世界中で様々な問題が起きている。政治問題・経済問題・環境問題・倫理問題・宗教問題など、一見すると各分野で問題が起きているように思えるだろう。しかし、現在起きている問題はそんなに単純なものではない。例えば、経済の問題を経済学者の思考だけで解決することなど、不可能に近いのだ。
なぜなら、経済は政治・宗教・環境など様々な分野から影響を受けやすいデリケートなものだ。経済のシステムを全て頭に入れている経済学者であったとしても、政治・宗教・環境のシステムまで理解していなければ、到底解決できない。このように、私たちは問題を複合的なものではなく、単一的なものだと誤解しがちだ。問題の全体像を把握し、システム的に思考する必要があるのだ。
そこで今回は、『世界がもし100人の村だったら』の原案者であるドネラ・H・メドウズ氏の『世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方』から、複合的な問題をシステムと捉え、全体像を捉える思考法を見ていくとしよう。
システムを崩壊させる、「組織」と「個人」のズレとは
出典:www.btms.com.cy 一見、自分は合理的に動いているつもりでいても、実際はシステム的に全体視してみるとおかしな方向へ向かっていることがある。例えば、国防のために軍事力を強化させたAという国があったとしよう。Aの動向を脅威に感じたBという国は、「A以上の軍事力」を持つようになる。同様にBを見た国々は、国防のために軍事力を強化するという思考が連鎖する。
しかし、よく考えてみれば、その軍事力増強は国防であったのに、どの国も攻め込む準備をしている思考だと相手のことを誤解するのだ。システム的にはおかしなこの光景も、各国の首脳陣からすれば合理的に動いているということになるのだろう。問題解決においても同様で、「システム的に考察した解決プロセス」と「各自の合理的思考」の間でズレが生じるのだ。
現在の課題解決においても、このシステム思考がなされていないことから問題解決の長期化が生じている。環境問題の改善策が経済問題を生み、経済問題の改善策が政治問題を生む。こうした「負の連鎖」が非システム思考の問題解決法では起きやすい。今求められているのは、専門的なスペシャリストではなく、全てのシステムを達観できるジェネラリストなのだ。
革新的システム思考術「フィードバックループ」とは
出典:critical-thinkers.com 例えば、常に一定量排水するポンプの総水量を維持させるためには、一定量の水を追加する必要がある。これは総水量を維持するという「目的」と排水するという「問題」というフィードバックから、総水量を維持させるシステムができている。このシステムを「フィードバックループ」というのだ。
フィードバックループは、目の前の問題をシステム的に捉え、どのような対処をすることで好循環もしくは悪循環が生まれるか思考する方法である。例えば、競合のコンビニに売上が劣っている場合、様々な要因が挙げられる。そうした要因をどのように変化させれば、売上は伸びるのか思考するのだ。または、何が原因で売上が下がる悪循環を生み出しているのか、発見することができるのだ。
注意しなければならないのは、フィードバックループのシステム自体に変化が起こることがあるということだ。例えば、競合のコンビニが新しく1店舗増えたとすると、それまでのフィードバックループでは好循環を生むことはできない。そもそもシステムそのものが正確でなければ、このシステム思考は効果がないものになるのだ。
「組織一体のシステム思考」を育成する心得とは
出典:blogs.wsj.com 個人的な問題においては、こうしたシステム思考がなくとも解決することは可能だ。しかし、会社などの組織的な問題を解決する際は、一人ではなく複数人が行動するため、システム思考なしには解決は難しくなるだろう。組織のトップに求められることは、「広い情報の共有」である。
社員は組織の一員として与えられた情報から、各自が合理的に思考したアプローチを仕掛ける。もし、情報が限定的であれば、組織が求める解決方法とは異なるアプローチになる。または、問題の核心とはほど遠い方法論が生まれてしまうのだ。組織的なシステム思考の際に、何よりも重要なのが「情報の共有」なのだ。
一方で、社員側も「情報の獲得」に貪欲でなければならない。成果を出すことに奮闘する社員にありがちなのが、いつの間にか「組織の成果」が「個人の成果」を重視する思考に陥ってしまうということだ。「個人の成果」が「組織の成果」に結びつくことは時々あるが、システム思考を利用した組織的アプローチが最も効果的なのだ。
ビジネスにおいて様々な思考法があるが、多くの思考法は個人の成果重視であることが多い。確かに様々な思考法は役に立つが、システム思考をまずおさえなければ、その思考法の効果を最大化させることはできないだろう。一流のビジネスマンとなるためには、まず自分が組織の一員であることを自覚しなければならないのだ。
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