ウォルト・ディズニー社。言わずと知れたアメリカの大企業である。彼らのつくりだすアニメーションや遊園地は、世界中の人々の心を捉えて離さない。この記事を読んでいる方々の中にも、“夢の国”に訪れたことのある方は少なくないだろう。
ところで、ディズニー・ワールドなどのディズニーが手がけたアミューズメントパークには、ゲストを喜ばせ、また来園したくなるような「魔法の仕掛け」がたくさん隠されている。
本書『ディズニー7つの法則』は、アメリカにあるディズニー・マジック・キングダムのキャスト(従業員)が、ゲスト(来園者)の心をつかんで放さないために何をしているかを全編を通じて紹介している。
今回は本書の中で書かれている、ディズニー「成功の魔法」をかいつまんで紹介したい。
ディズニー「成功の魔法」#1:こだわりを見逃さない。
by Phil Roeder マジック・キングダムは、メインストリートにあるヒッチングポストという杭(上の写真)から シンデレラ城の建て方、ホテルの色まで、細部にこだわってつくられている。オリエンタル・ランドが細部にまで徹底的にこだわるのには、他ならぬワケがあった。
ヒッチングポストと呼ばれるこの杭は、毎日磨かれ、馬の頭の上の部分は毎晩取り外して塗り直されているそうだ。さらに、毎晩塗り直すだけではなく、塗装作業の開始時間をその日の温度と湿度によって変える。これは、翌朝の開園時刻までにペイントが完全に乾いている状態にしておくためである。
なぜこのような細かい部分に手間をかけるのだろうか? たいていの人は、絶対に気づかないことであろうが、キャスト(従業員)はゲスト(来園者)が毎回パークに来るたびに新しい発見をできるような配慮を欠かさずしている。
それは、ゲストに魔法をかけ続ける(リピーターを増やす)ためには、どんな細かいこともないがしろにしてはいけないという信念があるからだ。
これはどの企業にも当てはまることだ。新しい発見こそなくていいかもしれないが、細かいところまでサービスに気をくばることで、顧客は「この企業は、管理がきちんと行き届いている」という印象を受け、顧客からの信用を保ち続けることができるからである。
ディズニー「成功の魔法」#2:「見えない」ところまでこだわる
先ほどは「細かいところにこだわる」ことについて紹介したが、今度は「見えないところにもこだわる」秘密について考えてみよう。
著者はここで、マジック・キングダムのメリーゴーラウンドを例に挙げている。マジック・キングダムのメリーゴーラウンドにはなんと、ペンキではなく23金が使用されているのだ。一見、ペンキも金箔も見分けなんてつかないだろう。キャストでさえ分からないはずだ。しかし、キャストはこのことを全員知っているのだ。
では、なぜペンキではなく、金箔でないといけないのだろうか? 見分けがつかないのなら、コストパフォーマンスの良いペンキを使った方が良いに決まっている。それは、キャストの心構えに関係していた。
メリーゴーラウンドに金箔を使用することは、ゲストがいかに大事な存在かキャストに思い出させてくれるはたらきがあるのだ。
「常に顧客のことを考えてサービスを提供する」。このことを思い出させてくれるトリガーの役割を金箔は担っている。ひと手間をかけることで従業員のパフォーマンスが上がるなら、そのひと手間を惜しまず採用すべきなのである。
ディズニー「成功の魔法」#3:社員の功績をきちんと評価する
3つ目に紹介するディズニーの成功の秘密は、社員の功績をきちんと評価することだ。例えば、本書『ディズニー7つの法則』では、“ゲスト・サービス熱狂カード”なるものを紹介している。
このカードには、名前の通り、ゲスト・サービスに熱狂したことを認定すると書いてある。マネージャーはいつもそのカードを持ち歩き、感動的なサービスをしたキャストを見つけたら、お礼の言葉と一緒にそのカードを渡す。受け取ったキャストはそのカードに名前を書いて、抽選箱の中に入れる。月末になると抽選会が行われ、当たったキャストは賞品がもらえるのだ。
ちなみに、カードを渡す基準は9つある。今回はサービスの基準5つを紹介しよう。
この5つである。残りの「チームワークの4つの基準」は本書を読んでからのお楽しみとしてここでは明かさないが、どれもサービスに欠かせない要素ばかりである。
このように、評価基準をきちんと設け、一人ひとりに向き合って評価していく姿勢は、一般の他の企業でも真似していくべき姿勢であるといえよう。
今回紹介した秘密はほんの一部にすぎない。本書『ディズニー7つの法則』は他にも、「魔法をかけ続ける」秘密や、「人材の集め方」の秘密など、まだまだ色々な秘密を紹介している。この一冊が、ディズニーの秘密を網羅しているとは言い難いかもしれないが、付録にも「リーダーのツール・キット」というディズニーに学んだことを職場で活かせるようにまとめてある興味深いレッスンが紹介されている。
本書を読んで、ディズニーが好きな人も、そうでない人も「なるほど」と唸ってしまうような秘密を新たに発見してほしい。
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