現代、メディアの多様化や生活者インサイトの変容などから社会情勢もまた大きく変化している。また、仕事も絶えず変化し続けている。一つの仕事に関係するコミュニケーション方法が多様化したり、仕事で成果を出すためのソリューションも多様化する。様々な物事が多様化していき、私達は仕事のゴールが見えづらくなってきてしまっている。そんなゴールを明確にしてくれるクリエイティブな仕事術がある。
クリエイティブディレクションという言葉を聞いたことがあるだろうか。クリエイティブディレクションとは、クリエイティブに仕事に貢献することであり、主に広告業界で必要とされるスキルのことである。しかし、このクリエイティブディレクションは広告業界だけでなく、どんな業界の仕事においても有効的なのだ。複雑な社会情勢の中でも仕事のゴールを見定め、その仕事のゴールへ向かっていくプロセスをクリエイティブディレクションが照らしてくれるのだ。
そこで今回は、電通の日本を代表するトップクリエイティブディレクターの古川 裕也氏の『すべての仕事はクリエイティブディレクションである。』から、私達が今後抱えうる複雑な仕事をクリエイティブに解決していく力を身につけていこう。著者の古川氏は、クリエイティブディレクションの4つの方法論と将来的な可能性を述べている。この二点を知ることで、仕事のクリエイティブディレクターとしての第一歩を踏み出そう。
クリエイティブディレクションの方法論
出典:www.ebizradio.com まず、第一にミッションを発見するべきである。自分が抱える仕事で、理想の成果を出したい漠然とした欲望があったとしたら、言語化や明確化を繰り返して、より具体的な目的に昇華させなければならないのだ。また、仕事で理想の成果を出すために超えるべき壁は複数あって、複雑なものであるかもしれない。そんな時でも、その壁の要因が何であるか一つ一つ探ることが、仕事のミッションを発見する上で重要なプロセスである。漠然としたものを明確にするのも、クリエイティブディレクションの一つの力なのだ。
第二に、コア・アイデアの確定である。クリエイティブディレクターの仕事は、ミッションからコア・アイデアを生み出す過程で、普遍性と新規性を取り入れた観点を持ちつつ、狭い領域でクリエイティブなアイデアを生み出す制約を作らなければならない。なぜなら、世界的に評価される仕事は、人類にとって普遍的で、反対できないコア・アイデアでなくてはならないからだ。反対できないコア・アイデアを生み出すには、ミッションの要素を多く含んだものでなければならないため、クリエイティブでありながら、狭い領域に制約する必要があるのだ。
第三に、ゴールイメージの設定である。この仕事は非論理的な要素が多く求められる。クリエイティブディレクターが考えたアイデアが、ターゲットと接触した際に、ターゲットにどのような感情を抱かせられるのか想像するのだ。もちろん感情は様々であるが、ターゲット自身がこのアイデアに関係していると感じさせられれば良いのだ。つまり、仕事の理想の成果に結びつくのは、ターゲットの共感なのである。そのため、ゴールイメージはターゲット層が限定されていればされているほど、設定しやすい。
最後に、アウトプットのクオリティ管理である。これまで行ってきた3つの仕事の方法が、どんなにクリエイティブで上手く機能したとしても、ダメなのだ。仕事で理想の成果を出すためのクリエイティブなアイデアが、ミッションに向かって最適で最強な質で実行に移されていくようにすることが、クリエイティブディレクターの仕事である。この仕事を上手くいかせるのに必要なのは、天才性としか言えないようだ。
クリエイティブなアイデアの力学
出典:searchengineland.com クリエイティブディレクターである著者の古川氏によると、アイデアの定義は「対象物をよりよい状態に変化させる考え」であるという。つまり、そのアイデアによって対象物が変化や成長しなければならないのだ。また、クリエイティブにおける最大の価値は新しさである。
この新しさというクリエイティブの最大の価値を生み出すために必要なアプローチがある。それは、過去のクリエイティブなアイデアの歴史を知ることである。過去のクリエイティブディレクションによって、生まれた数々の優れたクリエイティブなアイデアのどこにもない新しさを追求する。それが、クリエイティブディレクターが仕事をしていく上で、最も重要なアプローチなのだ。
クリエイティブディレクションの未来
出典:www.hippowallpapers.com 今までのクリエイティブディレクションは、広告業界のクリエイティブディレクターに求められてきたスキルであった。しかし、様々な社会情勢の変化から、クリエイティブディレクションはとうとう人類の課題解決にまで、応用を効かせることができるようになった。クリエイティブディレクターは広告の仕事をこなしていく中で様々な力を得ている。その様々な力がクリエイティブディレクションなのだ。
クリエイティブディレクションは、物事の本質をとらえて言語化する力、最適なアイデアを生み出し、表現する力、的確に判断する力、人々を動かす力といった様々な力を内在している。これらの力があれば、いかなる仕事の困難な問題も解決できそうではないだろうか。
今後のクリエイティブディレクションは、「世界中の課題を、あらゆる手段を駆使して解決する技術とプロセス」として、仕事など応用できる領域が広がっていくはずだ。つまり、クリエイティブディレクションが今後最も必要となるスキルなのだ。
ただクリエイティブなアイデアを生み出すことが、クリエイティブディレクターの仕事だったと思っていた人もいるのではないだろうか。また、クリエイティブディレクションが、変容していく社会に戸惑うのではなく、そんな状況さえも利用して、新たな価値を生み出すことができる力であるとは、思いもしなかったのではないだろうか。自分の仕事に飽きたと感じてきてしまった人は、ぜひクリエイティブディレクターのような見方で、今一度、仕事を見直してみてはいかがだろうか。
本書に書かれたクリエイティブディレクションが難しいと感じた人は多いはずだ。クリエイティブディレクターは長い時間を仕事に費やすことで、クリエイティブディレクションという力を得たのだ。クリエイティブディレクターである著者が書いた本書を一読しただけで、クリエイティブディレクションが身についてしまったら、クリエイティブディレクターはたまったものではないだろう。日々の仕事の中で、何度も繰り返してみることが重要なのだ。そうすれば、クリエイティブディレクションという力を得ることができるだろう。
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