2015年12月、サイバーエージェント発のゲーム「ガールフレンド(♪)」がiPadのゲームランキングでトップにランクインした。また、同時に前作の「ガールフレンド(仮)」は利用者数700万人を突破した。これらのゲームを開発したのは、サイバーエージェント史上初の女性執行役員となった横山祐果である。
「史上初の女性執行役員」と聞くと、相当のやり手女性社員を思い浮かべる人も少なくないだろう。しかし、横山祐果は言ってしまえばわかりやすいカリスマ性を持った女性ではなく、至って普通の女性社員なのだ。まして、ゲームプロデューサーにも関わらず、ゲームに対する知識はほとんどなかったという。一体、どのように横山祐果は、大ヒットゲームを生み出したのだろうか。
そこで今回は、サイバーエージェントのゲームプロデューサー・横山祐果が著した『フツーの女子社員が29歳で執行役員になるまで(仮)』から、横山祐果がどのように人気スマホゲームをゲームプロデューサーとして生み出してきたのか見ていくとしよう。
非ゲームマニア・横山祐果がゲームプロデューサーになるまで
出典:ameblo.jp 横山祐果は、慶應義塾大学法学部卒でサイバーエージェントに新卒入社しており、ゲームは一般人並みにしかやったことがなかった。1年目から2年目まではアメブロのPV数を改善させるために細かい改善策を練るが、あまり成果に結びつかなかったという。しかし、横山祐果は、とにかく名前を覚えてもらうために社内コンペなどに全力を注いだ。
そして3年目、スマホゲーム時代が到来する頃にゲームプロデューサーに挑戦してみたいと思い、ゲーム事業へ異動した。そこで最初に生み出したゲームが「私のホストちゃん」である。このゲームのテレビ化・舞台化に成功し、比較的長い間、多くのユーザーに利用されるようになった。
5年目になると、スマホゲームに注力した部署でゲームプロデューサーとして働き、「ガールフレンド(仮)」を制作した。それまでの恋愛カードゲームにはなかった声優のセリフを組み込むことで、他の恋愛カードゲームとの差別化に成功した。こうして、2015年時点で「ガールフレンド(仮)」は700万人の利用者数を突破する大ヒットゲームとなったのである。そして、7年目になるとサイバーエージェント史上初の女性執行役員に就任したが、現在もゲームプロデューサーとして最前線で活躍している。
素人が「一流プロデューサー」に化けるための働き方
出典:www.cyberagent.co.jp ゲーム事業は、当然のことながら素人が簡単にできるものではない。ゲームプロデューサーとなった横山祐果のデビュー作「私のホストちゃん」も、藤田晋社長に何度もダメ出しを出された上で成り立ったゲームだ。いざ、新たにスマホゲームのゲームプロデューサーとして働こうと思うと、分からないことだらけである。そんな状況で横山祐果は、どのようなことを心掛けたのだろうか。
「教えて上手」「お願い上手」の経験を積む
ゲーム事業に携わる人間は、横山祐果のような素人ばかりではないことは言うまでもなく、横山祐果以外のスタッフたちは、皆それぞれの道のプロであった。そのプロたちをプロデューサーとしてまとめていくためには、彼らに教えを乞う他に近道はなかった。また彼ら自身も、得意分野の質問をされることは嬉しいことだということを横山祐果は知っていた。こうした「教えて上手」が、素人の横山祐果を一流のプロデューサーへ化けさせたのだ。
何より横山祐果を一流のプロデューサーへ化けさせたのは、「お願い上手」である。言い換えるならば、周囲を巻き込む目標への執着心だ。横山祐果は、その日に浮かんだ疑問やアイデアを他のメンバーにその日のうちにぶつけないと気が済まない。また、無知であることを素直に受け入れると同時に、全力で周囲に助けを求めた。迷惑がるメンバーもいたが、この執着心がゲーム事業の成功へ繋がったのだ。
成果を生む、「素直×素直」の対立チームワーク
横山祐果が一流に近づくために教えを乞うことは先ほど述べた通りだが、逆に部下が横山祐果に提案する際も、そのスタンスは同じだ。「なぜ?」「どうして?」といった文言を部下の提案に日々ぶつけている。横山祐果と同様に部下も「なぜ?」「どうして?」をぶつけている。このコミュニケーションはお互いを否定しているわけではなく、素直に思ったことを伝えあっているのだ。
この素直×素直の対立から答えが生まれないことは多々ある。しかし、必ず生まれなかったという結果では終わらせず、一度考え直してまたぶつけるという作業を繰り返すことで成果は生まれるのだ。実際、社員の感想も「横山祐果の無茶ぶりに応えていたら、なんとなく成果が生まれた」というものだった。
ユーザーの心を掴む「ゲームプロデューサーの心得6箇条」とは
出典:dauth.user.ameba.jp スマホゲームの平均寿命は、おおよそ一カ月が山場だと言われている。実に43%のユーザーが一つのスマホゲームを一カ月以内で辞めてしまうというのだ。それだけユーザーは、スマホゲームに対してシビアなのだ。従来のゲーム機とは異なり、手軽に他のゲームへ乗り換えることができるスマホゲームでロングヒットさせることは、ゲームプロデューサーの大きな目標である。横山祐果は、ゲームプロデューサーとして心得6箇条を表している。
①ユーザー視点に立つこと
どんな物事を作る時にも大事な目線だが、作り込めば作り込むほど忘れがちな心得だ。横山祐果の場合、ゲームの素人であったため、とにかく様々なスマホゲームをユーザーとして体験することから始めた。素人であったがために、誰よりもユーザーに近い視点でゲームプロデューサーとしてスマホゲームを生み出すことができたのだ。
②「小さな企画」「細かな文言」にも手を抜かないこと
ユーザーの心を掴むポイントは多種多様で、明確にこれといったものはない。しかし、細かな文言がユーザーの心を掴むことは紛れもない事実だ。ゲームプロデューサーと聞くと、ゲームの本質に注力しているように思われがちだが、実は違う。どんなに素晴らしいゲームでも、触れてもらうきっかけがなければヒットすることはないのだ。
③サイトもゲームも“新鮮さ”が大事ということ
ユーザーは、ゲームに対して少しでも飽きを感じると離れていってしまう。そんなユーザーに長くゲームを楽しんでもらうために横山祐果が大事にしていることは、「新鮮さ」である。一日一日違うコンテンツが何か更新されることで、ユーザーはそれを楽しみに毎日ゲームを利用してくれるのだ。
④世の中のいろいろなものに、アンテナを張ること
自分のゲームの質を高める方法は、何もそこに注力するだけではない。例えば、今世の中で話題になっていることは何かを考え、その要素をゲームに組み込んでみると、ユーザー的には面白いものになるかもしれない。横山祐果は、常に世の中の話題性の高いものをゲームに組み込めないかと考えているという。
⑤「分かりやすさ」にこだわること
説明がなくてもすぐにゲームを楽しめる構造にすることを、横山祐果は藤田社長から教わった。その理由は至ってシンプルなもので、説明を理解しなければ始められないゲームに対して、ユーザーは飽きを感じてしまうのだ。言い換えるならば、「面倒くさい」という感情である。
⑥分からないことは、素直に聞く
チームワークと同じように、質の高いゲームを作るためには「分からないことを分からない」と言える素直さが重要となる。ゲームプロデューサーという立場から無知を恥じてしまうことも不思議ではないが、一流のゲームプロデューサーを目指すならば通らなければならない道である。
横山祐果のゲームプロデューサーが持つべき心得6箇条
- ユーザー視点に立つこと
- 「小さな企画」「細かな文言」にも手を抜かないこと
- サイトもゲームも“新鮮さ”が大事ということ
- 世の中のいろいろなものに、アンテナを張ること
- 「分かりやすさ」にこだわること
- 分からないことは、素直に聞く
ゲームの素人がゲームプロデューサーになることができることを、横山祐果は証明した。しかし、決して横山祐果にその才能があったというわけではないことはお分かりいただけただろう。横山祐果は、一人のビジネスマンとして仕事との向き合い方が一流だったのだ。どの業界・分野においても、横山祐果のような素直さを大事にすることができれば、今は素人でもいずれ一流になれるのである。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう