出版不況により、今や小説家にとっては厳しい世情だが、そのような逆境でもヒットを次々と飛ばす小説家がいる。――『すべてがFになる』の著者・森博嗣だ。彼は、従来のアーティストとしての小説家像から一歩出て、世の中に「新しい小説家像」を提示する。本書『小説家という職業』には、これから小説家が世の中でベストセラーを飛ばすためのノウハウが込められている。
「小説家志望時」から「奥の手」を使っていた森博嗣
累計1,000万部のベストセラー小説家である森博嗣は、当初は大学の建築学科の教授をしていた。そこで「小遣い稼ぎ」のために、毎日わずか3時間で原稿用紙400枚書く「小説家志望」として働き始めた。その「小説家志望」時の執筆スピードが一時間で6千字というから、既に通常の「プロの小説家」の文章量を圧倒的に上回っていた。そこまでの文章量を生産できる「小説家志望」になれたのは、大学での研究論文を書くノウハウが「小説家志望」時代にも役立ったからだ。
そして、小説家を志望して講談社のメフィスト賞に作品を提出し始めた。そこでは「成長著しい小説家志望」と評価されるために、提出作品の質を提出するたびにわかりやすく高めていった。やがて予想通り、「成長著しい小説家志望」として編集者の目に留まり、入賞し、晴れて「プロの小説家」になった。
小説家は、ビジネスマン、そしてインターネットを使いこなせ
森博嗣は、「ベストセラーを叩き出す小説家になりたければ、『小説家はビジネスマンである』ととらえ、チャンス獲得のためにインターネットを使いこなす小説家になれ」と言っている。確かに、ベストセラーという結果を必然としたければ、小説家ではなくビジネスマンとして結果にこだわるべきである。また、「そのためにインターネットを使いこなして、小説家としてのチャンスを獲得していかなければならない」としている。
森博嗣は、インターネットの具体的な利用法においても、「小説家はインターネットで自作の感想からニーズを把握し、それをいい意味で裏切るような展開をつくれ」と述べる。なぜなら、すべての新たなヒット商品は、顧客のニーズを満たしつつ、それを裏切るような「読めない要素」が組み込まれているからだ。小説家の作品も商品なので、視点は変わらないのだろう。
森博嗣は、インターネットの具体的な利用法においても、「小説家はインターネットで自作の感想からニーズを把握し、それをいい意味で裏切るような展開をつくれ」と述べる。なぜなら、すべての新たなヒット商品は、顧客のニーズを満たしつつ、それを裏切るような「読めない要素」が組み込まれているからだ。小説家の作品も商品なので、視点は変わらないのだろう。
小説家は、ナゾを設けろ
森博嗣は、「小説家に限らず人の評判を集めるコツは、突っ込みどころがあることだ」と断言する。例えば、CMで言うと、わざと奇抜な展開で視聴者の突っ込みを誘い、口コミを広めるそうだ。同様に、小説家の作品も謎を残すことで、読者のあいだでツッコミを誘うことができ、口コミが広まる。そうして作品の評判が広まれば、必然的にその小説家の作品は売れるのだ。
小説家は、テーマを設けるな
小説においては、読者が勝手にその小説のテーマを想像するので、改めて小説家自身がテーマを設定する必要はないという。仮に小説家がテーマを設定していても、読者は違うテーマを想定する「テーマの一人歩き」は珍しくないので、小説家がテーマを設けるのは不要な作業だそうだ。作品とは、読者が評価するものである以上、テーマも小説家が決める必要はないということなのだろう。
以上、森博嗣のベストセラー小説家になるためのエッセンスをまとめた。その小説家意識は、徹底的なビジネスマン意識だ。あなたも、「ビジネスマンとしての小説家」になり、出版不況の影響が著しい小説家の世界を盛り上げていただきたい。
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