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相続税の申告義務が生じるケース/生じないケースとは?

粕谷満子

2016/11/29(最終更新日:2016/11/29)


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出典:visualhunt.com
 いわゆる「相続」をする場合には、相続税が課税されることになっているが、この相続税という税は、全ての人にかかってくるのではないということはご存じだろうか。そして、もしも相続税がかからないのであれば、相続税の申告も必要もない……というのは果たして正しいのだろうか。色々なケースが考えられそうな相続税の申告義務について、申告義務が生じるケース、生じないケースといった視点でまとめてみることにしよう。

相続税の申告義務とは?

 そもそも「相続」とは、ある人が死亡した際、その被相続人の財産を一定範囲の親族、いわゆる相続人に受け継がせることである。遺される財産には、預貯金や有価証券はもちろん、不動産というようなプラスになる財産だけでなく、未納の税金や借入金といったマイナスの財産も全て含まれる。そのため、全ての財産を引き継ぐ単純承認、債務の支払責任はプラスの財産の範囲内に止める限定承認、全ての財産を引き継がないことにする相続放棄という3種類の選択肢がある。

 こうした「相続」、この相続を行う際にかかってくる税金が相続税であるが、ではそれにおける申告義務とはどういうことなのだろうか。相続をする際には、被相続人が死亡したことを知ってから10カ月以内の間に、相続税を支払わなければならないのだが、相続税法第27条第1項には「相続税の申告書を提出しなければならない者は、相続又は遺贈(中略)によって財産を取得した者で、その取得した財産につき(中略)納付すべき相続税額があるもの……」というように定められているので、言い換えれば、相続税の基礎控除額を上回る財産がある相続人は、申告書を提出する義務があるということになる。

 ここからわかるように、基礎控除額を上回る財産がある相続人には申告の義務がある。これが相続税の申告義務である。しかし、ここで重要なのが相続税の税率や、課税されるか、されないかは、相続する財産の金額によって異なるのである。そのため、この相続税は全ての人が課税の対象になるわけではなく、課税される場合とされない場合があるのである。そして、相続税がかからない場合でも、なんとケースによっては申告が必要な場合もあるのだ。

基礎控除額を下回るケースの申告義務

 法改正があり、平成27年1月から基礎控除額の計算方法が変わり、「基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の人数」というように変更された。そして前述のとおり、相続財産から基礎控除額を差し引いた額が課税対象になるため、万が一相続財産の額が基礎控除額よりも下回るケースでは、相続税は発生しないため、このケースでは申告義務は発生しない

 しかし、相続財産が基礎控除額を下回るケースでも実は申告義務が発生するケースがある。それが優遇制度、いわゆる税額軽減制度を利用したケースである。それらについては次項以降で詳しくみていこう。

優遇制度を利用するケースの申告義務

 では、優遇制度、いわゆる税額軽減制度を利用したケースというのはどんなケースなのだろうか。配偶者控除・小規模宅地等の特例・未成年者控除・障害者の税額控除・相次相続控除、これらの制度を利用するケースでは、相続税よりも基礎控除額が大きくなったとしても申告義務が発生する。なぜなら申告をするタイミングで、これらの各種税額軽減制度を利用するということを記載し、一緒に必要資料を添付して申告することで、相続税が適正に計算されることになるからである。そのため、言うならば義務というよりは、申告をすることによって相続税をある程度減らすことができるということである。


  自分の場合だと相続税はかかるのか、かからないのか。そして申告の義務があるのかないのか。何も知らないままいると思わぬところで出費が必要になってしまう可能性もあるため、どのケースが自分にちょうど当てはまるのか、と事前に検討しておくのも良いのではないだろうか。


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