触れることができる。USJの強みは、世界中の観光客の誰もが理解できる世界だけでなく、日本文化に触れられる世界もあるということなのだ。
東京ディズニーランドも全く中国人観光客を取り込めなかったわけではないが、USJほどの取り込みはできなかった。総入場者数における外国人観光客の割合は、USJが10%を超えており、ディズニーは数値を公開はしていないが推定6%と言われている。結果、USJが東京ディズニーシーの総入場者数を抜いたのだ。
明暗を分ける分岐点②:「上海ディズニーランド」の設立
出典:www.shanghaidisneyresort.com 一方で、USJは上海ディズニーランドの開園に大打撃は受けないのだろうか。USJはそもそもディズニーとは異なる世界を見せている。そのため、上海ディズニーランドとの差別化がはっきりしている分、影響はほとんど受けないと言える。
2015年時点で1,390万人の総入場者数を記録したUSJと、約1,800万人の総入場者数を記録した東京ディズニーランドの差は約400万人である。この400万人の差が「上海ディズニーランド」の誕生によって、どこまで縮んでいくのか目が離せない。
明暗を分ける分岐点③:「価格戦略」
出典:guide.vacationxtravel.com 2016年4月からディズニーランドの大人1dayチケットが6,900円から7,400円へと値上がりした。この値上げによって、USJとディズニーランドのチケット価格は同価格となった。なぜ、ディズニーは業績が減速気味なのにも関わらず、チケット価格を値上げしたのだろうか。
東京ディズニーランドは、2017年新テーマゾーンを含む大型リニューアルを予定している。そのテーマとは、世界的大ヒット映画「アナと雪の女王」である。そのため、チケットの単価を上げたとしても総入場者数が減ることはないと予想し、売上の向上を狙っているのだ。
ディズニーランドに対して、USJが打ち出した価格戦略は「エクスプレス・パス」だ。エクスプレス・パスは、ディズニーランドのファストパスと同様に、USJのアトラクションに優先的に乗る権利を持つことができるパスポートだ。しかし、エクスプレス・パスはファストパスと異なり、有料なのだ。
エクスプレス・パスの最大の特徴は、USJへの予想入場者数に合わせて価格が変動するということである。最低6,600円、最高9,800円というかなり幅広い価格変動が日々起きている。「同じ価格のパスポートを購入しているのに、日によって効果が異なる」ということに対して、不公平だと感じたUSJは「全てのお客様を平等に」という考えで、この価格戦略を打ち出したのだ。
業績不振と言われるディズニーと好調のUSJを比較しながら見て、テーマパークにとって「消費者目線」がどれだけシビアなものか、お分かりいただけただろうか。「平等に」「飽きられないように」と日々様々な施策を打ち出し、試行錯誤を繰り返している。今後もディズニーとUSJの競争激化から目が離せない。
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