「あいつは一匹オオカミだから、マネジメント能力はない」――そんな声を聞くことは多いが、実はそのような一人よがりであった時代の失敗をバネにすれば、マネジメント能力を開花させる近道になることがある。
本書『シャアに学ぶ“逆境”に克つ仕事術』では、ガンダムの登場人物のシャアを通して、「ユルイ部下やチーム」を勝利に導く秘訣を紹介していく。
当初は、マネジメント能力が欠如していたシャア
ガンダムにおける永遠のライバル・シャアは、今や日本のアニメにおいて抜群の人気を誇るが、赤い彗星と呼ばれていたプレイヤーの頃は、マネジメント能力については「赤点」と言っても良かった。理由としては、「命令違反しても実績を上げればいい」と勝手に考え、組織の秩序を管理するマネジメント能力が欠如していたからだ。そのため、マネジメント能力を駆使してサポートすべきであった部下を死なせてしまった。こういったマネジメント欠如によって部下を死なせたり、モビルスーツを失ったことは数知れず。
こういった当時のマネジメント能力の欠如による苦い経験が、のちにマネジメント能力を大きく開花させるための良いバネとなったのであろう。
「チームを導く」シャアの4つのマネジメント能力
マネジメント能力①:全体を見渡す
一匹狼時代の苦い教訓により、実戦でのマネジメント能力の肝は、まず「チーム全体を見渡すこと」だと確信する。そのため問題行動を起こしがちな部下に対して、「冷静になれ」「落ち着いて行動するんだ」「油断するなよ」と繰り返すことで、全体のバランスを見渡したマネジメント能力を発揮している。
マネジメント能力②:チームの「目標」を共有
シャアは、作戦実行時に何度も目的を呼びかけることで、チーム内の目的意識を高めるというマネジメント能力を発揮している。業務では、部下はともすれば手段が先んじて、目的が後になりがちなので、こうやって「目的を促す」ためのマネジメント能力を随時発揮することが求められる。また、こういったマネジメント能力はチーム内の目的共有を通して、結束を促進するのだ。
マネジメント能力③:緊張感の維持
シャアは、場の緊張感を維持するためにマネジメント能力を発揮している。そのマネジメント能力の例としては、作戦時において部下に「その過信は自分の足元をすくうぞ」と慢心が危険であることを何度も注意し、部下の緊張感を維持しているというのがある。また、このような周囲の雰囲気を考慮に入れたマネジメント能力は、目的達成のみならずチームの「色合い」を作りだし、チームブランドを創り出す元になる効果的なマネジメント能力である。
マネジメント能力④:設立者のポリシーを語って、周囲を巻き込む
シャアは、設立者の価値観や理想を語りかけることで「大きな目的」を意識させるマネジメント能力を発揮し、部下に積極的な貢献を促している。逆に言えば、日常において部下が積極的にならないのは、「大きな目的」を意識させることのできるマネジメント能力を行使できていないからかもしれない。
「ユルイ新人を導く」シャアの3つのマネジメント能力
マネジメント能力①:「どう感じているんだい?」と質問し、当事者意識を促す
シャアは時折、「独りよがりな行動」に走りがちな新人・カミーユに「君はどう感じているんだい?」と発問し、当事者意識を持たせるマネジメント能力を行使している。そこで、カミーユがチームの方向性とずれた発言をしても、客観的な分析を混ぜ、本人の感情を逆なでないようにしてマネジメント能力を発揮しているのだ。
恐らく、シャア本人の過去の独りよがりだった経験があるおかげで、カミーユの立場に共感し、彼に対して効果的なマネジメント能力を行使できたのだろう。こういったことから、一人よがりだった時期も、マネジメント能力を開花させるためには無駄ではないことが言える。
マネジメント能力②:努力や成果へのフィードバックを繰り返し、やる気を引き出す
シャアは、上記の新人・カミーユが努力していることに対して、「いい傾向だ」と即座にフィードバックすることで、本人のやる気を引き出せるようなマネジメント能力を発揮している。また、カミーユが結果を出した際も、情勢におけるその客観的価値を述べて本人の意識を促すことで、「やる気を引き出す」マネジメント能力を発揮している。
マネジメント能力③:相手の立場に立って、客観的に叱る
あなたは、新人が間違った努力をしている際、どのようにマネジメント能力を発揮するだろうか? マネジメント能力のない人は、そこで「それではダメだ」と否定してしまう。だが、それでは自身が否定された印象を与えてしまい、マネジメント能力を適切に行使できているとは言い難い。シャアのようにマネジメント能力がある人は、「それは、こういう理由で君が失敗する可能性がある」と「相手の立場に立った説明」を心掛ける。こうやってマネジメント能力を発揮することで、部下は「あ、自分のことを考えてくれてるな」と安心して、あなたの言うことを素直に聞いてくれるだろう。
以上、シャアの行動を通して、「チームや部下を導くマネジメント能力」について考えてきた。そのマネジメントの能力のコツとしては、「状況をチームや部下の立場に合わせて客観的にアドバイス」することであろう。こういったマネジメント能力をこまめに駆使することで、チームや新人は目的に対して、絶大な結束力を発揮できるようになる。是非、本書を手に取って、シャアのように黄金のマネジメント能力を有す人材となっていただきたい。
シャアに学ぶ“逆境”に克つ仕事術 : 鈴木 博毅 : 本 : Amazon
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