日々の生活の中で、交渉する場面はたくさんある。例えば、夫婦が夕食をどこに食べに行くか相談したり、親子が就寝時間をめぐって話し合ったり……。
本書『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』では、交渉とは、自分が望んでいることを実現するための基本手段であり、共通の利益や対立する利害について合意を得る話し合いのプロセスのことであると述べられている。
本書では、この「合意をつくる」技術、つまり交渉力の高め方が、満遍なく語られている。今回はその中でも、「交渉力のある人の特徴」について紹介したい。
交渉力がある人は“こだわらない”
交渉は本来、優れた合意か、プロセスが効率的か、交渉後に関係が改善しているか(損なわれていないか)が要件として挙げられる。
著者曰く、もっとも一般的な交渉形式は、自分側の条件を提示したり引っ込めたりするパターンである。しかし、この交渉の仕方は効率的ではない。なぜなら、それぞれが自分の条件にこだわって身動きが取れなくなることが多いからである。交渉力の無い人は、自分のスタンスを明確に弁護すればするほど、態度を変えにくくなる傾向があるのだ。
このように、最初に提示した条件が絶対だと主張するほど譲歩が難しくなって、その条件が自分のワガママに近くなってしまうのである。こうして面子を保つことが新たに利害に加わり、軌道修正ができなくなっていく。このようにして、お互いが本来求めている利益をうまく調整できる可能性はどんどん遠のいていくそうだ。
変なこだわりを捨てて交渉にのぞむことで、新たな可能性が生まれてくるはずだ。
交渉力がある人は“人と問題を切り離す”
先ほど、“こだわらない”ことについて述べたが、次は“人と問題を切り離す”ことについて紹介する。
“人と問題を切り離す”ということはどういうことかというと、相手の強気な態度を誘発してしまったり、そのことで合意が不本意なものになってしまったりすることを避けるということである。“人と問題を切り離す”ことで、相手を見るのではなく、交渉する問題を注視することで不本意な合意を避けることができる。もし相手が攻撃的な態度をしていても、相手の態度にとらわれることなく、冷静な態度で交渉にのぞみたいところだ。
交渉力がある人は“複数の選択肢を考える”
交渉力のない人は、精神的に余裕のない状況では、満足のいく交渉を得るのは難しいと著者は語る。相手が目の前にいるときは、緊張してしまい、ついつい交渉ではなく相手に集中して視野が狭くなってしまうそうだ。また著者は、大きな利害が絡んでいると創造的なアイデアは浮かんできにくいとも主張している。
これらの問題に抵抗するには、一定の時間を確保し、共通の利益を増やしつつ、対立する利害をうまく調整できる解決策のバリエーションを検討するのが有効である。合意にすぐ飛びつかずに、一呼吸おいて、「お互いの利益に配慮した複数の選択肢を考える」のだ。
交渉力を高めるということは、単に自己の利益を追求するものではない。独りよがりは決して交渉とはいわない。相手を論破しようとするのでは、ただの議論に留まってしまう。今回の紹介で、周りが見えなくなってしまったら交渉はおしまいだということがわかっていただけだろうか。
本書には、交渉の一発逆転を果たす方法や、100%相手を納得させる方法などが紹介されている。「合意をつくる技術」は骨の折れる作業であるが、本書で交渉力を身につけて実践してみてはいかがだろう。
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