HOMEビジネス 企画のプロフェッショナル、CCC創業者・増田宗昭。生活を変革する世界一の“企画”アタマに迫る

企画のプロフェッショナル、CCC創業者・増田宗昭。生活を変革する世界一の“企画”アタマに迫る

大倉怜士

2015/10/19(最終更新日:2015/10/19)


このエントリーをはてなブックマークに追加

企画のプロフェッショナル、CCC創業者・増田宗昭。生活を変革する世界一の“企画”アタマに迫る 1番目の画像
出典:ja.wikipedia.org

 「企画」というものは、ビジネスマンにとって切っても切り離せないもの。新しいサービスを提案する際や既存の概念を打ち破った新提案をする際に、企画というものは絶対に必要になってくる。

 新卒入社した会社で二年目に任された商業施設『軽井沢ベルコモンズ』の開発から、今日のTSUTAYAの前身である「蔦屋書店」の創業、それらをことごとく成功へと導いてきたのは起業家・増田宗昭氏(以下、敬称略)だ。日本最大のレンタルチェーンを築きながらも、本質は企画業であり、目指すは「世界一の企画会社」というカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の代表取締役社長CEO・増田宗昭の成功の裏には、40年を超えるビジネスマン人生で培ってきた「企画力」があった。

うちは企画会社です。CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)は企画会社ですから、企画を出すことで世の中に貢献したいのです。

出典:増田宗昭

 今回は10月19日放送のNHK『プロフェッショナル〜仕事の流儀〜』に先駆け、増田宗昭という人物の40年を超える仕事歴から、増田の持つ「企画」の哲学にフォーカスして迫っていこう。

企画のプロフェッショナル・増田宗昭とは?

企画のプロフェッショナル、CCC創業者・増田宗昭。生活を変革する世界一の“企画”アタマに迫る 2番目の画像
by Joi

 1951年に大阪府枚方市でこの世に生を受けた増田宗昭。それから54年の年月が経ち、経済誌・フォーブスによる2013年の番付「日本の富豪50人」では、日本人の中で39番目、その総資産は8.5億ドル(約1000億円)となっている(日本円換算は10/15日現在、1$=120円)。

 日本の大富豪にも名を連ねるそんな増田宗昭の経歴を簡単にご紹介しておこう。大学は同志社大学経済学部。同大学卒業後の1973年には、増田宗昭にとってビジネスマン人生の皮切りとなる株式会社鈴屋に入社することになる。

 増田宗昭が鈴屋を退社したのは1982年の春先。その時に出た200万円という退社金の半分、100万円がTSUTAYAの前身である蔦屋書店の開業費となった(100万円で足りない分は、全額借入だったという)。

 蔦屋書店の成功の秘訣は後ほどとして、増田宗昭はその後、1985年に企画会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を創業し、事業子会社となったTSUTAYA(蔦屋書店)の運営を引き続き行ってきた。

 増田宗昭はその他にも、株式会社ディレク・ティービー社長や株式会社アイ・エム・ジェイ会長、株式会社角川グループホールディングス取締役など、様々な会社でその手腕を発揮してきた人物でもある。

 まさしくビジネスマンの成功者といった感じだが、増田宗昭は決して学力が優れていたわけでも、運に恵まれていたわけでもない。増田宗昭というビジネスマンが持っていたのは、自らの手で道を切り開く勇気と確かな経験から成る企画力だったのだ。

増田宗昭「出来ないことをやるのが仕事の本質だ」

常識の外に、未来はある

出典:増田宗昭

 増田宗昭のビジネスマンとしての最たる武器は、新しいビジネスを生み出す「企画力」にある。では、サラリーマンから起業家、経営者へとステップ・アップしていった増田宗昭の企画力とは一体どのようなものなのだろうか?

 話はまだ増田宗昭がサラリーマンとして鈴屋に勤めていた時のこと。彼は人生の転機ともなるビジネスの成功を勝ち取る。それは入社二年目で任された大任・軽井沢ベルコモンズという商業施設の開発責任者の時であった。

 とはいえ、このとき増田宗昭に開発責任者を任せた上司は「誰がやっても一緒だ」という理由で、何の期待もせず増田宗昭にその任を委ねたに過ぎなかった。しかし、鈴屋にとって新しいビジネスチャンスとなる軽井沢ベルコモンズは、増田宗昭の手腕によって成功することになる。

 能力開発、ネットワーク、志を培う場を継続的に提供することを目的としたカンファレンス「あすか会議 2013」に登壇した増田宗昭は、当時のことをこのように語っている。

それが結果として大成功した訳だが、そのときに感じたのは、「出来ないことをやるのが仕事の本質だ」ということだった。

出典:カルチュア・コンビニエンス・クラブ増田宗昭社長「企画という生き方 ...

 当時の増田宗昭は、商業施設の運営方法はともかく、宅地建物取引業法、建築基準法、税金等について全く知識がないまま開発責任者となった。「できないこと」とはまさしくできないことで、当時の増田宗昭は、そういった自分には無い知識を頭の中に叩き込むことから始めたのだ。

 これは自分が開発責任者だからという理由と共に、自分がこのビジネスにおける代表者なんだ、という自覚に起因していた。自分がビジネスの軸として機能しなければならない。どんな企画を打ち出すにしても、まずは自分がその企画の内実についてしっかりと理解していなければならないのだ。

増田宗昭がTSUTAYAで実践した「ライフスタイル×企画」

 ここからは、増田宗昭というビジネスマンと切っても切れない関係にあるTSUTAYAの成功から、増田宗昭の企画力を見ていこう。TSUTAYAの前身である蔦屋書店の1号店は、前述のように、増田宗昭が鈴屋を退職した際の退職金200万円の半分、100万円(残りの100万は家族へ)を元手に創業された。

 なけなしの資金を元手に創業された1号店は、わずか32坪だったという。ただ、そんな小さなビジネス空間だからこそ創り出せるビジネスの形がある。増田宗昭は、頭の中でアイディアを巡らせた。それが今のTSUTAYAの在り方にも繋がっているのだ。

TSUTAYAの本質は何か。レンタル屋とはよく言われるし、最近では本屋あるいはカフェと言われることもあり、分類出来ない新しいビジネスモデルだと思う。ただ、僕は創業時からライフスタイルを選ぶ場にしたいと思っていた。だから1号店出店にあたって銀行に提出した借金申込書の1ページには、「1980年代における新しいライフスタイル情報の提供拠点をつくりたい」と書いた。

出典:カルチュア・コンビニエンス・クラブ増田宗昭社長「企画という生き方 ...

 TSUTAYAの本質について、このように語る増田宗昭。増田宗昭の発言に度々出てくるこの「ライフスタイル」という言葉。これは増田宗昭というビジネスマンの企画力を裏付けてくれる大事な指標になっているのだ。なぜだろうか? それは、人々のライフスタイルに密接したモノほど、ビジネスチャンスになり得るからだ。

私の毎日は映画、音楽、書籍といった世界観やライフスタイルを表現するメディアとつきあうことです。そうした表現物に常に接しているから世の中の空気がつかめるのかもしれません。

出典:増田宗昭

 増田宗昭が重視するライフスタイルとTSUTAYAの関係性。つまり増田宗昭は、TSUTAYAという空間と人々のライフスタイルが密接に結びつくように、TSUTAYAというサービスをクリエイトしていったのだ。

 その代表例が、TSUTAYAとスターバックスが手を結んだ「Book & Cafe」という取り組みだ。Book&Cafeはコーヒーの香りを楽しみながら購入前の本をカフェテーブルでゆっくり選ぶことができ、コーヒーを片手に書棚の前で本を選ぶこともできるという新しい書店のスタイル。

 コーヒー片手に読書という、ありふれていそうで意外となかったライフスタイル空間を人々に提供したのだ。本とコーヒーという、人々のライフスタイルと強固に結びついた双方を融合させることで、まったく新しい空間体験を実現したのだ。

ネットだけ見えていても駄目。お客様が見えていないと。ネットは単なるツールですから。

出典:増田宗昭

 では、そういった人々のライフスタイルを知るにはどうすればいいのか。それはPC上に流れてくる膨大な数字では分からない。自分が人々のライフスタイルの一員となり、直に体験すること。そうすると自然に見えてくるモノがある、増田宗昭はそのように考えている。

増田宗昭の考える「信頼される企画」とは?

いまの時代、モノを売るのに営業スキルはあまり役立たないと思うんです。大事なのは信用。会社の信用であり、個人の信用です。「あいつが言うんだから買ってみよう」と思ってもらえるかが勝負です。

出典:増田宗昭

 また、どれだけ新しいビジネスチャンスを作り出したとしても、それを信頼し、受け入れてくれる第三者が必要不可欠なのは明々白日だろう。結びに、ビジネスマンとして大成功を掴んだ増田宗昭が語る、「企画における信用の大切さ」についてご紹介しておこう。

新しい企画は、実現するまでは形が見えません。企画会社は形の見えないものを人に売らなくてはならないんです。そして、形の見えない、コンセプトの説明が必要な商品については、トップ営業が大切です。相手に社長としての信用を提示して営業しなくてはなりません。

出典:増田宗昭

 それには個人の信頼もさることながら、会社を背負って立つトップに対する信頼が大きく影響してくる。「あいつが社長か……」と思われてしまっては、企画の信憑性にも関わってくる。会社のトップ足るもの、社内だけでなく、社外からもしっかりとした信頼を勝ち得なければならない、と増田宗昭は語っている。


 一介のサラリーマンからなけなしの元手金で起業し、大成功をその手に掴んだビジネスマン・増田宗昭。彼はとびきり頭が良かったのでも、生まれが良かったわけでもない。

 彼にあったのは、やはりそのビジネスチャンスを掴む行動力と数多のビジネスシーンで得てきた経験値、そしてそれに基づく企画力だったのだ。ビジネスマンとして成功を掴んだ増田宗昭の仕事の流儀を知ることは、あなたのビジネスマン力を上げるきっかけになることうけあいだ。

hatenaはてブ


この記事の関連キーワード