U-NOTE読者の中にも、ギャンブルに興ずる人は多かろう。パチンコから麻雀(雀荘などで)、競馬まで、ギャンブルの領域は多岐に渡っている。そんなギャンブル界の帝王として君臨しているのがカジノであり、アメリカ・ラスベガスやマカオなどはカジノの聖地として名高いだろう。
そんなギャンブル界の帝王・カジノも、日本では禁止されているというのが実情となっている。その一方で、2020年の東京オリンピックに向けたカジノ法案(カジノ合法化)への取り組みも活発になってきている。
キャピタル&イノベーションの調査によれば、2020年以降の日本におけるカジノの市場規模は2兆円を越えるという推測も上がっている。一大ビジネスとなりそうなそんなカジノは、果たして本当に日本で実現(成功)するのだろうか。今回は世界各国のカジノ市場を参照しながら、「日本とカジノ」という問題について考えていこう。
急成長するアジアのカジノ市場
by aresauburn™ アジアにおけるカジノの市場規模は急速な成長を遂げており、アジアにおける市場規模は約6.2兆円(日本は除く)といわれている。一方、北米は7.2兆円、欧州は7500億円の市場規模と、アジアのカジノ市場規模は北米を僅かに下回っているというのが現状だ。
とはいえ、これらはあくまで日本を除いた場合での市場規模。ここに日本が加われば、ほぼ確実に北米の市場規模をアジアは追い抜くことになると予測されている。
アジアと北米がここまでカジノ市場を拡大できたのには、「伝統がなかったから」という点に集約できる。伝統があった方が良いじゃないか!という声が聞こえてきそうだが、ギャンブルのようなエンタメ産業においては、必ずしも伝統や歴史といったバックグラウンドがマストなわけではない。
ヨーロッパでは19世紀後半から受け入れられていたカジノだが、アジア・北米の諸国は、20世紀半ばごろまでカジノを合法としていなかった。アメリカは1931年にラスベガスが。そして、マカオがカジノ都市として有名になったのも、実は21世紀以降なのだ。
ゼロから新しい「経済戦略」としてのカジノ運営は、長らく非合法化されていたアジアや北米市場だからこそ、スムーズに進んだのだ。固定観念に囚われない自由な経済戦略が、アジア・アメリカにはできたのだ。
アジア各国のカジノ市場事情
アジアにおけるカジノ市場の内訳は、トップがマカオの4.5兆円、続く2位のシンガポールが6000億円、3位のオーストラリアが3500億円となっている。やはりアジアでは、マカオはダントツの市場規模を誇っている。
トップとの差は大きいとはいえ、注目したいのは2位のシンガポール。あまりギャンブルのイメージが湧いてこないシンガポールだが、実は東南アジア随一のカジノ場として、アジア各国から旅行がてらにカジノというシステムが構築できている国なのだ。
また、2000億円の市場規模で第5位となっていたフィリピン。フィリピンはシンガポール以上にカジノ産業に手を入れている。今、最もアジアで賭場の建設が盛んだとも言われているフィリピン。安値の観光地として人気急上昇中のフィリピンは、それに付随するカジノ産業を活発化させることで、いっそうの経済発展を目指していると推察される。
アメリカ市場は行き詰まり……?
アメリカには現時点で計930近くのカジノが稼働している。これは他国と相対的に比べても明らかに多量であり、それゆえに供給過多となってしまっているというのが実情だ。カジノとカジノの競争関係が過当競争になってしまっているのだ。
アメリカはマカオやシンガポールとは異なり、広大な土地を持つ国家。アメリカが国家政策としてカジノ政策をしていくのには限界があり、それに起因し、カジノの供給量も限定することができないまま21世紀に入ってしまった。
無論、一度誕生してしまったカジノを減らすことは至難の技なので、この現状を打破するのは非常に困難と思われる。それゆえに、この先のアメリカにおけるカジノ市場は行き詰まることが推察されている。
カジノの発祥地・欧米のカジノ市場は縮小……!
アジアは急成長を見せ、アメリカでのカジノ市場は行き詰まりを見せる中で、先述の通り、カジノ発祥の地・欧州でのカジノ市場は7500億円と、億円産業にまで縮小してしまっている。欧州全体(EU加盟国)のGDPの規模が米国とほぼ同じ規模であることを考えると、その市場規模の小ささがわかるだろう。
すでに17世紀から、その基盤ができていたという欧米のカジノ。その内訳を見てみると、トップがフランスで約2300億円、続くイギリスでは1100億円と、発祥の地らしからぬ市場規模にまで縮小してしまっている。
こういった欧米におけるカジノ産業の衰退の背景には、カジノの収益力を集客力にフィードバックさせる仕組みが構築できなかったという問題がある。米国やアジアでは、行政側が施設の設置場所と量を適正コントロールする一方、カジノ売上税を低く設定し、事業者に再投資余力を与えるなどの施策が取られた。
その一方、欧州のカジノ衰退は、古くからの体制が染み付いていたという点と、小型のカジノが分散して存在しているため、ラスベガスやマカオのようなクラスター効果(集積効果)が生まれなかったという2点に大きく起因していると考えられている。
また、小型のカジノが欧州に多いという点に関して言えば、カジノを始める事業者がそもそも小粒であるという問題がある。上場企業の最大手でも、カジノ部門の売上高は300億~400億円の規模感になっており、これはシンガポールやマカオなどと比べても一桁は違うといった具合だ。
「日本×カジノ」は実現(成功)するか否か。
さて、以上が世界各国のカジノ事情だったが、ここからは「日本×カジノ」という問題について掘り下げていこう。とはいえ、まずは特定のカジノ・シティがどのように成功していったのか、という点から説明していくことにしよう。
マカオやラスベガスの「クラスター効果」
まずは、マカオやラスベガスに見られるクラスター効果、もとい集積効果というものが、カジノの現場で如何に効果を発揮してくるのかという点をはっきりしておいた方が良いだろう。
クラスター効果を取り入れたモデルケースとして名高いマカオやラスベガス。両地域はカジノを狭い空間に集積することで、エリア全体としての魅力を増幅させ、集客力を高めたのだ。事業の収益は、競争力に比例する。そして、多数の施設があるため、顧客のリピート率を上げることにも成功した(飽きさせない)。
クラスター効果の目的を端的に説明するならば、「カジノといったらマカオ!」「カジノといったらラスベガス!」といった認識を人々に植え付けることに尽きる。「カジノに行きたい=マカオやラスベガス」というマインドシェアを奪うこと、そして、一度来た顧客のリピート率を誘引することにある。
日本とカジノについて
これらの各国情勢から鑑みた上での結論を述べるならば、日本におけるカジノ産業はほぼ100%の確率で成功すると推察できる。
序章で述べたように、日本におけるカジノ産業の市場規模は2兆円を超えると予想されており、現状のアメリカ市場の行き詰まり、欧州の小規模化、そして2020年の東京オリンピック(これには間に合うか怪しいが)。全ての要素が、日本のカジノ産業にとっての追い風となってくれるだろう。
要点はやはり、カジノ産業をしっかりと政府主導で行っていくことだろう。政府がギャンブル政策を行うことを快く思わない人も少なくないだろうが、現状のアメリカのようなカジノ供給過多の状況を生み出してしまっては元も子もない。その点、島国である日本は、政府がカジノの数を把握することもそう難しくない。おまけに、他国からの影響も受けることが少ないという利点もある。
日本の富裕層の個人金融資産量は現時点において約450兆円とアジアではダントツのトップだ。日本の富裕層も旅行者と同じく、カジノに大金を注ぎ込んでくる可能性は十二分にある。
それと同時に、日本では「パチンコ離れ」も始まっている。これはギャンブルに飽きたのではなく、単にパチンコというギャンブルに飽きただけに過ぎない。こういったギャンブラーが、カジノに流れてくることもまた然りだ。
カジノというものが産業として日本へやってくる日も、そう遠くはないだろう。どういった企業がカジノ産業へ参画してくるか、そして、政府主導のカジノ戦略を構築できるのか。カジノ法案も含め、今後の動向に目が離せない。
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