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『下町ロケット』佃の牙城が崩壊!? フレームワーク思考“3C分析”による競争優位の築き方

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2016/05/16(最終更新日:2016/05/16)


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『下町ロケット』佃の牙城が崩壊!? フレームワーク思考“3C分析”による競争優位の築き方 1番目の画像
by Walther Siksma
 事業を成功させるためには、顧客のニーズを捉えることが欠かせない。当然、そのニーズに合う製品・サービスを、自社が提供できることも必要だろう。では、顧客のニーズを満たす製品・サービスを自社が提供さえできれば、事業は成功するのだろうか?

 当然のことながら、世の中には自社に近い製品やサービスを提供する企業、すなわち「競合」が存在する。事業を成功させるには、自社が良質な製品やサービスを提供するだけではなく、競合を上回る必要があるのだ。

 この「顧客」、「競合」、「自社」の3つの視点で分析するフレームワークを「3C分析」と言う。今回は、『下町ロケット』の佃製作所を参考に、この3C分析についてご説明しよう。

フレームワーク思考“3C分析”とは何か?

 3C分析の「3C」とは、「顧客(Customer)」、「競合(Competitor)」、「自社(Company)」のそれぞれの頭文字だ。主に環境分析のためのフレームワークで、顧客や競合の特徴を把握したうえで、競争に勝ち抜くための重要な成功要因を分析し、自社の戦略に活かす目的で使用される。具体的には下記の視点で分析する。
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 3C分析は、新たな市場への参入、既存の市場からの撤退、自社の戦略を再定義する際によく使用される。「市場の中で勝ち抜くために、どのような戦略を取るべきか?」「現在の戦略で勝ち残ることができるのか?」など、自社の戦略を検討する場合には3C分析を使うと効果的だ。

フレームワーク思考“3C分析”活用のポイント

 3C分析は、戦略を構築するための環境分析フレームワークとして効果的な分析手法だが、有効に使用するには注意が必要だ。

 筆者は中小企業診断士として、創業希望者や起業家の支援を行っているが、次のような言葉を聞くことがよくある。

「当社の製品(サービス)は差別化されているから競合は存在しないですよ!」

 しかし、競合がいないということは稀なこと。3C分析おいては、以下のポイントに留意しよう。

1.顧客の視点

 まず大切なことは、顧客のニーズを起点にすること。どのようなニーズを持っている人が自社の商品を選んでいる/選ぶと想定されるのか、を考えよう。

 例えば、マクドナルドの考える顧客のニーズが「美味しいハンバーガーを食べたい」であれば、ロッテリアやモスバーガーが競合となるが、「安く手軽に食事を済ませたい」であれば、吉野家やコンビニのイートインが競合となるだろう。顧客のニーズの捉え方によって競合は全く変わり、自社の提供できる価値や活用できるリソース等も変わってくるはず。そのため、3C分析においては、顧客のニーズを起点とすることが重要なのだ。

 また、市場性も大切なポイント。「市場はあるのか?」 言い換えれば、「お金を払う人たちは本当にいるのかどうか?」ということ。競合が存在しない、ということは、そもそもマーケットとして成立しない可能性もある。顧客にインタビューなどを行い、「自社の製品やサービスを本当に必要としているのか?」「お金を払ってもらえるのか?」を検討する必要があるのだ。

 さらにマーケット全体の動向をマクロの視点で考える際には、第3回でご紹介したPEST分析を活用すると効果的だ。

2.競合の視点

 競合がいない、と思える場合は、もう一度、顧客のニーズの起点に考えてみよう。自社の製品・サービスを選択しない場合には、顧客はどのようにニーズを満たしているのだろうか? おそらく、何らかの代替案があるはずで、そもそもニーズ自体が存在しない、あまりニーズが強くない可能性もある。

 例えば、総合デパートは、1か所で生活に必要なものが揃う、というニーズに応えている。しかし、1か所で全てを揃えたいというニーズは本当に強いのだろうか? 各専門店で必要なものを揃えるという、代替品へのニーズの方が強いことはないのだろうか? 自身では競合がいないと思っていても、顧客のニーズを満たす代替手段は少なくないもの。競合がいないと思える場合は、顧客のニーズを再度分析すべきだろう。

3.自社の視点

 顧客の視点、競合の視点を踏まえたうえで、自社が価値提供できるか、を考える。自社に価値提案を実現するためのリソースがあるかどうか、どのような活動ができるか、という観点で考えるとよい。さらに、前回の連載で紹介したSWOT分析を活用すると、自社の強みについてより深い分析ができるだろう。


 また、3Cを考えるうえで、もう一つ重要な観点がある。それは、顧客も時間が立てば変化していきニーズや優先順位も変化していく、ということ。仮に自社に圧倒的な強みがあったとしても、顧客の変化に対応できず、さらに競合が顧客のニーズを捉えた場合、果たして何が起きるのだろうか?

 下町ロケットでは、ナカシマとの特許紛争に勝利し、帝国重工へのロケット部品に成功した佃製作所も、3C分析を巧みに活用した新たな競合の出現により危機的な状況に陥ってしまう。

次回(第8回)は、3C分析の後編。下町ロケットの事例を3Cの観点で分析する。


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