ちょっと感度の高いビジネスマンであれば、「アドラー心理学」というものを一度は耳にしたことがあるだろう。アドラー心理学が話題になった発端は、2013年12月に出版された『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』だ。1万部売れれば御の字の心理学書籍の中で、発売から2年間で86万部を超えるベストセラーとなった。
「対人関係の心理学」と呼ばれるアドラー心理学は、対人関係の課題を抱える多くのビジネスマンから注目を集めている。
ビジネスで最も重要なのは、人である。ゆえにビジネスにおいて、組織の対人関係の問題を解決する能力というのは重要だ。本書『コミックでわかるアドラー心理学』には、対人関係の問題を解決するために役立つ知識や人を深く理解するための本質的なエッセンスが凝縮されている。
『コミックでわかるアドラー心理学』ハイライト
本書は、シェアハウスでの物語が6つの章に分かれており、主人公が様々な対人トラブルに遭遇し、アドラー心理学により問題を解決し、主人公自身も成長していくという構成になっている。
たかが漫画とあなどることなかれ、ストーリーを読み続けるにつれ、アドラー心理学の考え方を深く理解できるようになっており、対人関係の悩みが尽きない現代のビジネスマンにとって必読の一冊と言える。
「アドラー心理学」に学ぶ、対人関係で役立つ6つの視点
アドラー心理学からの視点①:人間の行動を原因論で考えるのをやめる
職場に理解できない行動をとる人はいないだろうか。「なぜ、この人はこんなことで怒るのだろう」と思うような――。その時、多くの人はその行動をする原因を考える。昨日、悪いことがあったのではないか、もともと怒りっぽい性格なのだろうかと。
しかし、アドラー心理学では、その行動の目的を考える。つまり、その人はなんらかの独自の目的を達成するために「怒る」という行動をとっていると考えるのだ。このように考えるだけで、今まで理解できなかった人のことを受け入れることができるようになるだろう。多様な価値観、個性を尊重する、その姿勢は組織の対人関係の課題を解決するのに必要不可欠な姿勢といえよう。
アドラー心理学からの視点②:無意識も感情も使うのは「私」という個人
通常、無意識と感情は別と考える。なぜなら、感情はコントロールできるが、無意識はコントロールできないからだ。しかし、アドラー心理学では、無意識も感情も、私という個人が使うという観点では同じものだと主張する。どんな感情も無意識の行動も、私という個人が達成したい目的があり、それを成し遂げようするために生じるからだ。
もし、怒りや後悔、嫉妬のような負の感情に支配されて苦しい時は、「私個人はこの感情を使っていったい何を達成したいのだろうか」と考えてみると、感情の支配から抜け出し、その苦しみから逃れられるだろう。人が無意識に行う行動や感情には、必ず目的がある。そう考えることで、より深く人を理解できるようになるはずだ。
アドラー心理学からの視点③:トラウマは存在しない
「過去のある出来事がトラウマで出来ない」と、トラウマという言葉は気軽に用いられる。しかし、アドラー心理学では、トラウマは存在しないと考える。人はあらゆる出来事に意味づけし、自説を立てる。そして、その自説を強化する方向へと意味づけする傾向にある。そう、トラウマも自分の自説を強化する意味づけの一つであり、できない理由を作り上げるための言い訳に過ぎないのだ。トラウマを使い続けると、嫌なことから逃げ、本質的な課題を先送りにしてしまう。つまり、「できない」は「やりたくない」だけなのである。
アドラー心理学からの視点④:たった一つの勇気で、人は変われる
人間の行動とは、有用性で成り立っている。性格の根にあるのは、「こう振舞ったほうが自分の人生にとって生きる上で役立つ」という学習の積み重ねである。つまり、人が無意識にとる行動や感情、性格は、その人が生きる上で最も有用性を感じたものから構成されている。ゆえに、人が変わるにはある勇気が求められる。
それは、自分が不完全であることを認め、間違いを指摘されても受け入れることができる勇気である。それだけで人はいくらでも変わることができる。
アドラー心理学からの視点⑤:向上心の無い人間はいない
「なんでこの人はこんなにやる気がないのだろうか」。一流のビジネスマンを目指す向上心の高い読者であれば、そう思うことはあるだろう。しかし、どんな人間にも向上心は存在するのだ。
アドラーの提唱する幸せはたった一つ。皆に認められ、自分で自分を認めること。人それぞれなのは、その幸せを手に入れるために何をするべきだと感じているのか。
人は誰もがその環境で認められたいと思っており、そのための努力の仕方は人それぞれであるということを前提として持っておくだけで、人の見方が柔軟になり、より深く人を理解できるようになるだろう。
アドラー心理学からの視点⑥:劣等感は価値へと昇華する
人は誰もがなにかしらの劣等感を抱えている。その劣等感の多くはマイナスなものとして扱われ、妬みや嫉みなど負の感情を喚起させるため、持つべきではないと言われている。しかし、アドラー心理学では劣等感は価値へと昇華するものだと考える。というのも、人は劣等感を持つからこそ、それを努力で補填したいという向上心が生まれる。
「アドラー心理学」に学ぶ、対人関係で役立つ6つの視点
- 人間の行動を原因論で考えるのをやめる
- 無意識も感情も使うのは「私」という個人
- トラウマは存在しない
- たった一つの勇気で、人は変われる
- 向上心の無い人間はいない
- 劣等感は価値へと昇華する
対人関係の課題の本質を見抜く知識やマインドセット、より良く生きるための考え方など、人が幸せに生きるためのエッセンスが凝縮された『コミックでわかるアドラー心理学』から、多くのビジネスマンが直面するだろう課題を解決するヒントとなるような6つの知識を抜粋した。
アドラー心理学について何も知らない人でも、漫画の中で分かりやすく説明されているので、本書を手に取ればアドラー心理学について大枠は理解できるはずだ。
心理学というと、抽象的で机上の空論と思われるかもしれないが、本書ではただアドラー心理学を説明するのではなく、実際に人間関係のトラブルが漫画の中で生じ、それをどうアドラー心理学を用いて解決するのかという構成になっている。
そのため、ただアドラー心理学というものを知るのではなく、実践的な使い方も学べるため、アウトプットを前提としたインプットだと言えよう。本書を読んだら、次の日から職場で使えること間違い無しの一冊である。
風通しの良い職場で働きたい!人間関係に悩み続けているなら「転職」を考えてみる
働く上で「対人関係の悩み」は尽きものだ。
パワハラやセクハラなどといったハラスメント関係の悩み、人とのコミュニケーションが上手くいかない、社内の雰囲気と性格が合わない——「対人関係の悩み」と一言で表しても、その背景にある原因は人それぞれ。
独力で解決できる対人関係の悩みもあれば、放っておくと精神的に追い込まれてしまうような対人関係の悩みもある。
ストレスが限界まで溜まると「選択肢」が狭まる
対人関係のストレスが限界まで溜まり、「うつ病」「自律神経失調症」「胃がん」などの病気にかかると、転職活動をする余裕すらなくなってしまう。
そのため、少しでも思考が働くうちに“転職活動”を始めてみることをオススメしたい。
転職活動を行うエネルギーが残っていない、転職をすることへの自信を喪失してしまう、長期間の休職によってキャリアに傷がつき転職しづらくなってしまった……など、ストレスを放置することは、人生・キャリアにおいて非常にリスキーなことなのだ。
ストレスが限界値を突破する前に、まずは転職エージェントに自分のキャリアについて相談してみよう。
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