明治の文豪・夏目漱石。名前は知っているけれど、どういう生き方をした人物だったかまで知っている人は少ないかもしれない。
夏目漱石が活躍した明治時代は混沌の時代だった。約260年続いた平和な江戸時代が終焉し、西欧列強による植民地化を避けるため国主導の近代化が図られた時代だ。四民制度の廃止、西欧文化の急激な流入、産業革命により、人々の生活環境がガラリと変わった。それまで正しいとされてきた常識がことごとく消え失せてしまったのである。どう生きればよいのか、何が幸せであるのかがわからない……。
そんな時代に、個人はどう生きるべきなのか、考え続けたのが夏目漱石だ。夏目漱石は文学や生き方を通してその問題に答えつづけようとした作家だった。
現代の日本に生きる我々も、どう生きるのが正解なのか、わかりづらくなっているように感じられないだろうか。激動の明治を生き抜いた夏目漱石の名言をもとに、現代を生き抜くヒントを探っていこう。名言はよりよく生きるヒントの宝庫だ。つまずいたり、立ち止まったりしたときに、名言はきっと、あなたの力になってくれるだろう。
夏目漱石の名言に学ぶ、「自分を活かして幸せになる」生き方
出典:ja.wikipedia.org夏目漱石の名言1:所属しない
明治時代は、封建制度が廃止され、主人に仕えるといった「集団のために生きる」価値観が失われていった時代だった。夏目漱石は、そんな時代に「個人として生きる」価値観を自分の生き方や文学を通して追究し続けた人だ。そのように「個」を重要視した夏目漱石だからこそ遺せた名言が、これだ。
大学教授であった夏目漱石は、「超」のつくエリートだった。しかし、次第に小説を書くことに生きがいを見出すようになり、教授という安定した職を辞職。不安定な小説家に転身した。
夏目漱石があれほど自由に執筆できたのも、安定を捨て、不安定でも自分の可能性にかける勇気を持てたからだとも言えるだろう。この名言には夏目漱石のそのような資質がよく表れている。
どこかに所属するということは、安定や同志が得られるなど、確かにいい面もあるだろう。しかし、やはり、なにかを本気で始めたいと思った時、それが足かせになるということがあるものだ。一歩踏み出せないとき、夏目漱石のこの名言を思い出してみてほしい。
夏目漱石の名言2:自分本位であれ
英語教師時代の夏目漱石は、イギリスに国費留学をしている。外国に住み、様々な経験を積んで視野を広めた夏目漱石だが、帰国してからは日本社会の保守的なムードに次第に精神を病んでいった。
職業作家になってからもその傾向は続いたが、あるとき、自病の胃潰瘍で生死をさまよう経験をしたことで、夏目漱石は「エゴイズム」追求に目覚めるようになる。
人の目を気にしているうちは、大きいことを成し遂げられないーーこの名言はそう言っているのかもしれない。「エゴイズム」というと悪い響きを感じるかもしれないが、それはある意味、究極的に「自分を信じている状態」である。この名言は、そんなことを感じさせてくれる。
夏目漱石の名言3:今に生きよ
この名言を遺した夏目漱石は、若い頃から長く、精神衰弱と胃潰瘍の持病に悩まされてきた。生涯で5度も胃潰瘍で倒れたというのだから相当なものだ。
持病を抱えながらの執筆は、おそらく死を意識しながら行われたこともあっただろう。この名言からは、明日どうなるか知れない身を抱えながら、懸命に目の前の仕事に立ち向かう夏目漱石の姿が目に浮かぶ。
例えあなたが健康であっても、明日何が起こるのかわからないのは同じだ。何があっても後悔しないように、過去のことに縛られたり、未来のことを不安がったりして、チャンスを逃すことがないように、この名言のように「今」に向き合いたいものだ。
夏目漱石の名言4:悩む前に行動せよ
悩んでいる間は、何もしていないのと同じである。この名言からは、「できるかどうか悩んでいる暇があったら、まずやってみろ」という夏目漱石からのメッセージが読みとれる。
夏目漱石は安定を捨て、自分の可能性に生きた。そのような生き方ができたのも夏目漱石が自分を信じ、行動できる男だったからだ。この名言からは行動の重要性とともに、自分を信じることの大切さも感じとることができる。自分を信じることができなければ、行動することだって難しいだろう。
この名言にもあるように、何事も結果が出るには時間がかかる。それならば、悩んでいる時間を挑戦する時間にあてたほうが、よっぽど有意義で幸せな生き方ができるのではないだろうか。
夏目漱石の名言5:すべては自分次第
なんて潔い名言だろうか。そう、すべては自分次第なのだ。どう生きるかという問題に“正解”はない。人それぞれが、自分で選んで決めていくものなのだ。夏目漱石がそのような生き方を体現した人物だったということは、今回ご紹介した名言から、もうおわかりいただけただろう。
自分で選ばなければいけない分、選択肢の多さ、不確定さに途方にくれてしまいそうになることもあるかもしれないが、逆をいえば、自分で決められる自由があるということだ。
せっかく自由があるのだから、夏目漱石がのこしたこれらの名言のように、自分という軸を持って、行動を起こしたほうが、幸せになれるような気がする。
最後に、もうやってみるしかないーーそんな気分にさせてくれる、とっておきの夏目漱石の名言を一つご紹介しよう。
この名言に、特別に技巧的な言い回しははない。しかし、この名言は素朴な表現であるぶん、素直に「何かやってみよう」という気分にさせてくれる力がある。
うんうん死ぬまで押してみる。なんとうまく人生を表した名言だろう。この混沌とした現代で、あなたがもし、なにかやってみたいけれど一歩踏み出せなくて悩んでいる状況にあって、今回ご紹介した夏目漱石の名言に、今後どう生きるかのヒントを見出してくれることがあれば、こんなに嬉しいことはない。
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