「3時のおやつ」の時間が楽しみだった幼い頃、毎日様々なお菓子が私達に笑顔をもたらしてくれた。そんな子供だけでなく、お菓子は大人達にも人気である。チョコレートを持ち歩いている女性も多いだろう。お菓子は日本中から愛されているのだ。
しかし、普遍性を内包している業界のように思えるこのお菓子業界だが、近年大きな変化に見舞われている。数々の日本のお菓子が“海外進出”しているのは、ご存じだろうか。海外旅行などで外国に行ってみると、スーパーなどに日本より高い値段で、日本のお菓子が売られているのを目にする。しかし、インスタントラーメンの世界的な広がりに比べると、日本のお菓子業界はまだまだである。
そこで今回は、三田村 蕗子氏の『「ポッキー」はなぜフランス人に愛されるのか? 海外で成功するローカライズ・マーケティングの秘訣』から、日本のお菓子業界が海外市場をさらに拡大するためにはどうしたらいいのか、見ていくことにしよう。
世界へ進出していく日本のお菓子業界
出典:www.buddhafied.com 既に世界に出ているお菓子は数多くある。しかし、やはりインスタントラーメン業界には及ばないのが現状である。日本のお菓子のクオリティなら、インスタントラーメンに負けないポテンシャルがあるはずである。お菓子の味のクオリティだけではない。安全性やパッケージの工夫など、国内市場で留まっているのがもったいないほど、日本のお菓子のクオリティは高い。
お菓子業界の人達は、ほのぼのとした雰囲気を漂わせている。人に幸福感を与える業界であるからにして、このほのぼの感なのだろうか。しかし、そんなほのぼのとしたお菓子業界に変化が起きようとしている。それがお菓子業界のグローバル化である。
例えば、大手お菓子会社として知られるカルビーは、本社を都内の中心に構えるようになり、外資系の経営手法を取り入れた企業へと変貌した。カルビーの松本社長は、異業種からのスカウトを行うなどして、経営手法を大きく変えた。そうしてコスト管理などを徹底的に行った結果、カルビーの営業利益は見違えるほど上がった。こうして、世界で戦う準備を整えることができたのだ。
お菓子業界の海外進出戦略
出典:www.aaglobal.com カルビーがいくら日本で多くポテトチップスを売ることができるとしても、世界には通用しない。一体、何が問題なのだろうか。簡潔に言うと、サプライチェーンを制した企業が既に存在しているのだ。つまり、ポテトチップスを作るためのジャガイモを調達できる供給力が、カルビーをはるかに上回っている企業が存在しているのだ。
日本のお菓子業界が海外市場を開拓していくには、先行企業が作れないお菓子で戦いに挑むのが王道の手段である。このように、海外ではいくら味が美味しくても、戦略なくして売ることはできない。お菓子を置く棚を、あえてお菓子類の棚に置かず、別の種類の棚に置くようにするといった工夫も一つの戦略である。
そして、もう一つ重要なのが、どの企業も真似することができないほどの技術力を持つことである。例えば、ハイチュウはメジャーリーガーに人気で、球団からスポンサー契約を結ぶように依頼された。なぜなら、ハイチュウのあの食感を真似できるキャンディが他にないからである。それだけの高い技術力が海外のお菓子業界に打ち勝つのに必要なのだ。
お菓子の海外進出が国内雇用を生む
出典:www.portcares.on.ca お菓子業界の海外進出だからといって、お菓子ばかりを見つめていてはいけない。企業は海外進出していく過程で、壁にはぶつかるものだ。その壁を乗り越えようとしていく内に従業員の士気も上がっていくだろう。ビジネスチャンスが広がる海外への進出は企業の活力を養うことができる。それが、未来の人材を育成することに繋がっていくのだ。
日本のお菓子業界がお菓子を海外で売っていくのに、重要なのは商品のオリジナリティや流通チャネルやローカル目線だけではない。海外市場への最適化を図ることができるグローバル人材が必要なのだ。そのため、今後のお菓子業界は、グローバルな人材育成に力を入れていくことが課題となるだろう。
一つの大手お菓子メーカーが、世界で日本のお菓子を売り出しても、日本のお菓子の質の高さを全世界に知ってもらうには力不足である。つまり、一部のお菓子メーカーでなく、日本の全お菓子業界が総力をあげて、世界に挑んでいかなければならない。やっと海外で、日本のお菓子が受け入れられる土壌が整ってきている今、お菓子業界が大きく生まれ変わるチャンスなのではないだろうか。
お菓子業界もまたグローバル化の流れに乗って、変容していく様子がうかがえた。お菓子業界に限らず、様々な業界の企業が海外市場開拓のために、戦略を考えたり、グローバル人材の育成に力を入れている。この社会の流れに対して、今自分は何をすべきなのか考えてみてほしい。そうすることで、私達の未来予想図が見えてくるのではないだろうか。
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