2020東京オリンピック開催に先立ち、新国立劇場のコンペの話題で盛り上がった建築業界。最終的には世界的なスター建築家、ザハ・ハディドの奇抜なデザインが採用されたが、今回取り上げる建築家・田根剛も、実に面白いコンペ案を提出し最終選考までノミネートされた。
田根剛のコンペ案はその名も「古墳スタジアム」と呼ばれるもので、世界中の注目が集まるオリンピックで日本の伝統を感じてもらおうというコンセプトのもと、日本古来の伝統的な建築をモチーフに考えられた。
2016年3月27日放送のTBS系『情熱大陸』に登場する建築家・田根剛。今回は、そんな建築家・田根剛が持つ「建築の世界観」について迫っていこう。
建築家・田根剛が手掛けた「人を魅了する建築物」
建築家・田根剛は、北海道東海大学の芸術工学部建築学科を卒業。田根剛は、在学時にスウェーデン、卒業後にデンマークと建築が盛んな北欧を渡り歩く。建築家・田根剛が見る建築物とは、日本の物ではなくスケールの大きい北欧の建築物であったのだ。
建築法が日本と大きく異なる海外においては、時にして日本人では考えられないようなクリエイティブでエッジの効いた建築物を目の当たりにすることがある。いつしかそんなスケールの大きい、人を魅了する建築物を創りたいと田根剛は思うのであった。
ここで建築家・田根剛が国内外で手掛けた建築作品をいくつかご紹介していこう。
LIGHT is TIME
ここ最近の田根剛の作品では、最も注目を集めた作品。田根剛とCITIZENとの共同プロジェクトとして、世界的に有名な見本市「ミラノ・サローネ」に出展し、見事Best Entertaining賞とBest Sound賞という2部門同時受賞という快挙を成し遂げる。
青山スパイラルガーデンでも凱旋展が行われ、田根剛の建築の考え方である「場所の記憶」からインスパイアされた作品は訪れた人々を魅了した。
青山スパイラルガーデンでも凱旋展が行われ、田根剛の建築の考え方である「場所の記憶」からインスパイアされた作品は訪れた人々を魅了した。
エストニア国立博物館
エストニア国立博物館は、10年に渡り建築中であり、田根剛のデザインセンスが惜しげもなく注入された外観が特徴の建物だ。
これほどまでに施工に時間がかかるのは、壮大なプロジェクトであるからに相違ないが、田根剛の「場所の記憶」からインスパイアされるエストニアの歴史や町並み、国民性などあらゆる要素を盛り込んでいることもあるだろう。
そのアウトプットとして、近未来的な斬新さが際立つ外観に仕上がったのだ。
これほどまでに施工に時間がかかるのは、壮大なプロジェクトであるからに相違ないが、田根剛の「場所の記憶」からインスパイアされるエストニアの歴史や町並み、国民性などあらゆる要素を盛り込んでいることもあるだろう。
そのアウトプットとして、近未来的な斬新さが際立つ外観に仕上がったのだ。
A HOUSE for OISO
湘南の海の近くの建築物がこちらのA HOUSE for OISOだ。
日本古来の建築様式を軸に、海岸の心地よい風や風土を田根剛がモダンに表現した館である。この建築物をモニュメントとして、観光名所を訪れたその場の記憶を人々に刻み込んで欲しい。
そんな田根剛の思いが込められているのが、この建築物である。
日本古来の建築様式を軸に、海岸の心地よい風や風土を田根剛がモダンに表現した館である。この建築物をモニュメントとして、観光名所を訪れたその場の記憶を人々に刻み込んで欲しい。
そんな田根剛の思いが込められているのが、この建築物である。
建築家・田根剛にとっての建築とは
by Paolo Ferrarini 建築家・田根剛にとって建築とは、一体何なのだろうか。クリエイティブの拠り所、自分の頭の中にある構想を具現化したデザイン、それとも1つの制作物として捉えているのか。
北欧の建築様式や空間の中に、田根剛の手掛ける建築物をハブとし、人々が集まる場所を作ること。田根剛は、建築のプロフェッショナルを志す過程で、これこそ建築家としての真骨頂なのではないかと思うようになる。
このように田根剛は、建築を美学として捉え、建築物を建てる場所に即したものを作ることに対し、誇りに思っていることがうかがえる。
田根剛のこうした考えは、著書「やわらかい建築の発想: 未来の建築家になるための39の答え」からも読み解くことができる。
あらゆる事象を情報・体系的に捉え、後世に残る建築物を手掛けるのが建築家の醍醐味。こう語る田根剛の、既存の枠にとらわれない斬新な建築デザインは、クリエイターとしての生き様と建築に対するプライドを感じさせる。今日も田根剛は、そこにしか存在し得ない建物とは何かを探っているだろう――。
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