アベノミクスが功を奏し(?)、2020年のオリンピック招致も決まり、日本経済の現状はリーマン・ショックなどがあったゼロ年代に比べれば、明らかに右肩上がりといった調子できている。楽観的なことを申し上げれば、これからの4、5年間の日本経済は比較的「安定」したものになるだろう。
とはいえ、表題にもあるように、とある調査で日本経済の根幹を成す首都・東京は世界の経済都市の中で、なんとワースト2位という有難くないタイトルを頂戴することになったのだ。そのとある調査とはーー英ロイズが発表した「経済リスクを抱える都市ランキング」である。
日本人として(東京に住む者として)にわかには信じがたい当ランキングだが、往々にして真実というものは目に見えないものだ。東京という街に慣れていれば慣れているほど、好きであればあるほど、その裏に潜むリスク(真実)というものは悲しくも見えにくい。「恋は盲目」というやつだ。
今回はそんな「経済リスクを抱える都市ランキング」から、経済的リスクを抱える世界の経済都市を上位(ワースト)10位から順にご紹介していこう。会社だけではない、都市経済にもリスクというものが存在すること、それが重々ご理解頂けるだろう。
【経済リスクを抱える都市ランキング】
世界の経済都市ワースト10位:香港(中国)
by tommy@chau【平均年間GDP6270億ドル・総GDPリスク750億ドル】
まず第10位に挙げられた経済都市・香港。世界有数の観光都市とも呼ばれる香港。2012年には約2400万人の観光客が訪れるなど、まさに経済成長真っ只中といったところだろう。
中国きっての経済都市として名高い香港だが、今年は8月頃にエボラ熱、SARS患者が出たことで、流行病がリスク要因の首位となってしまい、第10位にランクイン。流行病が一度流行ってしまえば、経済活動にも大きな支障が出るのは言うまでもない。世界有数の経済都市として、こういったリスク管理もまた求められているということだ。
世界の経済都市ワースト9位:上海(中国)
by khalid Albaih【平均年間GDP:4720億ドル・総GDPリスク:780億ドル】
続いて第9位にランクインした経済都市も中国ーー上海だ。暴風、流行病、株の暴落、洪水、石油ショックなどがリスク要因として挙げられた上海。経済的なリスクから自然災害的リスクまで、様々な不安要素を抱えている経済都市といっても過言ではない。
近年は急激な人口増加も問題視されていて、財政への負担も非常に大きくなっている。現在では北京に次いで、世界都市人口ランキングの第2位ともなっている。長期的に有効な解決策を、1日でも早く打ち出すことが求められている。
世界の経済都市ワースト8位:大阪(日本)
by lublud【平均年間GDP:5850億ドル・総GDPリスク:790億ドル】
そして栄えあるーーではなく、残念ながら経済都市ランキングのワースト8位となってしまったのが、我が日本の大阪である。関西地域の経済・文化の中心地である大阪だが、世界でも有数の経済リスクを抱えてる都市、という判断を下されることとなった。
〈大阪が抱える経済的リスク〉
⑴ 暴風、洪水(自然発生リスク)
⑵ 石油ショック、サイバーテロ(経済的リスク)
⑵ 石油ショック、サイバーテロ(経済的リスク)
大阪が抱える経済的リスクとして挙げられていたのは上記の2点。「地震列島」である日本は、自然災害のリスクが他国の都市よりも過大評価されがちな点もあるが、2010年の東北大震災の惨状を見れば、こういった評価を受けるのも致し方ないのだろう。
世界の経済都市ワースト7位:イスタンブール(トルコ)
by akk_rus【平均年間GDP 4930億ドル・総GDPリスク830億ドル】
日本と同じく地震大国として知られるトルコ。そんなトルコの首都であるイスタンブールもまた大阪と同じく、自然災害の発生リスクが最も懸念されている。
とはいえ、大阪と明らかに違うのは不安定な行政の状態であり、リスク要因の2番手に挙げられている。単一主権国家による債務不履行、テロによる情勢の不安定化、流行病など、自然災害のリスク以上に解決せねばならない人為的問題も山積みとなっている。
世界の経済都市ワースト6位:ロサンゼルス(アメリカ)
出典:www.fastcolabs.com【平均年間GDP:8240億、総GDPリスク:900億ドル】
当ランキングワースト10位の中で、欧米の経済的リスク都市としてランクインしたのはたったの2都市だけ。その2都市の内のひとつが、アメリカ・ロサンゼルスである。一見、リスクなどないように思えるロサンゼルスだが、意外と問題が多い。
ロサンゼルスの抱える諸問題の中で最も特筆すべきは、やはり株価の暴落だ。2015年4月-6月のGDP成長率が伸びを見せ、求人数も増加傾向にあるといわれているが、実際の失業率は5月の統計では5.5%といまだ高いのが現状である。
世界の経済都市ワースト5位:ニューヨーク(アメリカ)
by The Wandering Angel【平均年間GDP:1兆ドル・総GDPリスク:900億ドル】
欧米諸都市の中でワースト1位という結果に終わった経済都市が、アメリカのニューヨークである。自然災害リスクや政治的リスクの大きかったアジア圏に対して、ニューヨークは経済的リスクが最大のリスク要因として挙げられている。
ゼロ金利政策の解除などの不透明な政策やサイバーテロなど、アメリカらしいリスクが挙げられており、ロサンゼルス同様、株価の暴落が最大の懸念材料となっている。
世界の経済都市ワースト4位:マニラ(フィリピン)
by ~MVI~ (warped)【平均年間GDP:2010億ドル・総GDPリスク:1011億ドル】
第6位、第5位となったアメリカ2都市とは打って変わって、自然災害の点が最大のリスクとなったフィリピン・マニラ。ここ数年、様々な自然災害リスクランキングの常連になりつつあるマニラ。水害やハリケーン、地震など、自然災害は尽きることがない。
無論、経済成長そのものが沈滞ぎみであることも、経済リスクを底上げする要因となっている。GDP成長率も徐々に低下しており、まるでフィリピンという国の経済成長が行き詰まってしまっていることを具現してるかのようだ。
世界の経済都市ワースト3位:ソウル(韓国)
by strogoscope【平均年間GDP:6560億ドル・総GDPリスク:1030億ドル】
暴風に対する懸念が最も高く、次いで石油ショック、株の暴落、洪水、流行病と様々なリスク要因を抱える経済都市・ソウル。経済面ではGDP成長率が伸びを見せているものの、あくまで低成長に留まっているというのが現状である。
世界有数の人口密集都市であるためか、最近の政治情勢の悪化からか、テロや流行病のリスクも意外と高く評価されたよう。
世界の経済都市ワースト2位:東京(日本)
by bjimmy934【平均年間GDP:1兆4700億ドル・総GDPリスク:1530億ドル】
「東京が抱える最大のリスクは?」と訊かれて、最も多い答えはおそらく「地震」だろうが、これはさほどリスク視されず、むしろ暴風雨や株価の暴落、石油ショックといったものが脅威であるとして挙げられた。地震は4番目にとどまった。
経済面では大企業を中心に回復傾向にあり(アベノミクスのおかげ?)、2006年度以来の増加率を示しているが、他国の姿勢はいたって消極的で、円高への急激な変化に対する警戒が見受けられる。
世界の経済都市ワースト1位:台北(台湾)
by damonjah【平均年間GDP:4兆ドル・総GDPリスク:1810億ドル】
民間投資や消費社会の到来によって、国全体の経済成長率は着実に右肩上がりとなっているにも関わらず、世界の経済都市ワースト1位に選ばれてしまった台北。
今ではリーズナブルな海外旅行の定番ともなっており、国としての景気は決して悪くない台湾だが、津波や地震など、立て続きに(断続的に)起こり続ける自然災害が、思いのほかリスク視されたのが大きな原因だろう。
【おまけ】10位以下の経済都市はこちら
11位 リマ(ペルー)
12位 テヘラン(イラン)
13位 サンパウロ(ブラジル)
14位 メキシコシティ(メキシコ)
15位 モスクワ(ロシア)
16位 パリ(フランス)
17位 ロンドン (イングランド)
18位 シンガポール(シンガポール)
19位 ブエノスアイレス(アルゼンチン)
20位 ジャカルタ(インドネシア)
以上、世界のリスク都市ランキングだったが、やはり日本人として気になるのは第2位にランクインした東京の存在だろう。しかし、さほど案ずることはないのもまた事実。これらはあくまでひとつの指標に過ぎない。
都市戦略研究所が発表した「世界の都市総合力ランキング(GPCI)」によれば、東京の都市力ランキングは世界でも4番目。リスクは多かれど、東京という街が世界から評価されていることもまた確かだ。
いずれにせよ、自然災害によるリスクというものは正直言って防ぐことは難しい。ともすれば、リスクを最小限まで縮小するために東京・日本がすべきことーーそれはやはり、経済の安定化に他ならない。
月並みで当たり前なことだが、安定した経済力というものを都市単位で持つこと。2020年に向けて、日本の東京が担う役目、そして期待は大きいのだ。
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