HOMEビジネス 相続税の計算方法を詳しく解説! 相続税の計算方法を理解して、相続もこれで一安心。

相続税の計算方法を詳しく解説! 相続税の計算方法を理解して、相続もこれで一安心。

Mikako Sekine

2016/02/03(最終更新日:2016/02/03)


このエントリーをはてなブックマークに追加

相続税の計算方法を詳しく解説! 相続税の計算方法を理解して、相続もこれで一安心。 1番目の画像
出典:pixabay.com
 相続税の計算なんて面倒くさい……。そう思ってしまうことは仕方ないことだろう。六法を片手に順序だてて計算することなど、プロに任せたくなってしまうに違いない。

 今回は、相続税の概算だけでも計算できるように簡単に説明したい。

相続税って何?

 相続税とは、人の死によって財産が夫や妻、子に移転する機会に、その財産に対して課される税金のことを指す。遺贈や死因贈与も、贈与税ではなく相続税が課税されるので注意が必要だ。

相続税に関する単語を解説!

 相続税法にはいくつか聞きなれない単語が登場する。それをここで説明したい。

租税公平主義(そぜいこうへいしゅぎ)

 法の目的とは何であろうか? 法は罰することが目的ではない。法は正義の実現をすることが目的であるとされている。この正義の中核的な要素は、「公平」であることなのだ。租税法は、これに従って公平な課税の実現をしようとしており、相続税でも、累進課税方式を採用している。

路線価(ろせんか)

 路線価は、市街地的形態を形成する地域の路線(不特定多数が通行する道路)に面する宅地の、1㎡当たりの評価額のことである。路線というと、鉄道の路線図を思い浮かべてしまいがちだが、ここでは道路の値段のことである。

 路線価は、課税価格を計算する基準となるものであり、相続税や贈与税の基となる相続税路線価と、固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税の基となる固定資産税路線価があるが、今回は後者は気にしなくて良い。路線価図は国税庁が発表しているので、一度サイトを訪れてみるのも良いだろう。

 単に「路線価」と言った場合、相続税路線価を指すので、よく覚えておこう。

基礎控除(きそこうじょ)

 相続税の基礎控除とは、相続税法の15条第1項に記載されている。(また、U-NOTE内の記事にも解説があるので、併せて確認してほしい。)

相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第十九条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第十八条まで及び第十九条の二において同じ。)の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。

出典:https://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=2&H_NAME=&H_NAME_YOMI=%82%BB&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S25HO073&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1
 つまり、全ての相続人が無条件に差し引けるもの。この基礎控除のおかげで、課税される相続税額が安くなると考えていいだろう。

 基礎控除は、上記の通り3,000万円+600万円×法定相続人の数で算出することができる。

法定相続分(ほうていそうぞくぶん)

 法定相続分とは、民法に定められているもので以下のように述べられている。

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

出典:民法
 このように、公平に相続額を分けることができる仕組みになっている。

さっそく相続税を計算してみよう!

 それでは、さっそく計算してみよう。厳密な計算ではないが、概算を知るには十分な計算方法だ。父親(夫)が亡くなってしまい、家族に以下の遺産を残した。この家族3人の相続税の額はいくらだろうか?

問題

 <妻> 土地2,000㎡(路線価:280,000円 単位:㎡)
     現金預金 1億3千万円
     葬式費用 200万円

 <長女>有価証券 3億円
     負債 5千万円

 <次女>別荘 1億円
     現金 3千万円

相続税計算のStep1:妻(母親)が相続した路線価と土地を計算しよう

 妻(母親)は夫から路線価が280,000円の土地を2,000㎡相続している。これを計算すると、2,000㎡×280,000円=560,000,000(5億6千万)円だ。

相続税計算のStep2:妻の相続額はいくら?

 先ほど計算した5億6千万円+現金預金の1億3千万円−葬式費用200万円だ。葬式費用は、支出であるため、引いてしまおう。そうすると、6億8800万になる。

相続税計算のStep3:長女の相続額はいくら?

 長女は、有価証券3億円−負債5千万円を相続した。負債など相続したくもないが、これも支出であるため引いてしまおう。そうすると、2億5千万円になる。

相続税計算のStep4:次女の相続額はいくら?

 次女は、別荘1億円+現金3千万円を相続している。つまり、1億3千万円だ。 

相続税計算のStep5:家族3人の相続総額を出そう

 家族3人の相続した額を計算したら、総額を出そう。ここで算出される数字は後々大事になってくるので計算間違いには要注意だ。

 6億8800万(妻)+2億5千万(長女)+1億3千万円(次女)=10億6800万円

相続税計算のStep6:基礎控除額を差し引こう

 先ほど解説した「基礎控除」。やっと、この計算をする段階に入った。先ほど述べた通り、3,000万円+600万円×法定相続人の数に、この家族を当てはめて計算してみよう。

 3,000万円+600万円×3人=4800万円なので、この家族の基礎控除額は、4800万円だ。この額を、10億6800万円と言う先ほどの数字から引こう。式は以下の通りだ。

 10億6800万円−4800万円=10億2000万円、これが基礎控除を差し引いたあとの相続する金額だ。

相続税計算のStep7:上の基礎控除額を引いた後の数字から、それぞれの相続額を計算しよう

 ここで、先ほど解説した法定相続分が登場する。民法の通りに、この家族に当てはめて計算しよう。

 <妻>10億2000万円×1/2=5億1千万円
 <長女>10億2000万円×1/4=2億5500万円
 <次女>長女と同じ

相続税計算のStep8:相続税の総額を求めようーーPart1

 相続税の計算で一番面倒な部分は、ここかもしれない。相続税法の16条に定められている通り、順序良く計算していかなければならない。相続税法16条は、以下の通りである。 

  千万円以下の金額……百分の十(10%)
  千万円を超え三千万円以下の金額……百分の十五(15%)
  三千万円を超え五千万円以下の金額……百分の二十(20%)
  五千万円を超え一億円以下の金額……百分の三十(30%)
  一億円を超え二億円以下の金額……百分の四十(40%)
  二億円を超え三億円以下の金額……百分の四十五(45%)
  三億円を超え六億円以下の金額……百分の五十(50%)
  六億円を超える金額……百分の五十五(55%)

 それぞれの金額に応じて、以上の税率を乗じるともとまる。

相続税計算のStep9:相続税の総額を求めようーーPart2(妻編)

 さて、税率がわかったところで計算に入ろう。まずは妻からだ。単位は「万円」であるが、ここでは便宜上、省略させていただく。

   1,000×10%=100
  (3,000−1,000)×15%=300
  (5,000−3,000)×20%=400
  (10,000−5,000)×30%=1,500
  (20,000−10,000)×40%=4,000
  (30,000−20,000)×45%=4,500
  (51,000−30,000)×50%=10,500

 これらの計算が一通り済んだら、上から下まですべて足してほしい。つまり、これらの数字をすべて足すと、21,300になる。単位は「万円」なので、21,300万円、2億1,300万円だ。

相続税計算のStep10:相続税の総額を求めようーーPart3(娘編)

 次は、長女、次女の分を求めてみよう。額は同じなので、計算は1回で済む。

    1,000×10%=100
   (3,000−1,000)×15%=300
   (5,000−3,000)×20%=400
   (10,000−5,000)×30%=1,500
   (20,000−10,000)×40%=4,000
   (25,500−20,000)×45%=2,475

 先ほどのように、全部の和を出してみると、8,775(万円)である。

相続税計算のStep11:相続税の総額を求めようーーPart4

 では、 Step9とStep10で計算した数字をすべて足してみよう。それが総額になる。ここで気をつけたいのは、8,775×2となることだ。2人子供がいることを忘れてはいけない。

 21,300+8,775×2=38,850(万円)、つまり、3億8,850万円だ。

相続税計算のStep12:各相続人の相続税額を求めよう(条文編)

 総額は算出できたが、問題は各相続人の相続税額を求めなければいけない。これの求め方は、相続税法の17条を見ていただければわかるようになっている。

相続又は遺贈により財産を取得した者に係る相続税額は、その被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者に係る相続税の総額に、それぞれこれらの事由により財産を取得した者に係る相続税の課税価格が当該財産を取得したすべての者に係る課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額とする。

出典:相続税法 - 法令データ提供システム

 こう文章で説明されても、ピンとこない場合もある。式で説明すると以下の通りだ。

 先ほど出した相続税総額×各相続人の相続額÷基礎控除前の相続分の総額。これでやっと答えが出すことができる。

相続税計算のStep13:各相続人の相続税額を求めよう(妻編)

 まずは妻から。単位は「万円」である。なお、小数点第2位以下は四捨五入してある。

 38,850×68,800÷106,800=38,850×0.6=23,310(万円)

相続税計算のStep14:各相続人の相続税額を求めよう(長女編)

 次は長女の番だ。

 38,850×25,000÷106,800=8,935.5(万円)

相続税計算のStep15:各相続人の相続税額を求めよう(次女編)

 最後は次女だ。各相続人の相続額だけ数字を差し替えて計算すれば良い。

 38,850×13,000÷106,800=4,662(万円)


 とても長い計算であったが、覚えてしまえば簡単なものである。この記事と六法(租税法)を参考に、相続税の計算を試してみて欲しい。

hatenaはてブ


この記事の関連キーワード