日本を代表するロボットアニメ、「機動戦士ガンダムシリーズ」。この機動戦士ガンダムには、「平家物語」にも通じるような栄枯盛衰、時代の変化に翻弄されつつ生き抜く人間の悲哀が描かれている。
本書『ガンダムが教えてくれたこと 一年戦争に学ぶ“勝ち残る組織”のつくり方』は、ビジネス戦略コンサルタントである著者の鈴木博毅氏が、「仕事に役立つガンダムの本」として著したものである。
ホワイトベース(作中に登場する宇宙戦艦)はアムロ(機動戦士ガンダム・逆襲のシャアにおける主人公)の「職場」、ブライト(アムロの上官)は口うるさい「上司」など、今私たちがしている仕事や、置かれている立場に置き換えて「組織論」を展開する本書は、ガンダム好きにはたまらない一冊となるだろう。
今回は、本書の中でも「最強のチームを運営し、まとめ上げる求心力」についてお話ししたい。
ガンダム組織運営論その1:ホワイトベースのクルーに学べ!
by amika_san サイド7を脱出したホワイトベースのクルーには、ひとつだけ共通する目標があった。それは「自分たちが全員生き残ること」である。
クルー全員が目標に向かってブレずに全力を傾けられる集団、つまり社員全員がひとつの目標に全力投球できる企業(もしくはチーム)は、会社として生き残る上で強みになる。
もし、目標が個人でバラバラであったら、組織が崩壊し、運営できなくなってしまう。組織が崩壊すると、「ジオン公国軍」になってしまうと著者は主張する。ジーン、シャア、ギレン、キリシアらが、国家の勝利という大目標から逸脱し、それぞれが胸に抱えるバラバラの目標を追求し、結果として、愚かとしかいいようがない行動に出ているからだ。
リーダーも目標もない“ただの集団”は、各人が勝手なことを言い合うだけだと著者は述べる。しかし、リーダーが“ただいるだけ”でも組織の運営はできない。目標を「これだ」と掲げるだけでなく、その目標がメンバー個人の利益にうまく繋がるように目標設定しなければならない。
日頃から、リーダーが目標をメンバー全員に浸透させ、目の前にある仕事の重要さを伝えることが組織運営では欠かせない。決して、ただ目標を掲げるだけでは、組織は運営していけないのである。
ガンダム組織運営論その2:レビル将軍の“英断”に学べ!
ガンダムの物語の中で、地球連邦軍は極めて官僚的な陣営として描かれていると言える。
連邦軍の軍人の多くは、自分の階級を鼻にかけているからだ。そのため、肩書きの低いホワイトベースは、連邦軍に軽視されがちであった。
しかし、連邦軍のトップであるレビル将軍だけは、一貫してホワイトベースの実績を高く評価していた。
皆が保身にまわり、自分たちの対面を保つための発言をする中、「実績」で物事を判断しようとするには勇気がいるだろう。現実を直視して結果を出すために“英断”できるかで勝負が決まるといって良い。
自己の立場より、結果を優先できる人物は少数派であるが、その少数派こそが高い成果を残すのである。
連邦軍の軍人の多くは、自分の階級を鼻にかけているからだ。そのため、肩書きの低いホワイトベースは、連邦軍に軽視されがちであった。
しかし、連邦軍のトップであるレビル将軍だけは、一貫してホワイトベースの実績を高く評価していた。
皆が保身にまわり、自分たちの対面を保つための発言をする中、「実績」で物事を判断しようとするには勇気がいるだろう。現実を直視して結果を出すために“英断”できるかで勝負が決まるといって良い。
自己の立場より、結果を優先できる人物は少数派であるが、その少数派こそが高い成果を残すのである。
ガンダム組織運営論その3:アムロのように味方をつくれ!
どんなことを成すときでも、味方がいることは心強い。物語の最初から、戦闘において、アムロはほぼ一貫して仲間を守る行動をしている。アムロに何度も助けられているため、アムロ以外のパイロットは(後半からは特に)自然とアムロを援護する行動をとるようになる。
著者はここで、マチルダの婚約者のウッディ大尉がホワイトベースを守って戦死したことを例に挙げている。アムロとホワイトベースは、ウッディ大尉のように味方になってくれる人がいたからこそ生き残れたのである。もし彼がいなかったら、アムロもホワイトベースも生き残れなかっただろう。
命を賭けてくれるまではいかなくても、味方がいるということは強みになる。文字通り、生き残れる可能性が広がるのだ。同じ部署や会社だからといって皆が皆、協力してくれるとは限らない。もしかしたら、組織内で足の引っ張り合いがあるかもしれない。本当の味方を見つけるためには、自分がしてほしいことをまず相手に与えること。これはビジネスの付き合いにも、プライベートの付き合いにもいえることであるが、人間関係構築の真理なのだ。
組織に所属していない人はいない。人間は、社会生活をする際に必ず組織に所属する。それは、人から子供まで魅了する「機動戦士ガンダム」の中でも同じである。本書のように、自分の仕事場をガンダムの世界に例えて「こんなときに自分がホワイトベースのクルーなら」「レビル将軍なら」「アムロなら」と考えてみると、今よりも少し仕事が楽しくなるのではないだろうか。
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