以前、2013年3月30日に「所得税法等の一部を改正する法律」が公布され、ついに2015年1月1日から相続税及び贈与税の税制が改正されることとなった。基礎控除について、相続税率の一部変更など、一般の多くの人にも大きな影響が出ると考えられる、この法改正。
もしかすると、この改正によって、今までは税金を払う必要がなかった一部の人たちも、今回からは課税されるようになった可能性も大いにあり得る。
そこで、今回は2015年1月1日から始まった、相続税の改正ポイントを解説するので、ご自身は該当しているのかどうか、是非確認がてら目を通してもらえると良いだろう。
相続税法改正による主な変更点は?
2015年1月1日からの相続税法の改正により、これまでとは違って、一般的なサラリーマン家庭であっても相続税の課税対象となる可能性が出てきたのである。実は、その主な変更点、いわゆる改正された点は2つあり、それは「相続税の基礎控除額が引き下げられる」ということと、「最高税率は引き上げられる」ということである。実際にどんな内容なのかは、次項以降で解説していこう。
基礎控除の改正について
相続税の基礎控除の金額が60%に引き下げられる(減額される)ことになった。いわゆる増税である。この引き下げにより、課税対象者の拡大が大いに予想される。今回の法改正のもっとも大きなポイントの一つは、この相続税の基礎控除が引き下げられること、と言えるくらい影響が大きそうである。実際にどう変更されたかというと、これまでであれば5,000万円 + 法定相続人の数×1,000万円であったものが、今回からは3,000万円 + 法定相続人の数×600万円に変更されたのである。
分かりやすいようにいうと、例えば父親が亡くなり、母親と子ども2人に7,000万円が遺された場合を考えてみよう。この場合、法定相続人が配偶者と子2人なので、これまでであれば5,000万+3人×1,000万という計算で、8,000万円となり、基礎控除が相続財産を上回るので相続税の納税はない。
しかし今回からは3,000万+3人×600万という計算で、4,800万円となり、7,000万円では相続財産が基礎控除を上回るため、相続税の納税が発生する。これまでであれば、まったく相続税の申告や納税が不要であった人たちが、今回からは申告と納税が必要となり、大幅な負担増となることがよくわかる。統計的なデータにおいても、これまでは、例えば平成23年でも実際に相続が発生した4.1%の人たちが相続税の課税対象となっているだけで、およそ多くの人たちは相続税とは現実的には無関係であったが、今後は課税対象となる人たちの割合は大幅に増加することが予想されるであろう。
税率の改正について
基礎控除の引き下げとともに、相続税の税率も改正になった。税率区分が、6段階から8段階に変更され、2億円超から3億円以下の部分は40%から45%へ引上げ、6億円超の部分は50%から55%へ引上げが行われた。
そのため、各法定相続人の取得金額が〜1,000万円以下の場合は10%、1,000万円超〜3,000万円以下の場合は15%、3,000万円超〜5,000万円以下の場合は20%、5,000万円超〜1億円の場合は30%、1億円超〜2億円以下の場合は40%、そして2億円超〜3億円以下の場合は40%→45%に引き上げ、3億円超〜6億円以下の場合は50%、6億円超〜の場合は50%→55%へ引き上げ、というような税率になった。
ここから考えてみると、各相続人が取得する遺産の額が2億円以下の場合の税率は変わっていないのだが、2億円を超える財産を取得するとなった場合には、いっきに税率が引き上げられ負担が増加するため要注意であり、そこが大きな分かれ目になりそうである。
この法改正により一番影響を受けるのは、高額な相続をする人たちでもなく、少額の相続をする人たちでもなく、いわゆる多数派の中間層の人たちが多いかと考えられる。今一度、自分の場合はどこに当てはまるのかを確認し、しかるべき対策をとることの助けになれば幸いである。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう