あなたの身の回りにあるモノを見てほしい。あなたは自宅の心地よいソファに座ってこの記事を読んでいるかもしれない。そして、あなたの目に入るものの大半は「製品」だ。どの製品も、誰かが思い描き、開発し、製品としてあなたの手に渡ったモノたちだ。誰もが当たり前のように使っているモノでも、最初は試行錯誤が繰り返され、開発に開発を重ねて製品として今の形がある。
そして製品を開発するというのは、ビジネスシーンでは頻繁に見られることだろう。本書『ひらめきをデザインする 熱狂的ヒットのつくりかた』では、商品を開発する過程で大切にしなければならないことを製品開発のプロセスに沿って紹介している。
今回は、本書内から製品開発において大切なことを抜粋していくつか紹介していく。製品のアイデアを出すことに苦手意識を持っていたり、自分には製品開発の才能はないと思っていたりするビジネスマンは、是非参考にしてほしい。
製品開発では市場のシグナルを集めろ
出典:www.wix.com 「シグナル」とは、製品を開発する上での一種の手がかりであり、小さなデータのかけらである。製品開発において、それ自体は何の役にも立たない。しかし、集合体になれば、そしてじっくりと解釈すれば、シグナルは製品を開発する上での市場戦略の原動力になる。
競合製品のユーザー・インターフェースに関する意思決定が行われたら、それは製品の将来的な変化を示すシグナルといえる。そして、競合製品の開発に関わる人たちのブログやSNSでの発言は、彼らの競争上の意図や市場に対する考え方を示すシグナルといえよう。
しかし、シグナルの解釈には時間と経験がいる。そして、解釈には「バイアス」が生じることが多々ある。この解釈は、製品開発を成功へ導きもすれば、失敗へと追いやりもする。
製品開発を進める上で真っ先にすべきなのは、シグナルを集め、系統的に解釈し、製品ビジョンに関する洞察を得るきっかけとなるシグナルだけを厳選しつつ、データに圧倒されて身動きが取れなくなるようなシグナルは無視する、という一定の流れを築くことなのだ。
製品を開発するならユーザーの共感と理解を得ろ
出典:asunow.asu.edu 理解の目的は、知識を得ることだ。ユーザーのニーズを知らずに製品を開発するのは無理がある。知識を得ることが目的の場合、製品開発の市場調査の成果は、事実に関する命題となる。「これが使われているツールだ」「これが既存の仕組みだ」「これがシステムを構成する人々だ」という風に。
こうした事実に関する命題は、製品開発の「機会」の部分を特定するものであり、この種のデザインの機会は「低いところにぶら下がっている果実」と呼ばれている。
共感の目的は、相手の気持ちをつかむことだ。相手の身になり、どんな感覚なのかを味わうことだ。製品開発において、共感を築くための製品調査の本当の目的とは、他の人の気持ちになろうとすることなのだ。
あなた自身が85歳の女性ではなければ、「85歳の女性」になったらどんな気持ちなのかをしばしば考えてみよう。この考えるという行為は、まだ分析の域に留まる。もう一歩突っ込んで、85歳の女性が体験する感情になるべく近い感情を体験しなければならないのだ。
製品の開発をするには「デザイン戦略」を理解する
出典:www.chisconsult.com 「デザイン戦略」とは、製品やサービスを開発し、それらが人々に届ける価値を目標として示したものであり、その目標の実現に必要な全体的なステップを示すものである。本来、製品開発におけるこのステップには技術が含まれる。その場合、製品開発におけるデザイン戦略の目的は、その技術をなるべくシームレスにすること、つまりユーザーがその技術を利用する際の垣根をなるべく低くすることにある。
デザイン戦略は製品開発における一種のストーリーといえる。いかにして技術が黒子と化すのか、人々が明るい未来を体験できるのかを示すストーリーだ。製品やサービスの進化と共に展開していく一連のストーリーであり、製品やサービスの価値提案を表すものなのだ。
製品を開発するには「製品コンセプト・マップ」を作れ
出典:thornleyfallis.com 「製品コンセプト・マップ」とは、製品の概念的な部分同士の関係を示すためのツールだ。製品開発では、ある時点で製品を売り込むという立場に身を置くことになる。つまり疑り深い顧客を説得して、自分たちの描くビジョン通りに、追求するだけの価値があると思わせる作業だ。
製品の開発者が自分の製品について説明するとき、未来の状態について上手く伝えるには、感情と物語を組み合わせ、心と魂に訴えかけるのが普通だ。製品コンセプト・マップは、顧客を説得するのと同時に、教育する手段にもなる。顧客に新しい視点から世界を眺めてもらい、あなたのビジョンを理解するためのメカニズムを与えるのだ。
製品を開発する上で、大切になるであろうことを本書内から抜粋していくつか紹介してきた。冒頭でも述べたように、ビジネスマンである以上は、大きさに関係なく何らかのサービスや製品を開発していくことになるだろう。その道のりは決して平たんではなく、困難の連続だ。
しかし、スティーブ・ジョブズしかり、ビル・ゲイツしかり、大きな成功をつかんだ人物たちは、その道のりを乗り越えてきた。あなたが製品を開発する中で困難にぶつかっているとしたら、本書を読んで参考にしてみてほしい。
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