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経営戦略ではない、コンサルタントに求められる資質とは:『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』

樋口純平

2016/01/20(最終更新日:2016/01/20)


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経営戦略ではない、コンサルタントに求められる資質とは:『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』 1番目の画像
出典:businessconsultingcompanies.blogspot.jp
 各業界における企業の顧客獲得競争は絶えず行われており、経営者は他の企業に勝てる戦略を考えさせられる日々である。他の企業を出し抜くためにも、優秀なコンサルタントを雇って、完璧な戦略を立てたいというのが、経営者の理想だろう。一方で、コンサルタントとしてもクライアント企業が良い方向に傾くことが理想であり、そのためクライアントに、より質の高い戦略を商品として寄与したいものだ。

 しかし、コンサルタントが持ち込んだ戦略は必ずしも結果を残さない。なぜなら、戦略や計画通りに物事が進んでいくことは少ないからである。ビジネスに限った話ではない。例えば、サッカーの試合でも、勝つための戦略を綿密に練ったとしても、雨やケガなどが原因で、戦略や計画は変更を余儀なくされるものだ。

 そこで今回は、フェラン・カレン氏の『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』を取り上げる。著者は、コンサルタントが武器とする戦略について批判しつつ、本当にコンサルタントが大事にするべきであることが何であるか述べている。経営者であるクライアントも、コンサルタントも、コンサルティングがどこに重点を置くべきなのか学んでいくべきだ。

“何の役にも立たない”戦略とは

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出典:archive.fortune.com
 戦略はコンサルタントにとって最大の武器であり商売道具である。1980年にマイケル・ポーターが『競争の戦略』を出版したことで、多くのコンサルタントの頭の中に、戦略を立てる手法が植えつけられた。ポーターの生み出したモデルやチェックリストは誰もが利用することができ、誰でも戦略を立てることができるようになったのだ。

 戦略を立てる典型的なプロセスは、将来を予測し、その予測に基づいたな戦略を企業の人達に提示し、説得する。あとは、目標に向かって戦略通りに行動を起こすのみである。しかし、コンサルタントによって、典型的なプロセスを経て立てられた戦略こそが、会社を潰してしまうのだ。

 多くの人は、戦略=解決策であると考えてしまっている。しかし、戦略は解決策のほんの一部にすぎないのだ。立てた戦略が重要なのではない、戦略を立てることが重要なのだ。物事には不確定要素が存在し、必ずしも予想通りの結果が出るとは限らないのだ。そんな状況下でも、洞察力と深い知識を持ったコンサルタントならば、結果を残すことができるのだ。

“会社を潰す”コンサルタントの人材開発プログラムとは

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 コンサルタントが企業によく提案する人材管理手法が、人材開発プログラムである。この手法は、社員をA~Cランクの3つに分割する。Aランクの社員には多額の報酬と裁量を持たせる。Cランクの社員には、指導または解雇という処置をとる。Bランクの社員は状況に応じて、AランクまたはCランクの社員と同じ扱いを受けるようになる。このように、社員を差別化するのだ。

 コンサルタントが提案した人材開発プログラムが会社を潰すことになる要因は、社員がランクばかりを気にして、社員同士の会話がなくなってしまうことである。社員同士の会話がなくなれば、あらゆる弊害を生んでいき、自ら会社を去っていく社員も現れるようになるだろう。

 コンサルタントは、社員を差別化する人材管理手法を用いるより、会社のカルチャーや人間関係に重点を置き、社員個人の強みやスキル、そして希望を耳に入れておくことが重要である。社員の情報を多く集めて、社員個人個人の適性職務を見つけ出し、そこに当てはめていくことを考えた方が、会社は良い方向に傾くだろう。従来の手法を用いるだけでなく、その企業を理解した上で手法を考えるコンサルタントが求められている

“コンサルタント頼み”になるな! 

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 コンサルタントは分析や提言を行い、様々な分野の知識を提供し、状況に対する新しい戦略を示す。こんな姿に圧巻され、企業の経営の何から何までコンサルタントに任せてしまう経営者もいるのではないだろうか。確かに、コンサルタントの提示する戦略などに乗っかっていれば、企業は良い方向に傾くかもしれない。しかし、企業の成功と失敗の鍵を握るのは、企業の経営陣であるべきだ。

 会社の意思決定をする役割は、企業のトップに立つ者にあり、責任も企業のトップが持つべきである。外部の人間であるコンサルタントはあくまで、アドバイザーであって、意思決定をする権限はないということを認識するべきだ。

 コンサルタントもクライアントも満足するような結果を出すには、双方がいかに優れているかが重要なのではなく、双方のやりとりの間で築かれていくパートナーシップが重要なのである。双方が協力し合うことで、コンサルタントの持ついくつかの戦略から、会社にあった戦略を選択することができるのだ。


 社会が大きな変化に見舞われようとしている現代、コンサルタントが解決すべき問題はより複雑化していくだろう。問題が複雑になればなるほど、クライアントはますますコンサルタント頼みになってしまいかねない。コンサルタントはコンサルタントのすべき役割を果たし、クライアントはクライアントのすべき役割を果たしつつ、双方で協力して会社を良い方向に向けていくバランスが重要なのだ。


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