2016年9月15日、日清食品ホールディングスは「カップヌードルビッグ『謎肉祭』肉盛りペッパーしょうゆ」の販売を休止することを発表した。一ヶ月分と見積もっていた販売数が、たった3日で底をついてしまったためだ。
一見して悪ふざけとも思えるこの商品はなぜ完売したのだろうか? 本記事ではその理由と、日清食品の商品に通じる“攻め”のマーケティングを紹介していこう。
「謎肉」ネット上での“蔑称”をあえて商品名に
出典:www.nissin.com 「謎肉」とは日清食品のシンボルともいえる商品、カップヌードル醤油味に入っているミンチ肉をサイコロ状に固めた「正体不明の肉」の通称である。この怪しい名称を誰が言い始めたは定かではないが、ファンの間で親しまれている名前なのだ(ちなみに正式名称はダイスミンチ)。
日清食品はこの通称とも蔑称ともつかない「謎肉」というネーミングを逆手に取り、通常の10倍「謎肉」を入れたカップヌードル「カップヌードルビッグ『謎肉祭』肉盛りペッパーしょうゆ」を商品として発売したのだ。
見事にTwitterを始めとしたSNS上で大きな話題となり、日清食品自身もTwitterの公式アカウントで「なぞにく」と表示されたコーンビーフのような謎の缶詰の写真を投稿するなどしたプロモーションを積極的に行った。その結果、メーカーの予想を遥かに超える、「3日で完売」という事態に至ったのである。
一週間で放送中止……あえて炎上を狙う真意とは
出典:www.cupnoodle.jp 日清食品と言うと、カップヌードルブランドにビートたけし氏などに起用し、「バカやろう」というコンセプトのCMが「炎上」して1週間で放送中止となったことが記憶に新しい。
不倫やゴーストライター問題など、世間的に大きくバッシングを集めた人物を起用したことによる「炎上」だったが、日清食品は謝罪文を公開した後も放送を継続している。「炎上」を全く問題にしていないような姿勢がTwitterやニュースサイト、ブログに至るまで様々なところで反響を呼んだのだ。
今回の「謎肉」もこうしたアグレッシブな宣伝戦略から生まれた商品。まさしく「バカやろう」を体現した商品だと言えるだろう。筆者も発売当初に食べてみたが、「確かにバカだな」と言えるほどの「謎肉」が投入されており、肉の量が多い分、スープに染み出てくるうまみも多いように感じた。
どんばれ屋閉店:常にSNSを視野に入れたマーケティング
2016年7月22日に閉店した「どんばれ屋」も日清食品のマーケティング戦略が如実に現れた一例だと言えるだろう。この「どんばれ屋」、店頭で通常のどん兵衛と何ら変わりないカップ麺を出してしまうという店。余りに直球のコンセプトから、出店された時から既に大きな話題を集めたのだが、閉店した際のメッセージがまた話題を呼んだ。
閉店時に店頭に置かれた「お湯入れるだけでいいから楽だったのに……」という手紙がSNSで拡散され、大きな話題となった。実際に店主がそう思っているかは置いておくとして、日清食品の「常に若者、SNSを見据えたマーケティング」をひしひしと感じる。
カップヌードルのCM「私は笑えない」
出典:www.nissin.com こうした、日清食品のアグレッシブなマーケティングについて、同社代表取締役である安藤宏基氏は日系ビジネスのインタビューでこう述べている。
40年以上も前から続くヒット商品であるカップヌードルに、常に新しく若々しいイメージを与え続けるため、自分たちの世代がひどいと思っても批判を受けようとも、“常に若くある”ためのブランディングを貫き通しているのである。
さらに炎上した一連のカップヌードルのCMについても「私は笑えない」と語っている。驚きの発言のように思えるが、一貫したブランディングの為に社内の若い意見を尊重してる証拠だと言えるだろう。
冒頭でご紹介した「カップヌードルビッグ『謎肉祭』肉盛りペッパーしょうゆ」は10月24日から再販している。今回は充分な供給量を用意しているとのことなので、買えなかった人は是非食べてみてはいかがだろうか?
売れ行きはもちろん、またしてもSNSで拡散されることは間違いない、カップヌードル「謎肉」。そして、それに伴った日清食品の次なるマーケティングに期待したいところである。
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