HOME“世界最高のサービス”とリピーターを生む戦略とは:『ディズニー 感動を生み続ける37のルール』

“世界最高のサービス”とリピーターを生む戦略とは:『ディズニー 感動を生み続ける37のルール』

樋口純平

2016/12/05(最終更新日:2016/12/05)


このエントリーをはてなブックマークに追加

“世界最高のサービス”とリピーターを生む戦略とは:『ディズニー 感動を生み続ける37のルール』 1番目の画像
出典:www.sheratonlakebuenavistaresort.com
 ディズニーは、個性豊かなキャラクターと共に、独特の世界観を提示するエンターテインメント業界のトップに君臨するブランドである。ディズニーが生み出す世界観を体験できるのが、ディズニーランドやディズニーシーであるが、年間3000万人もの来場客を迎えている。この3000万人の来場者の90%以上がリピーターだ

 「また行きたい」そんな気持ちにさせてくれるサービスを提供してくれるのが、ディズニーリゾートである。例えば、清掃員一人にしても、落ち葉でミッキーをデザインしたり、踊ったりするのだ。ディズニーの世界観を隅から隅まで表現することで、来場者に非日常的な体験をさせることから、夢の国とも呼ばれるほどだ。リピーターを多く生み出すサービスの背景には何があるのだろうか。

 そこで今回は、濱名 均氏の『ディズニー 感動を生み続ける37のルール』から、多くのリピーターを生み出すディズニーの世界最高レベルのサービスの裏側を見ていこう。

高質なサービスを維持させるための工夫

“世界最高のサービス”とリピーターを生む戦略とは:『ディズニー 感動を生み続ける37のルール』 2番目の画像
by Kentaro Ohno
 ディズニーリゾートのサービスでは、一日に何度か行われる40分間のパレードが有名である。このパレードが最も来場者に対して、ディズニーの世界観を感じさせてくれるのだ。通常、パレードは20分間行われれば、人は満足する。しかしディズニーは、倍の時間を費やして、圧倒的なボリュームで来場者にサービス提供するのだ。このボリュームがディズニーパレードの魅力なのだ。

 実は、パレードのボリュームの倍増といった手法は米国流のものである。ディズニーの会社である、ウォルト・ディズニー・カンパニーは米国にあるため、サービス提供の手法が米国流の考えに基づいたものであることが多いのだ。

 米国以外のディズニーリゾートは、ウォルト・ディズニー・カンパニーに対して、売上金の1割をロイヤリティとして支払っている。このロイヤリティは、ウォルト・ディズニー・カンパニーから派遣される代理人による、米国のディズニーリゾートと同じレベルのサービスを提供することができるようになることを目的とした指導に対して、支払われるものと言える。ロイヤリティを支払わせるほど、ディズニーにとってサービスの質に維持は重要なのだ。

“リピーターを生む”ディズニーの4つの戦略

①絶えることのない新規投資

 ディズニーの製品戦略は、絶えず新しいアトラクションやサービスを創出していくことで、リピーターを生み出そうとしている。また、新規投資をしていけばしていくほど、テーマパークの規模は拡大し、新たな魅力を創出するのである。例えば、東京ディズニーランドがオープンしたから5年後、ビッグサンダーマウンテンが新たにオープンしている。この製品戦略はディズニーならではの戦略である。

②パスポートによる効果

 広大で多くのアトラクションがある園内を一日で全て回るというのは不可能であるが、来場者は損した気分にはならない。なぜなら、全てのアトラクションに乗る権利を、パスポートを持っているだけで得ることができるからだ。また、パスポートを来場者に持たせることで、園内により長い時間滞在させる効果が得られる。長い時間滞在させれば、ディズニーの商品やサービスを購入してくれる機会が増えるのだ。こうした価格戦略は見事なものである。

③ディズニーリゾートツアー企画

 多くの企業は、引き込みを重視した流通・チャネル戦略を広告や宣伝を用いて行っているが、ディズニーは旅行会社と提携し、ディズニーリゾートツアーを企画するのだ。つまり、顧客の旅行願望をディズニーの魅力で、実行へと押し出すのだ。こうした戦略もディズニーのブランド力があってこそのものである。

④ディズニーブランドを売り出す

 ディズニーは、ディズニーの世界観に則った社会貢献活動を行っている。例えば、病院に入院している子供達の病室に、ミッキーが訪れて、子供達を励ますのだ。また、ディズニーで新たなサービスなどの広報にはメディアを利用する。ディズニーの取材をさせることで、ディズニー側からの費用は一切かからないのだ。低コストでブランドを売り出すプロモーション力は圧巻である。

“キャスト2万人”へのサービス教育

 ディズニーリゾートで働く2万人のキャストの内、9割が契約社員あるいは準社員である。絶えず入れ替わる1万8千人のアルバイト従業員に対して、ディズニーレベルのサービス精神を教え込むのは、とても難しいように思われる。従業員のサービス教育もまた米国流で行われる。

 ディズニーリゾートのサービス教育は、園内で実際に行われる。アメリカの実用主義の考え方に即したサービス教育方法であり、理論よりも実際の行動の成果を重要視している。つまり、マニュアルの丸暗記や教えられたことを理解しているかではなく、実際にサービスする現場に立った時に成果を出すことができるのかが問われるのだ。

 中でもディズニーが重要視する接客サービスのポジションは、チケット販売である。なぜなら、チケット売り場がディズニーリゾートの入り口であり、ディズニーリゾートの第一印象に繋がるからである。そのため、サービス教育の結果、優れたサービスを提供できる人材を見つけ出し、チケット売り場に配置するのがディズニー流である。


 普段、ディズニーをビジネスの観点から見る機会はほとんどないかもしれないが、見習うべき点が多く存在することをお分かりいただけだだろう。ビジネスは顧客に対するサービス提供が高質なものでなければ、結果を残すことはできない。また、企業の経営を支えるのは、リピーターの存在であることを忘れてはならない。新しい顧客層を狙いに向かう前に、まずはリピーターの創出を目指すことが、成功への第一歩となるのだ。

hatenaはてブ


この記事の関連キーワード