予約時から、Amazon住まいインテリアランキング1位を獲得し、発刊2週間で増刷が決まり、話題となっている書籍、『なぜデンマーク人は初任給でイスを買うのか?——人生を好転させる「空間」の活かし方』。
11月21日に販売を開始したライフスタイル本の著者であり、デザイナーズ家具インテリアショップ「リグナ」を運営し、多数のドラマのインテリア監修(フジテレビ系月9ドラマ「月の恋人」ではドラマ自体の監修を務めた)なども務める、リグナ株式会社代表取締役社長 小澤良介氏に書籍刊行の経緯とご自身のインテリア観についてお話を伺った。
小澤良介 プロフィール
リグナ株式会社 代表取締役社長 / 1978年生。愛知県出身。明治大学在学中に個人事業主として起業し、卒業と同時に創業。アートレンタル事業からスタートし、2004年にはデザイナーズ家具オンラインショップ「リグナ」をオープン。現在は東京にカフェやグリーンショップ併設の300坪を超える大型インテリアショップ、福岡には古民家をー棟リノベーションしたインテリアショップをオープンしている。
また、上場企業のブランディングや、多数ドラマのインテリア監修(フジテレビ系月9ドラマ「月の恋人」ではドラマ監修を務めた)等、精力的に活動領域を広げている。著書に『100%好き!を仕事にする人生』(日本実業出版社)。2015年8月より、リサイクルショップを全国で90店舗展開する株式会社ベクトルの取締役CBOにも着任している。
買い物の仕方から違う「日本とヨーロッパ」
————目を引くタイトルですが、『なぜデンマーク人は初任給でイスを買うのか?』を刊行されるきっかけを教えてください。
小澤良介 発端は編集者との何気ない会話でした。インテリアが好きな自分にとっては当たり前のことを話すと、なぜか、お客さんや友達に「なるほど!」と驚かれることがよくあります。このときも日本とヨーロッパのインテリアに対する考えかたの違いを話していて、「デンマークの人って、なんで初任給で椅子を買うか知ってる?」と僕が言ったその一言がそのままタイトルになりました。「それ、いいじゃないですか」と盛り上がって、トントン拍子で話が進んで。
————そうすると、インテリア初心者向けの本ですね。
小澤良介 インテリア初心者というより、日本のほとんどの人が対象です。仕事でも日常生活でも、少しインテリアに対する意識を変えるだけですごく良くなるのにもったいないと思う場面に出会うことがよくあります。いつかこんなテーマの本を出版できたら、とは思っていました。
日本人に初任給で何を買ったかと尋ねると、洋服やバッグ、財布を買ったという人が多いと思うんです。これらに共通していることって何だかわかりますか?
————身につけるものですか?
小澤良介 そう、もう一歩掘り下げると自分を着飾るものなんです。なかには、家族に何かしてあげたっていう人もいると思います。でも、椅子を買ったという人は滅多にいないでしょう。 デンマークの人たちは椅子を買うんです。椅子に限らず、自分が心地よく過ごすためのもの、自分や自分にとって大切な人と過ごす空間を快適にさせるインテリアに重きを置く人が多い。
デンマークは北欧家具の発祥の地で「世界一幸せな国(2014年時点)」でもあります。仕事柄、デンマーク国内をたくさん巡っていますが、どこへ行ってもオシャレで、みんなが豊かに暮らしている国です。その国の人たちは自分を着飾るよりも、自分や大切な家族、恋人、友人が快適に過ごせる空間にお金をかけていることが分かります。
家具が好き! その情熱だけでインテリアを仕事に
————小澤さんがインテリアに興味を持つようになったのはいつ頃ですか?
小澤良介 中学生ぐらいからですね。その頃、自宅の建て替えがあって家が純和風から洋風に変わったんです。ちゃぶ台からダイニングセットへ、ふとんからベッドへ。自分の部屋もドアまでライトブルーで統一された部屋に変えたりして、ライフスタイルが大きく変わりました。決して、和を否定しているわけではないですが、子ども心に「インテリア、すげぇな。」と衝撃を受けましたね。インテリアが変わると、気持ちも生活もいろんなことが変わるんだという気付きがありました。
————それから、ずっと家具やインテリアが好きなんですか?
小澤良介 そうですね。今でも最先端のホテルやレストランには欠かさず出かけますし、いい空間があると写真を撮ってしまいます。仕事だから情報収集をしているというより、単純に好きなんですよね。好きなことにはトコトンはまるタイプなんです。
————インテリアを仕事にされたのはどういう経緯ですか?
小澤良介 大学生のときに個人事業で人材派遣をやっていたんですが、自分には向いてなくて、ちっとも楽しくなかったんです。それで、もっと楽しくて自分が好きなことを仕事にしようと、若手のアーティストの作品を集めて飲食店にレンタルする事業をはじめました。しかし、それもビジネスにはならなかった。飲食店がお金を出してまでレンタルしようと思えるほど、アートは誰でも興味を持てるようなものではなかったんでしょうね。それならもっと身近な家具にしようと思って、デザイナーズ家具インテリアショップ「リグナ」を2004年に立ち上げました。
————いきなり、家具の世界に飛び込んだんですね。
小澤良介 その頃、家具の業界には「店に家具を並べ、在庫を抱えて初めて家具屋を名乗れる」という暗黙のしきたりがあったんですが、そんなことはないはずだと思っていました。モノさえ売れれば在庫を持つ必要はないんです。また、現物を見ないと買えないなら、家具屋の少ない地域に住んでいる人は素敵な家具を買う機会すらないことになりますよね。それはフェアじゃないと思ったんです。これから商品の見せかたも変わっていくだろうと予感していたこともあり、インターネットで家具の販売を始めました。
取引先も分からないので、自分が扱いたい家具を売っているネットショップにひたすら電話して仕入先を聞いて。何十件と電話して断られて、最後の一件でようやく引っ掛かって、最初の取引が決まりました。そこから地道に取引先を開拓していった感じですね。ある大手メーカーの取り扱いをはじめた途端に、一気に参画メーカーが増えて流れができ、お陰さまで現在は250ブランドを扱っています。
世界中の人がときめくような空間を創っていきたい
小澤良介 最初は自宅を事務所にしていて、途中でシェアオフィスに移りました。その頃にはスタッフが僕を含めて4人いましたが、色々あってひとり減り、またひとり減り。とうとう自分だけになってしまったんです。そのときに、知り合いが転職活動中のスタッフを紹介してくれて。そのスタッフは、今では福岡店の店長をしています。彼がいなかったら今のリグナはなかったですね。
そこから徐々に人も増えていき、品川のオシャレなオフィスに移りました。そのあたりから徐々に自分たちの城をつくるようになり内装やインテリアにも力を入れ始め、その後もいろいろな場所に転々と移転しながら拡大していき、昨年リグナテラス東京をオープンしました。
————長い道のりでしたね。
小澤良介 いや、あっという間でしたよ。振り返れば色々ありましたけど、苦労した印象はないですね。その辺は以前書いた著書の『100%「好き!」を仕事にする人生』にも書きましたけど、やっぱり好きなことですから。桃太郎電鉄っていう有名なゲームがありますよね。そこで何かと邪魔をしてくるボンビーってキャラが出てくると「最悪!」と思うけど、それも楽しいでしょ? 遊んでいるなかでの出来事だから。そういう感覚に近いんですよね。
————なるほど。では、今、リグナで力を入れていることは?
小澤良介 11月にレストラン「R the TABLE」(アールザテーブル)をオープンします。今まで飲食店のプロデュースはしてきましたが、自分たちの店を持つのはこれが初めてです。飲食業は難しいと聞いているけども、リグナの世界観をもっとたくさんの人に知ってもらいたいと思い、挑戦することにしました。
————レストランでリグナの世界観を伝えると言いますと?
小澤良介 家具屋って家具を買おうとしている人しか来ないんですよ。一方、レストランは誰にとっても身近だし、ホテルと並んで多くの人が空間を楽しむであろう商業施設です。リグナの世界観を伝えていくには、まず空間を楽しむことを知ってもらわないと始まりません。より多くの人にいい空間にふれてもらうために、ワンコインピザで人気のCONAと組んで全国展開をしていきます。お店にはリグナの家具を使うし、内装もリグナがやるから、リグナのビジネスとしてもいい。ピザ生地にもこだわって、全粒粉を使っています。レストラン事業を通じて、衣食住のうちの「食・住」の分野を広く提案していきたいですね。
————リグナとしての今後の展望を教えてください。
小澤良介 リグナのカンパニービジョンは「世界がときめく空間を」です。世界中の人がときめくような空間を創出していくことで社会に貢献したい。それは何も新築に限りません。今ある空間をカッコよくすることで、空間の価値を最大限に高める。これが僕は好きなんですよ。いまいちな空間をカッコよくするのは最高に楽しい。「こんな美人がいます」よりも「こんなに美人になりました」っていう方が興味を喚起します。CMで話題のダイエットジムもそれで成功していますよね。みんな、ビフォーアフターが好きなんです。
だから、僕は空間における最強のビフォーアフターメーカーになりたい。そこはすごくこだわっていて、今のリグナテラス東京も築30年以上のビルをカスタムしたものですし、今度オープンする「R the TABLE」も木造の一軒家をリノベーションしたお店です。冒頭でも話しましたが、自分を着飾るよりも自分の過ごす空間にもっとこだわろうということは伝えていきたいですね。空間が変われば、人生だって変わるんです。
————空間への意識を持つことが、ライフスタイルも変えていくということですね。本日はありがとうございました!
Interview/Text: 本多小百合
Photo: 森弘克彦
Photo: 森弘克彦
記事提供:Qreators.jp[クリエーターズ]
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