「頑張ることは大事!」「人助けは大事!」「プロセスは大事!」――中世イタリアの思想家・マキアヴェッリによる思想「マキャベリズム」は、そのような倫理観のすべてを打破する。実際、そのような「キレイごと」で生きていけるほど現実は甘くはない。むしろ、厳しい現実さえも直視するリアリズムが必要であり、それこそがマキャベリズムなのだ。
本書『マキアヴェッリ語録』には、そのように現実的なマキャベリズムが込められている。是非、本書でマキャベリズムの真髄を知り、どのような現実とも向き合える「強い哲学」を築いてほしい。
キレイごとを覆す、マキャベリズムの大前提
「手段」よりも、「目的」を優先する
マキャベリズムの真髄は、「手段」よりも「目的」を重視することにある。日本においても、「勝てば官軍」というマキャベリズムの真髄に適った諺がある。また、現代のビジネスシーンにおいても、マキャベリズムの「目的」重視路線は引き継がれており、“なにをしてでも結果を出す”リーダーは信頼され、重宝される。実際、会社においてもマキャベリズムは根付いており、目的を達成している会社員を左遷することはしない。左遷されるときは、目的を達成できていないときであるので、会社はキャベリズムに則っているのだ。
一方で、マキャベリズムに対して「手段も大事ではないか」という反論がある。だが、マキャベリズムでは、それでも「目的」に至上価値を置く。そんなマキャベリズムを支持する意見として、「目的を達成できれば手段の悪さも補てんできる」というものがある。例えば、マキャベリズムを支持する報道カメラマンが川で溺れている人を助けもしないで、その写真を撮るという「目的」を達成したとしよう。人道上、適切な手段でないかもしれないが、マキャベリズムを支持する観点では、撮られた写真の反響によりその川に安易に入れないような対策が施される可能性もあり、「手段の悪さ」はいくらでも補てんが効くとしている。
キレイごとを覆す、5つの実戦的マキャベリズム
戦闘で敵を欺くことは、称賛に値する
マキャベリズムでは、戦場において人を欺くことを称賛している。そのマキャベリズムの理由としては、「戦場においては、自分が生還することが至上目的だからだ」としている。考えてみれば、スポーツ等でも「敵を欺く」ことは、マキャベリズム以前に勝つために当然の行為である。
勝利は、五分をもって最上とする
マキャベリズムでは、勝利は五分をもって最上とする。なぜなら、「人は上手くいきすぎると油断し、次に敗北する可能性がある」ことを、マキャベリズムは警戒しているからだ。また、マキャベリズムでは、七分の勝利を中、完全な勝利を下としている。このようにただ勝つのではなく、勝ち方にまでこだわるのがマキャベリズムなのだ。
徹底的に屈辱を与えられた者を、抜擢してはならない
マキャベリズムでは、一度でも徹底的に侮辱を浴びせ、手ひどい仕打ちを与えたことのある者を抜擢することを禁じている。なぜなら、過去の屈辱を相手に根に持たれて、裏切られる可能性があるので、マキャベリズムの目的達成の理念に反するからである。
日本においても、このマキャベリズムは根付いている。例えば、一度会社とモメて辞めていった者が、その会社に再就職を求めても、会社はマキャベリズム的観点に照らし合わせるまでもなく、雇わないことが多い。
日本においても、このマキャベリズムは根付いている。例えば、一度会社とモメて辞めていった者が、その会社に再就職を求めても、会社はマキャベリズム的観点に照らし合わせるまでもなく、雇わないことが多い。
組織の指揮官は、一人であるべきである
例えば、スポーツのチームに監督は二人といらないだろう。それは、マキャベリズムの観点から見れば当然のことである。マキャベリズムでは、目的達成のために指揮系統が一本化されていることを至上とするからだ。また、指揮系統が二つ以上あることで、指揮官同士が揉めて指揮系統が混乱してしまうこともあるので、マキャベリズムでは、なおさら指揮系統を一本化した方がいいとしている。
このマキャベリズムをさらに推し進めると、目的達成のためには「優れた指揮官が必要」という結論に至る。このマキャベリズムの好例としては、アップル社のスティーブ・ジョブズであろう。彼は、優秀な自身の能力を機能させるためにマキャベリズムを大いに行使し、数々の優れた新製品を創り出した。そのように、偉大なリーダーを活かすのがマキャベリズムなのである。
「正義ある無秩序」よりも「正義なき秩序」の方がいい
マキャベリズムでは、目的達成のためには正義がなくとも、「絶対的な秩序」が必要であるという。例えば先に取り上げたジョブズは、社内では自分の好悪を絶対秩序とし、自分に適さない社員を即クビにするといったような「一般的でない人事」をしたが、社員は「ジョブズ」という絶対秩序に気に入られるために、日々の仕事に打ち込んだので、仕事の効率そのものは良かった。
以上、本書『マキアヴェッリ語録』の紹介するマキャベリズムについて抜粋してきた。マキャベリズムに込められた「目的に対する哲学」は、今の社会においても斬新さを失わない反面、マキャベリズムの目的至上主義は、受け入れがたい人も多いかもしれない。だが、それでいいのだ。そうやって、あなた自身の中でマキャベリズムと対論を交わすことで、よりあなたにフィットした「強い哲学」が生まれるであろう。是非、本書『マキアヴェッリ語録』をたたき台にして、あなた流のオリジナルな哲学を築いて欲しい。
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