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なぜ万引き不良少女は、8年で100億円企業を創る女性起業家になれたのか?:『#GIRLBOSS』

蓮見彩

2016/02/18(最終更新日:2016/02/18)


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なぜ万引き不良少女は、8年で100億円企業を創る女性起業家になれたのか?:『#GIRLBOSS』 1番目の画像
by TechCrunch
 経済産業省の発表によると、日本にいる起業家のうち、男性起業家は15.5万人に対して女性起業家は6.8万人。実に女性起業家は、男性起業家の約半分しかいない(半分もいるのかと驚いた人もいるかもしれないが)。このデータからも、どうやら女性には起業という選択肢がまだ根付いていないのが現状のようだ。

 しかし、女性ならではの丁寧さやホスピタリティーを活かした事業で成功を収めている女性起業家も多く生まれてきており、今後はより女性起業家の活躍は増えていくだろうと思われる。

 今回は、アメリカで若い女性から絶大な支持を集めるオンラインショップ「ナスティ・ギャル(NASTY GAL)」の創業者であるソフィア・アモルーソの著書『#GIRLBOSS(ガールボス) 万引きやゴミあさりをしていたギャルがたった8年で100億円企業を作り上げた話』に書かれている、彼女の波瀾万丈な起業物語を紹介する。仕事を頑張る女性だけでなく、男性にもパワーを与えるだろう。

米国20代女性に大人気の「ナスティ・ギャル」とは?

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出典:www.nastygal.com 「ナスティ・ギャル」とは、若い女性を中心とした人気のオンラインヴィンテージショップである。2006年に「ebay(イーベイ)」のショップとしてオープン。2012年には、ファッションECサイト「ネッタポルテ」やファッションブランド「エイソス」などに投資しているIndex Ventureから500万ドルの資金を調達し、1億3000万ドル(約150億円)の売り上げを記録するまで急成長した。

 現在では、従業員が300人以上と規模が拡大し、実店舗までオープンさせた。もはや、米国の若い女性で「ナスティ・ギャル」の名を知らないものはいないほどだ。

 ところで、世の女の子が毎日少しでも輝くようなファッションを送り出してきたナスティ・ギャルだが、実はその創業者であるソフィアがどういった人なのかについては、あまり語られていない。ソフィアがどういった人物であり、ナスティ・ギャルを作るまでにどのような物語があったのか。

不良少女は、なぜナスティ・ギャルを作ったのか?

 ナスティ・ギャルの創業者のアムルーソ・ソフィアは、20代で今の会社を創業している。「30歳未満で最も影響力が大きいファッションリーダー30人」に選出され、経済情報サイト・CNNマネーでは「40歳以下の起業家40人」にも選出されている、今一番注目されている女性起業家である。

 結果だけ見ると、「なんと羨ましい人生を送っているのか」と思いたくなる。しかし、実は女性起業家のソフィアは、優秀な大学で経営学を学んだ経験があるわけでも、ファッション業界で働いていた経歴を持っているわけでもない。つまり、ファッションにも経営にも精通していないど素人。そんななにもかもど素人のソフィアがこれほどの会社を築くには、どんな壮絶なドラマがあったのだろうか。

万引きに窃盗を繰り返す不良少女 

 若いころのソフィアは、落ちこぼれの不良少女だった。当時のソフィアは、周囲と馴染めないせいでアルバイトが長続きせず、次第に生活費を稼ぐために万引きや窃盗を繰り返すようになる。ついに20歳のとき、ソフィアは窃盗容疑で逮捕されてしまった。さらにソフィアはヘルニアを煩ってしまい、定職についていないにもかかわらず、医療保険に加入する必要に迫られる。これを機にはじめて、ソフィアは「真面目に働こう」と決心するのである。

ebayに没頭する日々

 美術館の玄関での認証係という真っ当な仕事を始めたソフィアは、「仕事の空き時間に何か好きなことをできないだろうか」と考えるようになった。そこで発見したのが「ebay」というネットオークション。ちょっとした空き時間で、ソフィアは自分が好きなヴィンテージ商品をネット上で販売するようになる。もちろんお金のないソフィアは、商品を入手・商品の撮影・商品説明といった一連の作業を全て一人で行い、オークションに次々出品していった。ヴィンテージ商品を入手するためなら、遺品整理を行う家に押し掛けることも躊躇しなかったというのだから、その熱意は凄まじい。

ナスティ・ギャルの誕生

 2年間、毎日ebayに没頭したソフィアは、23歳のときには1週間で1ヶ月分の給料を稼ぐまでに成長していた。もう十分と判断したソフィアは、ebayからショップを独立させ、2008年6月13日にヴィンテージオンラインショップのナスティ・ギャルをオープンさせた。オープン当日に出品した全商品が完売したという大盛況ぶりだったらしい。

女性起業家・ソフィアから学ぶ、経営哲学

 人脈も資金も大してなかった女性起業家・ソフィアが、なぜここまでナスティ・ギャルを大きくできたのだろうか。その理由は、ソフィア独自の経営哲学があった。

ソフィアの経営哲学① スタートは小さく、微調整しながら上を目指す

 ソフィアは自身の起業家人生を次のように振り返る。

「私は、会社を始めたことはありません。イーベイストアを始めたら、会社になってしまっただけです」

 ソフィアが言うように、まずは自分が興味のある小さなことに全力投球し、次第に事業として大きくしていくのも起業の一つの手法だといえる。勢いで風呂敷を広げて起業してしまう人間をよく見かけるが、あまり賢い方法とは思えない。ノウハウを持ち、事業に対して相当な自信があれば別だが、最初は小さな規模でその事業内容が成功するのかどうかを試験的に試す方がいい。起業には莫大な資金がかかるために、試験的な運用を行うことがリスクヘッジに繋がる。ソフィアは、自然とリーンスタートアップ的な手法を実践していたのだ。

ソフィアの経営哲学② SNSでユーザーにアクセスする

 ebay時代にお金のないソフィアは、SNSを活用して、広告費のかからないプロモーションを行った。仕入れがない日は、ひたすら自宅でマイスペースというSNSで友達を増やしていき、友達数が万単位になると、マイスペースの掲示板とブログにオークションの告知を行ったそうだ。ここでのポイントは、SNSを通した友達への宣伝。SNS上ではあるが、友達という関係で宣伝する方が個人にダイレクトに影響を与えることができるとソフィアはわかっていたのだ。また、友達のマイペースを覗くことができるので、「顧客が何を欲しているのか」といったユーザーニーズを無料で入手できる。SNSでの宣伝は費用がかからない上に、個人に影響力があり、ユーザーニーズを知ることができる効果的な方法なのだろう。

 今では大きな会社の社長となったソフィアだが、未だにSNSの活用を重要視している。特にナスティ・ギャルの商品に寄せられたコメントは、忙しくてもソフィア自身が目を通すことを忘れない。さらに、従業員にもそのコメントを十分に読むように義務づけている。SNSを通じることで、顔が見えない顧客の感覚をキャッチアップすることが狙いだ。


 少し前の「IT起業家」といえば、一からビジネスモデルを設計し、事前に潤沢な資金と優秀な人材を集めるというイメージだったかもしれない。しかし、最近ではリーンスタートアップ的な手法により状況が大きく変わった。女性起業家・ソフィアの例を見ても分かるように、既に存在するプラットフォームを利用することで容易に新しいビジネスを始めることができる。

 例えば、自分の趣味や特技を活かしてYouTuberやツイキャスでの生中継ライブを活動拠点とするアイドルも同じ類いである。要は、趣味から拡張して独立することも、ミニマムな仮説検証からヒントを得て事業を起こすことも可能な時代なのだ。そう難しく考えず、小さく始めて「起業」するという選択肢も頭に入れておいてほしい。

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