食にはトレンドがある。昨今の食のトレンドといえば、健康志向、スローフードだろう。食事はただエネルギーを補給するためだけに食するのではない。昨今の食のトレンドで大切にされているのは、健康的な生活のための食事である。それは昨今の食のトレンドにおける、食事内容そのものの見直しであったり、食事の摂り方の見直しにつながっている。
これからの食のトレンドの鍵を握るのは飲食業界における若者たちだ。飲食業界における若者たちが何をめざし、何を提供してくれるか、それがこれからの食のトレンドをつくっていく。
経済誌、フォーブスが発表した「30アンダー30」リストに、飲食業界で活躍する30歳以下の若き30名が選ばれた。これから食のトレンドをつくり出していく飲食業界の若者の中でも、活躍の目立つ飲食業界のホープたちだ。今回はこれからの食のトレンドをつくり出す「選ばれし30歳以下の30人」を紹介する。
アンダー30、食のトレンドをつくり出す若者たち:30人
Annie Lawless 28歳:Suja Juice・設立者
出典:www.youtube.com Annie Lawlessが設立したSuja Juiceは、コールドプレスした野菜ジュースを販売している。1本10ドル近い販売価格の高級野菜ジュースであるが、2012年、創業初年度に2000万ドルの売上高を記録、2014年には4500万ドルの売上を達成している。Suja Juiceは、食のトレンドの中だけでなく、業績的にもスタートアップ企業の中で注目を集めているのだ。
Suja Juiceがこのような成功を収めた背景には、健康志向という食のトレンドが大きく関わっている。安くて手軽な食事を楽しむよりも、高くても身体によいものをという食のトレンドが昨今強まっている。
Suja Juiceが多少高くてもこれだけの売上を記録したのは、健康志向という食のトレンドの中で、原材料にこだわりがあり、身体にいいものとして認知されたからである。日本でも食のトレンドに敏感な若い女性の間ではSuja Juiceが話題になっている。
Suja Juiceはパッケージもポップでかわいらしい。健康志向の食のトレンドの中で成功したSuja Juiceであるが、Suja Juiceが成功することで、健康に気を遣って、食にこだわることがステータスになるという食のトレンドを生み出すことにもつながる。Suja Juiceが家にストックしてあること、Suja Juiceを手にしている姿が一つのステータス、食のトレンドとなる日も近いかもしれない。
Alexandra Clark 27歳:Bon Bon Bon・設立者、ショコラティエ
出典:www.youtube.com Alexandra Clarkは14歳からお菓子工場で働き、チョコレートアートの勉強を経て、彼女の故郷、デトロイトでBon Bon Bonという自らのお店をもつに至った。デトロイトではこの40年で初のショコラティエの誕生となった。
日本でも昨今ではショコラティエという職人の存在が認知されるようになってきたが、それも食の細分化、専門化、高度化という食のトレンドの一つといえる。日本においても一昔前では、お菓子職人、パティシエと一括りで語られることも多かったショコラティエ。しかし、フレンスやベルギーでは歴史ある職種である。
グローバル化が進む中で、食のトレンドもグローバル化する。伝統ある国での職種が他国でも認知され、その仕事から生み出されるものを望む人々が生まれ、食のトレンドも生まれていくのである。
Nik Ingersoll 28歳:Barnana・共同設立者
出典:www.foodnavigator-usa.com Nik Ingersollが設立したBarnanaは、熟しきって見た目が悪くなってしまい、廃棄されてしまっていたバナナを買い取り、加工して販売している。
食べられるのに、見た目だけで販売されない農産物の問題は世界規模で起きている。スローフードという食のトレンドによって見直されてきてはいるが、見た目重視のトレンドも根強く、廃棄される農産物の量は少なくない。
Barnanaのように、そういった食の問題に焦点を当て、改善していく動きがもっと食のトレンドにおいて強くなっていくことが期待される。
Sophie Milrom 28歳:EatPops・設立者
出典:bonberi.com ヘルシーなアイスキャンディがあまりないことに不満を感じたSophie Milromは自らが、ケールやビーツ、ショウガといったようなヘルシーな材料から作ったアイスキャンディを販売するEatPopsを設立する。
2014年に販売を開始して、現在までに300店舗の展開、アマゾンでの販売とその規模を大きくしている。
Brian Rudolph 25歳:Banza・共同設立者
出典:ventureforamerica.org Brian Rudolphが設立したBanzaは小麦からではなく、ひよこ豆から作ったパスタを販売している。Banzaは毎日食べるには不健康なパスタを、よりヘルシーな食べ物にしたいという考えからひよこ豆のパスタを製造したのである。
これも健康志向という食のトレンドの中でその規模を拡大させることに成功している。食べ過ぎると不健康につながるといわれているものを、好物にしている人がいるのは全世界共通である。その好物をなんとか健康的に食べることはできないかという工夫がされるのも食のトレンドの一つだ。
大好きなパスタをよりヘルシーに食べたいという思いからつくられたBanzaが成功したのは、同じ思いをもつ人々が少なからずの数存在したからである。また、そのような思いをもっていなかった人々が、よりヘルシーなパスタがあるならそちらを選択するという状況も生まれるだろう。そうすることでまた健康志向という食のトレンドが強まっていくに違いない。
Luke Saunders 29歳:Farmer's Fridge・CEO
出典:1019thewave.com Luke Saundersの設立したFarmer’s Fridgeは、自動販売機のような形で新鮮なサラダや調理品を提供してくれる。Farmer’s Fridgeは忙しくて、なかなかフレッシュな食事を摂れない状況に陥っているビジネスマンの味方となってくれているのである。
健康志向という食のトレンドの中、ヘルシーな食事を摂りたいという思いをもちながらも、忙しいビジネスマンの食事は手軽なファストフードになりがちだ。忙しいビジネスマンには、なかなかフレッシュな食事を手軽にとるという選択肢がない現状なのである。その現状を憂いたLuke Saundersは手軽にフレッシュな食事をビジネスマンがとれるような選択肢をつくってくれたのだ。
その他、これからの食のトレンドをつくる若者たち
Greg Sewitz 24歳 Gabi Lewis 25歳:Exo・共同設立者
Fabian von Hauske Valtierra 25歳:Contra and Wildair・オーナーシェフ
Henry "Hoby" Wedler 28歳:Francis Ford Coppola Presents・Wine Educator
Blaine Wetzel 29歳:The Willows Inn on Lummi Island・料理長
David Zaitz 26歳:Pieper Farms LLC・CEO
Sebastian Dumonet 28歳:Joel Robuchon Restaurants・運営部長
Ben Friedman 29歳:Home Grown Sustainable Sandwich Shop・設立者
Maddy Hasulak 28歳 Alex Hasulak 29歳:Love Grown Foods・設立者
Brian Powers 24歳:TemperPack・共同設立者
Rip Pruisken 27歳 Marco De Leon 25歳:Rip Van Wafels・共同設立者
Jacob Jaber 29歳:Philz Coffee・CEO
Anna Hieronimus 28歳 Elise Kornack 29歳:Take Root・共同オーナー
Nikhil Kundra 26歳 Anjali Kundra 29歳:Partender・共同設立者
Maria Littlefield 28歳:Owl's Brew・共同設立者
Karys Logue 27歳:Dominique Ansel Bakery & Dominique Ansel Kitchen・パティシエ長
Micah Melton 29歳:The Aviary・飲料ディレクター
Laura Meyer 27歳:Tony's Pizza Napoletana・料理長
Thomas Allan 27歳:The Modern・シェフ
Brian Baxter 29歳:Husk Nashville・シェフ
Chris Hathcock 29歳:Gan Shan Station・総料理長
Matt Hofmann 26歳:Westland Distillery・設立者
Deuki Hong 26歳:Baekjeong NYC・総料理長
フォーブスが発表した「30アンダー30」リストから、これからの食のトレンドをつくる飲食業界で活躍する若者30名を紹介した。彼らの多くがスローフード、健康志向という食のトレンドにうまくのり、事業を始めてかなり早い段階から成功を収めている。そして彼らが成功することで、その食のトレンドはさらに強まっていくことになるだろう。
食は誰にでも関係する身近なものである。ここで紹介した30人の中でも、自らが好きな食べ物、自らが食べたい食べ物、それを自ら製造販売することで選ばれた者が少なくない。彼らの志向は既に存在する食のトレンドの中から生まれるものである。それは、その食のトレンドを強めることもあれば、そのトレンドの中に存在する問題を見つけ出し、改善する形になることもある。
これからどのような食のトレンドが生まれることになるのか、彼らの活躍に注目したい。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう