近年、残業に対する見方が変わってきている。ノー残業デーや、残業代の増加、残業時間の制限をきっちり設ける企業など……。残って仕事をしている者が偉いという考えが古いものになり、残業に対する姿勢が少しずつ変わっているようである。
しかし、そのような動きがあっても、残業は無くならない。実際、綺麗さっぱりなくなることはないのである。それは、リストラや社員の長期休みで出てきてしまう“穴”を、会社側が人員補充とする形で埋めようとしないからである。
人員補充ができなくても、なんとか上手に仕事を回すことはできないものだろうか? 本書『「3人で5人分」の成果を上げる仕事術』は、この問いに対する答えについて明確に示してくれる一冊である。本書では、チームで仕事をうまく回すための発想法や、時間の使い方、IT活用のアイデアなどを網羅しており、人員不足の「負のスパイラル」を断ち切ることができるようなアドバイスが豊富に紹介されている。
今回は、「人員不足」というピンチをチャンスに変える働き方についてお話したい。
なんとかして残業を減らしたい!
欠員はむしろ、「残業をなくすチャンス」であると著者は主張する。なぜなら、「人が足りないから、残業は当たり前」と考えていては、何も始まらないし、今より状況が悪くなるばかりだからである。
残業を減らすということは、時間を効率良く使うしか方法はない。まずは自分の1日のスケジュールを見直してみよう。きっと、どれも必要不可欠な仕事であろう。しかし、仕事に時間を割り当ててないだろうか?
仕事に時間を割り当てるということは、仕事が終わったら次の仕事、終わらなかったら終わらなかった仕事をそのまま続ける、というような働き方をするということである。こんな働き方は、今日でやめよう。これからは、「時間に仕事を割り当てる」ようにするのだ。
時間が決められているから、その中で仕事を効率良く済ませるしかない。時間が経ったら、次の仕事をしなければいけない。「何時間かかってもやる!」という意識を排除するには、このような考え方が必須なのだ。
「残業中は仕事がはかどる」なんて嘘八百
前述の通り、時間管理は働き方の見直しに必須である。しかし、定時の間は何かと予定外の仕事が立て込んで、静かに落ち着いて本来の仕事ができないものである。だからこそ、「残業時間の方が静かに仕事ができて成果もでるのではないか」という主張も少なからず耳にする。
実際、残業中は仕事が捗るのだろうか? 東京大学の島津明人教授曰く、「人間の脳が集中力を発揮できるのは、朝目覚めてから13時間以内」なのだそうだ。朝6時に起きたら、19時以降は集中できないということになる。
とある脳科学者も、「人間の脳というものは、制限時間がある方が集中できる」と述べている。人間は、集中できない19時以降に静かに仕事をするよりも、定時の間に自分が集中出来る状態と環境を作り出すことで、生産性をアップすることができるのである。
時間で仕事は解決しない
仕事が効率良く終われないのは、なぜだろうか。あなたもきっと自問自答したことがあるだろう。それぞれ自分なりに答えも出したはずだ。仕事を効率良く終われない原因は、パワーポイントやエクセルのスキルがなかったり、そもそもの自分の仕事への知識不足だったりするだろう。
それらを補うために、残業をする。残業のせいで、ちっとも自分の知識やスキルをレベルアップする時間を取れない。これでは負のスパイラルである。ただ時間を消費するだけで、生産性がない。このような人物のことを著者は「時間泥棒」と呼んでいる。
時間泥棒にならないために、思い切って残業をやめよう。定時で退社する勇気を持つのだ。定時で退社して、本来残業していたであろう時間を自己研鑽に充てるのである。パワーポイントやエクセルの本を買って読むのも良いだろう。自分の能力を上げることができたならば、徐々に一つひとつの仕事時間も短縮できていくに違いない。
「長時間会社にいることが会社への貢献ではない」。著者はこう主張している。成果を出すには、自分が集中出来る環境を作ることが最優先だ。残業は、成果に直結するとは限らないことが本書でわかるはずだ。残業をしない努力も、会社に貢献するひとつの手段なのだから。
残業が常態化している……そんなときは転職を検討してみよう
残業が常態化しているような企業で働いていて、月の残業時間が多くて心身ともに疲れ切ってしまっている、という人も少なくないだろう。
どれだけ一生懸命働いても、自分自身の健康が守れなければ元も子もない。
「どうしても残業が避けらない……」という環境に身を置いてしまっているのなら、心身に限界がくる前に転職を検討してみよう。
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