先日、大阪で行われた「夏休み特別教室 ロボット×医療!手作り3Dゴーグルで最新医療現場をバーチャル体験しよう!」にお邪魔した。
神戸大学大学院医学研究科消化器内科 特務准教授であり、ロボット技術などの最先端医療の先駆者でもある杉本真樹氏が、子供たちを前にわかりやすく「医療とテクノロジーのいま」について説明。
杉本氏の話から、今後の日本を支えるであろう、医療の可能性が見えてきた。
杉本真樹 プロフィール
すぎもと・まき/医師、医学博士。手術ナビゲーションシステムや3Dプリンターによる生体質感造形など医療手術分野での最先端技術開発者。自らも開発に携わった医用画像ソフトウェア「OsiriX」をベースに次世代低侵襲手術機器の開発や手術ロボットなど最先端分野の研究と教育活動を精力的に行っている。
内臓を3Dスキャンすることで手術が安全で正確に
実際に最先端の医療現場では、患者のデータをもとに3Dプリントした臓器を使い、手術シミュレーションをしています。
患者の体内から内臓を取り出さなくても、事前に本物に限りなく近い3D臓器モデルを見て準備することで、ミスを減らし、手術時間も短縮できてしまう。しかも、肝臓の3D臓器モデルは、患者さんの肝臓と大きさ、重さ、加えて水分量も同じものだという。
本番(=手術)に臨む準備段階の環境が、より万全なものになれば、自ずと手術の質も向上するそうです。
これからは「ロボットによる手術」が普通になる
杉本氏による講義では、ロボティクスによる医療現場の未来の話に。
杉本 「みなさんは、ロボットと聞くと『鉄腕アトム』や『ドラえもん』などの、自分で行動したり感情があったりするロボットを想像するかもしれません。ですが、医療で現在活躍している手術支援ロボットはちょっと違っていて、遠隔操作型のロボット。人間が操縦してロボットを動かす仕組みなんです」
実際に日本でも行われているロボット支援手術の映像を見ながら解説することで、子供たちは最先端の技術を体験できたような喜びがありました。
手術痕が、たった直径約2㎝だけになる
次に、直径約2㎝の管に作業用の手3本とカメラが搭載されている最新手術ロボットについての説明に。
このロボットを使用することで傷口を小さくできるため、患者への体の負担も少なく、手術も短時間で終わらせられるそうです。
これまで手術が難しかった幼児はもちろん、体力のないお年寄りにも少ない負担で手術ができるということなので、超高齢化社会を突き進む日本には、うってつけの新技術となるでしょう。
さらに驚きなのが、従来は大きな傷が残ってしまっていた手術痕が、直径2㎝程度でおさまるようになるかもしれないということ。女性はもちろん、多くの人が気になる手術の跡。一般人からみた医療、手術へのハードル意識はぐっと下がっていきそうです。
ロボットと医療、別の分野が結びついたことで新たな価値が生まれる
最後に、スーパードクターと呼ばれる杉本先生ならではの「一言」が印象的でした。
杉本 「スーパーという言葉は、『超える』という意味があります。一見、別分野の“ロボティクス”と“医療”ですが、それぞれ分野を超えて結びつくと、このように新しい可能性を生み出します。そして、より多くの人の役に立ち、命を救うことにつながるんです。みなさんもぜひ、自分という壁を乗り越えてください」
子供はもちろん、大人になってもスーパーな活躍ができる。
視点を変えること。そして新たな価値を追求し続けること——。
誰だってイノベーションを起こすことはできるのです。
Interview/Text: 川中千保
Photo: 栗原洋平
Photo: 栗原洋平
記事提供:Qreators.jp[クリエーターズ]
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