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ブランドの価値を見出せ。流行を生み出す新要素とは:『ブランド・ジーン 繁盛をもたらす遺伝子』

樋口純平

2016/01/22(最終更新日:2016/01/22)


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ブランドの価値を見出せ。流行を生み出す新要素とは:『ブランド・ジーン 繁盛をもたらす遺伝子』 1番目の画像
出典:www.luxuryblackbook.com
 年が経つごとに、自分の身の回りにあるものは変化している。なぜなら、その年ごとに、流行しているものが異なっているから。あるブランドの流行が衰退を始めると、また新たなブランドによる流行が起こる。そうやって、常に流行の歴史は上書きされ続けている(それ故、「流行」と呼ぶわけだが)。では、一体なぜこのように、流行は常に変化し続けるのだろうか。

 ブランドの流行は、一見そのブランドの経営戦略が結果として現れたものであるかのように見える。しかし、実はそれだけではないのだ。ブランドの流行の背景には、人間の価値観の変化など、論理的に説明できない諸要素が存在するのだ。このような要素はビジネスの経験を重ねていけば図らずも見えてくるものであって、つまるところ、ブランドを売り出す戦略だけに集中していても、必ずしも成功するわけではないということである。

 そこで今回は、ブランディング・コンサルタントとして活躍する阪本 啓一氏の『ブランド・ジーン 繁盛をもたらす遺伝子』より、ブランドの製品・サービスの提供価値の本質を見失うことなく、ブランドを流行させるために必要なものとは一体何なのか、見ていきたいと思う。著者の新たなブランド観を取り入れ、自分に新たな価値を生み出そう。

繁盛をもたらす遺伝子ーーブランド・ジーンとは 

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 ブランドを売り出していく過程で誰しも、経営理論通りに結果が出なかったり、戦略を練らずとも結果が出たりした経験はあるだろう。そこで、ブランドの流行には、人間の論理を超えたブランドの意志の存在が大きく影響しているのではないだろうか、と著者は考えた。そのブランドの意志をブランド・ジーンと呼ぶ。つまり、ブランド・ジーンがブランドに宿り、そのブランドを流行に導くのではないかという仮説である。

 ブランド・ジーンはそれ自身の意志が、そのブランドでやりたいことをやりきった後は、別のブランドに再び宿り、活動する。そのため、ブランドには短命のものもあれば、ディズニーのように長命のブランドも存在する。つまり、ブランド・ジーンはディズニーでまだやりたいことがある、ということになる。

 では、ブランドを長生きさせるためには、どうしたらいいのだろうか。ブランド・ジーンを長く、ブランドに留まらせるには、絶えず、ブランドが進化や変化を求めて、新たな目標を設定するといった姿勢が必要なのだ。つまり、ブランドが現状の結果に満足することなく、常に新しい目的を持つことで、ブランドの人気を長く維持することができるのだ。

ブランドの提供価値のとらえ方

 多くのビジネスマンは、その製品・サービスの切り口に価値を置いてしまう。それでは、そのブランド・ジーンは短期間で、そのブランドから去ってしまうことだろう。そこで、顧客目線が必要なのだ。そのブランドの価値は何であるか、または、そのブランドが提供する製品・サービスの価値は何であるか理解することが重要なのだ。

 たとえ、爆発的な流行を起こしたとしても、他の新しいテクノロジーの誕生にとって代わられてもおかしくないのだ。そんな時、ブランドの価値が何であるか理解しておけば、その価値を軸にブランドの形態を大きく変えて生き残ることができるのだ。つまり、そのブランドの価値を保ったまま、新たな目的をブランド・ジーンに与えることができる。だから、ブランドの提供価値の理解こそ、ブランド・ジーンの意志の理解であるのだ。

 ブランドは常に顧客に影響を与える存在である。その影響の大小が、ブランドが上向きであるのか、衰退に向かっているのかを計るものさしなのだ。もし、顧客がたいして影響を受けていなければ、そのブランドは衰退しているということになるのだ。その顧客に与えている影響の大小の変化に注目することも重要である。

ブランドの衰退は悪いことではない

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 ブランドの衰退は、顧客のブランドの価値評価が下がったことであるため、悪いことであると多くの人は認識している。しかし、視野を広げて見てみよう。ブランドの衰退が、また新たなブランドを生み出し、人々の生活をより良いものにしていくのだ。

 過去の歴史を振り返ると、ブランドの消滅と誕生は繰り返されている。他のブランドとの競争に敗れてしまったとか、そのブランドが価値を失ってしまったとか、そのような要因だけが、ブランドの消滅を生み出すのではないのである。論理では説明できない、手の打ちようがない理不尽な要因で消滅することもあるのだ。

 ブランド・ジーンの観点では、ブランドが長生きすることが重要なのではない。ブランドが長生きするために、常に新しい挑戦をし続けているのかどうかが重要なのである。同じことを繰り返して、価値を生み出そうとするブランドが長生きすることに意味はないのだ。だから、ブランドの存続だけに執着するべきではないのだ。


 私達は目的に向かって、戦略を練ることから始めようとしてしまいがちだが、まず自分が持つ武器の価値を見定めた上で、戦略を練ることが大事であることを思い知っただろう。このブランド観は、ブランドに限らず、今後の自分の人生を考える場面でも効果的ではないだろうか。自分の価値が何なのか理解することで、今後何をすべきなのか、より明確に見えてくるはずだ。

 本書には、ブランド・ジーンをブランドに留まらせる方法や著者独自のブランド観が他にも記載されている。物事の本質的な価値を見出す力をつけられるだろう。ぜひ、手に取って読んでみてほしい。自分自身に新たな価値が生まれることだろう。


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