イノベーションの中でも特に世界を一新させるほど大きなイノベーションは「ビッグバン・イノベーション」と呼ばれます。
本記事では、『ビッグバン・イノベーション――一夜にして爆発的成長から衰退に転じる超破壊的変化から生き延びよ』を参考にビッグバン・イノベーションの意味や事例を具体的にご紹介します。
- 「破壊的イノベーション」とは?
- 破壊的イノベーションの3つの事例
- イノベーションから会社を守るには「消費者のニーズ」に目を向けること
「破壊的イノベーション」とは?
まずは、「破壊的イノベーション」別名「ビッグバン・イノベーション」とは何かについて詳しくご紹介します。
本書『ビッグバン・イノベーション――一夜にして爆発的成長から衰退に転じる超破壊的変化から生き延びよ』では、従来の製品を全く新しい価値で一掃しうるイノベーションを「破壊的イノベーション」と呼んでいます。
破壊的イノベーションの例は、「スマートフォン」です。
ビデオカメラ、ウォークマン、スケジュール帳、ポケベルは、スマートフォンのイノベーションによって犠牲となって姿を消したものや、今まさに犠牲になろうとしている製品です。
私たちは、今までも幾度となくイノベーションの恩恵を受けてきました。その一方で、新たなイノベーションによって消えていった物も数多く存在します。
破壊的イノベーションの3つの事例
では、どうすれば破壊的イノベーションから自社製品を守れるのでしょうか。以下では、破壊的イノベーションの事例を挙げていきます。
具体的な当時の状況を踏まえ、どのようにして破壊的イノベーションを乗り越えられたのか、そして、過去の破壊的イノベーションから学ぶべきことをいくつかの事例とともにご紹介します。
破壊的イノベーションの事例#1:蒸気自動車
破壊的イノベーションの1つ目の事例は、「蒸気自動車」です。
1980年代、自動車産業は、蒸気かガソリンか電気かを巡り、熱い戦いを繰り広げていました。結果的に勝利したのは、現在まで活躍しているガソリン自動車ですが、当初優勢に立っていたのは、蒸気自動車でした。
ところが当時、蒸気自動車の1大メーカーだったスタンレー社は、蒸気自動車を「贅沢品」と位置付け、価格設定を誤るという致命的なミスを犯しました。それに加え、同時期に口蹄疫が発生し、泣きっ面に蜂の状態でした。
当時、馬用の公共の飼い葉桶(飼い葉を入れる桶)を給水用に利用していた蒸気自動車は、高額な価格設定も相まって、大打撃を受けました。
一方で、ガソリン自動車がここまで普及した理由は、そのような戦略ミスをせず、技術的な問題も回避したことにあります。人気が高まるにつれ、生産コストが下がり、量産体制に入ったガソリン自動車を止める術はなく、蒸気自動車は敗れ去りました。
今回のイノベーションの事例で、もしスタンレー社が自動車の市場価値を理解し、蒸気自動車を適正な価格に設定し、専用の給水所を用意していれば、現在も道路を走る車の多くは、蒸気で走っていたかもしれません。
破壊的イノベーションの事例#2:コンビニカフェ
破壊的イノベーションの2つ目の事例は、「コンビニカフェ」です。
コンビニカフェの事例は、近年の台湾で起きました。台湾のファミリーマート内で、2000店ものコーヒーキオスクを運営するレッツカフェは、枠にとらわれない経営戦略で、破壊的イノベーションを乗り越えました。
近年台湾では、街中におしゃれなカフェが急増しています。そんなコーヒー専門店とコンビニカフェでは、雰囲気では張り合えません。街角のおしゃれなカフェでは、バリスタが芸術的なラテアートを披露しています。レッツカフェは、撤退の危機に追い込まれました。
ところがレッツカフェは、より美味しく、より安く、しかも徹底的にカスタマイズしたユーザー体験を提供することでこの危機を乗り越えました。レッツカフェを訪れた客は、まず自分や友達の顔をスマートフォンで撮影して、そのデータを店内の専用プリンタにアップロードします。そしてコーヒーをセットすると、ラテの白い泡に、茶色いパウダーで客の顔を鮮明に描き出すという仕組みを作り上げました。
この独創的なアイデアは、ソーシャルメディアで拡散し、計り知れない口コミ効果をもたらしました。枠にはまらず、個々の客に対応するという究極のカスタマイゼーションで、破壊的イノベーションを乗り越えたのです。
破壊的イノベーションの事例#3:液晶テレビ
破壊的イノベーションの3つ目の事例は、「液晶テレビ」です。
近年、私たちに大きな影響を与えた破壊的イノベーションの事例といえば、液晶テレビです。かつて消費者は、最先端の大画面ディスプレイにプレミアムな価格を支払いました。ところが、サムスンやLGといった外資系のメーカーが日本市場に参入すると、状況は一変することになったのです。
基本部品技術がイノベーションによって進化すると、消費者はハイエンドなブランド品と、低価格な製品との差異を理解できなくなります。そして、安価な商品を連発する、サムスンやLGにテレビ市場は独占されることになりました。シャープやソニー、パナソニックといった、長らくこの業界に君臨してきた日本の大企業は追い落とされてしまったのです。
今回の事例では、多くのメーカーが同じ技術を利用し、急速にその質が向上するという状況下で破壊的イノベーションが起きました。何かひとつの革新的な技術が発明されたのではなく、共通の技術が急速に発達するという破壊的イノベーションの事例です。
日本のメーカーは、ブランドや技術力の高さにしがみつき、市場で勝負できる価格帯を見失ってしまったことが敗因です。確かに、日本のメーカーと外資系メーカーに、技術力の差は存在します。しかし、それは消費者から見たら認識できない程度の差なのでした。このような事例を避けるためには、技術力の向上よりもむしろ、消費者のニーズにより近づくということが重要です。
イノベーションから会社を守るには「消費者のニーズ」に目を向けること
『ビッグバン・イノベーション――一夜にして爆発的成長から衰退に転じる超破壊的変化から生き延びよ』から、3つの過去の事例を紹介してきました。
社会人だけでなく、私たちの生活は、常にイノベーションに支えられてきました。多くのイノベーションが日々起こり、その恩恵を受けて生きています。しかし、私たち消費者こそ、しっかりとイノベーションに目を向けなければいけません。
時代こそ違えど、今回紹介した破壊的イノベーションの事例の中心にいるのは、私たち消費者です。
そのため、消費者のニーズから離れてしまった商品は、破壊的イノベーションからは乗り越えられません。生き残るためには、「消費者」の需要に目を配りましょう。視点を変えることで今まで考えられなかった考えが出てくることでしょう。
イノベーションの本質に目を向けよう
- 従来の製品を全く新しい価値で一掃しうるイノベーションが「破壊的イノベーション」
- 価格設定を見誤らず、新しいことに挑戦する必要がある
- 消費者のニーズに応える努力をする
本記事では、破壊的イノベーションの事例についてご紹介しました。
商品を売るためには、商品を買ってくれる消費者のことを忘れてはいけません。
破壊的イノベーションが起こったとしても、その商品ならではのよさがあります。そのよさを見つけてアピールしてみてはいかがでしょうか。
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