2015年10月29日。球団史上初のシーズン二連覇を果たし、球団の歴史に新たな1ページを刻んだ福岡ソフトバンクホークス。監督就任1年目でチームを優勝に導いた工藤公康監督に、法人会長である王貞治氏、そしてチームのオーナーである孫正義氏(以下、敬称略)。ソフトバンクホークスは、あらゆる面で素晴らしい指導者に率いられたチームだといえる。
そう、今回の主役はソフトバンクの創業者にして、同社の代表取締役社長である孫正義。米経済誌・フォーブスが発表した世界長者番付番付2015年版によれば、その総資産は141億ドル(約1兆7000億円)。UNIQLOを展開するファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏に次いで日本人で2番目、世界で75番目のお金持ちとなっている。
今回はそんなビジネスマンであれば誰でも知っているプロフェッショナル・孫正義の名言にフィーチャーしていこう。そこには孫正義のビジネスマンとしての哲学、そして未来を担う若手ビジネスマンに向けたメッセージが込められていた。
「孫正義」という生き方
by nobihaya 孫正義の名言をご紹介する前に、まずは孫正義がどんな人間で、どんな人生を歩んできたのか簡単にご紹介するとしよう。孫正義の生まれは佐賀県の臼杵市。1957年という戦後の日本で生まれた孫正義は、在日韓国人の息子としてこの世に生を授かったが、幼少期は差別に遭ったという。
中学卒業後は久留米大学附設高等学校に入学するも、たったの1年で中退し、渡米。米国のホーリー・ネームズ・カレッジ英語学校(ESL)に入学するという決断を下す。そんな一見破天荒にも見える孫正義の人生の背景にあったのは、司馬遼太郎が書いた一冊の小説『竜馬がゆく』だったという。小説に憧れて高校を中退し、渡米するなんて夢に溺れた阿呆のやること、と思われがちだが、これが孫正義の人生を大きく変えることになる。
その後、カリフォルニア大学バークレー校経済学部に進学し、その在学時、シャープに自動翻訳機を売り込んで得た資金1億円を元手に、米国でソフトウェア開発会社の「Unison World」を設立する。大学卒業後、日本に帰国した1981年、福岡県で「日本ソフトバンク」を設立。これからの経歴は言わずもがなだろう。成功への階段を一歩一歩登って行ったのだ。
孫正義には日本名もあり「安本」というのだが、彼は事業設立時に孫正義という名前を変えはしなかった。当時はまだ朝鮮人に対する差別色も強かった頃合い。就職では間違いなく差別され銀行も絶対金を貸さない、お前の認識は甘い、ハードルは十倍あがる、わざわざ好んでその難しい道を行くのか、と家族からは猛反対されたという。
それでも孫正義は自分の名前に誇りを持ち、プライドを持ち、自らの名前で勝負することに決めた。その際、「たとえ10倍難しい道であっても、俺は人間としてのプライドを優先したい、俺はどれだけ難しい道だって堂々と正面突破したいんだ」と答えたという。
孫正義は韓国人というプライドを自分に刻み、その上で日本ソフトバンクを立ち上げ、そして成功へと導いた。その背景にあるのは、孫正義という人間が持ち続けた「己」を曲げないという姿勢なのかもしれない。
孫正義がビジネスマンに捧ぐ六つの名言
孫正義の名言「志」
夢を持つことの重要性に対して、孫正義が放った名言。覚えているだろうか、2008年にソフトバンクがテレビで流した「白戸家」のCMを。そのCM中でお父さん(=犬)が唱えた“Boys be ambicious"という言葉は、ウィリアム・スミス・クラーク博士の名言で、“少年よ大志を抱け”という意なのだ。
大きな「志」を持てる人間こそ、真の成功者に成り得ると名言の中で語る孫正義。朝鮮人と差別を受け、阿呆だ馬鹿だと起業を非難される中でも、大きな志を持ち続け成功に導いた孫正義だからこそ放てる名言ではないだろうか。
孫正義の名言「常に攻めの姿勢」
時に、日本企業に足りないものとして、「競争意識」という言葉が引き合いに出されることが多い。日本の企業は他社の動向に興味を抱けず、自社の利益ばかりに、目先の目標ばかりに目が眩んでいると。
その点、孫正義は常に世界を、周りを意識しているという。一企業のトップを務める者として、現状に甘えて慢心することなく、常に周りを見ようと心がける姿勢は見習うべきではないだろうか。
その上で決断するにも、実行するにも、「10秒以上」の時間をかける必要はないともしている。どれだけ悩んでも答えのない問いは必ず存在する。その時にそこで立ち往生するのではなく、自分で決断して行動に移すことのできる者。それが波乱万丈な人生を歩んできた孫正義なりのチャンスの掴み方なのかもしれない。
孫正義の名言「逆境」
「正面突破」という言葉は、孫正義の数ある名言の中でもよく見かける言葉のひとつだ。その言葉の手前にある言葉。それは「困難」だ。逆境とも向かい風とも呼べるシーンは、ビジネスマンであれば誰でも経験するもの。その困難には正面突破しなくてはならない、そう孫正義の名言は教えてくれる。
では、一体なぜ正面突破にこだわるのか? それは、正面突破し乗り越えたというその経験こそ、ビジネスマンにとって、特に若手ビジネスマンにとって最も重要な経験になるからだ。人生に回り道なんてない。ラクをせず、目の前の苦境に正面からぶつかった経験とその積み重ねがビジネスマンにとっての財産なのだ。失敗するか成功するかは関係がない。むしろ、失敗も必要だ。躓いても転んでもそこから這い上がる術を、経験として蓄えておくこと。若手ビジネスマンにこそ伝えたい経験の極意だ。
ビジネスマンであれば、孫正義の名言から学べることはたくさんあったと思う。常に大志を抱き、攻めの姿勢で逆境に立ち向かう姿勢。若手ビジネスマンとしての在るべき人間像が、孫正義の名言からは浮かび上がってくる。
常に前へ、前へと躍進し続けようとするこういった若手ビジネスマン像は、同時に孫正義の行動哲学でもある。一経営者となった今でも、孫正義の仕事に対する考え方の根幹はブレていない。
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