「最近の若者は覇気がない」と言われ、耳が痛い思いをする人は少なくないだろう。特に、世間から「さとり世代」「ゆとり世代」と揶揄されるようなこれからの日本を背負っていく世代には、出世する意義やお金、権力を手に入れる意義がわからないという人も多いかもしれない。
本書『負けてたまるか! 若者のための仕事論』では、伊藤忠商事の元社長であり、現在は同社の相談役を務める丹羽宇一郎が、意欲のないと批判されてしまう現代の若者たちに向けて「人は仕事、読書、そして人で磨かれる」と伝えている。「仕事は人生の喜びを深くする」と主張する丹羽宇一郎にとっての「人生の中の仕事」とは何であろうか。ここでは、丹羽宇一郎の語る「仕事哲学」の一部を紹介したい。
私たちは何のために仕事をするのか?
あなたは、人生において何のために働いているだろうか? お金を稼ぐため? それとも自己実現のためだろうか? 丹羽宇一郎は、仕事の目的を「自分を磨き、皆と喜びを分かち合うため」であると定義している。
そもそも、「今の仕事では自分を磨くことなんかできやしない」と不満を持つ人も多いかもしれない。丹羽宇一郎自身も、伊藤忠商事に入社した頃は仕事に不満を感じ、会社を辞めて法科大学院に進学しようと考えていたという。しかし、卒業した法学部の教授から「入社して数ヶ月か数年で仕事の全部がわかったという気になるのは間違っている」と諭され、退職を踏みとどまったのだ。
今やっている仕事が一生続くわけではないのだから、仕事内容に不満があったとしても、仕事をすぐ辞めるべきではないのである。
さらに、周りの人の「傍(ハタ)」を「楽(ラク)」にすることがハタラク意義であり、自分以外に目を向けることが大切であると丹羽宇一郎は述べている。「自分は何のためにハタラクのか」という自負心があれば、自然と力が湧き、今の仕事とも向き合いやすくなるだろう。
人生に、「空いた時間」はない。
人は仕事で磨かれるものであるが、読書によっても磨かれる。丹羽宇一郎の新入社員時代の給料は、全て飲み代と本代に消えてしまっていたらしい。暇さえあれば、本を読み、仕事の資料に目を通していた。本は年間150冊ほど必ず読んでいた。
新入社員や、若い社員の「空き時間」と呼ばれるものは、実際の「空き時間」ではないのだ。「空き時間」は仕事のために勉強する時間であり、読書をしたり、仕事の資料を読み込んだりすべきなのである。丹羽宇一郎曰く、読書は人生を豊かにするツールである。
仕事に直結する本などは、本屋でもたくさん並んでいる。通勤電車の中でも、寝たりスマホのゲームをしたりせずに本と向き合うことで、教養が身につき、今後の人生の豊かさが格段に違ってくるだろう。
会社は人間社会の縮図
自分の価値観をしっかりと持つことは大切である。しかし、自分本位になってしまってはいけない。自分本位になってしまっては、人間関係もうまく築けない。会社というものは、人と人との付き合いであるため、人間関係を良好に構築していくことも仕事のうちなのである。
また本書では、職場以外で職場の人間(上司や部下)と関わることに気が進まない若者が多いことにも言及している。職場の人間、特に人生の先輩でもある上司と飲みに行くことは、上司の過去の経験や、人生における失敗談を聞かせてもらえるチャンスだと思い、行ってみるべきであると丹羽宇一郎は述べる。
もし、関係ない話が永遠に続きそうだと予感したそのときには、お先に失礼してしまおう。酔っている上司は、あなたが帰ったことを覚えていない確率が高い。
本書では、いかに仕事で人生を充実させるか、という視点で数多くの仕事論が語られている。人生を仕事に捧げろとまではいわないが、仕事によって人生が豊かになっていくのであれば、こんな良いことはない。
「頭でわかっているが、実践できていない行動」は、たくさんあるはずだ。本書を読んで、人生における自分の仕事への正しい向き合い方をもう一度、一から見直してみてはいかがだろうか。
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