高給な職業のトップバッターとして名を挙げられる医者だが、実は専門(内科や外科、精神科など)によってその年収も変わってくるということが、経済誌・フォーブスの発表によって明らかになった。
医者を目指している医学生ならまだしも、一般的には意外と知られていない医者の専門医別年収。それと同時に、年収・給料が高額であるということは、その道の専門医に需要があるということの裏返しでもある。今回はフォーブスの発表から、今求められている専門医について詳しく解説していこう。
〈米国版〉専門別・医者の平均年収ランキング上位15部門
15位 精神科医 / 平均年収:約2,800万円
15位に位置づけされた専門医・精神科医の平均年収は、22万6,000ドル(約2,800万円)となっている。上位15分野といっても、調査されたのは20分野であり、従って15位というのは給料の低い方にランクインされている専門医ということになる。
患者の精神状態を診断し、投与する薬剤、その投与量を決定する精神科医。年収は低いが、現代米国では「過去最大」の精神科医への需要があるという。
しかし、彼らが必要とされるのは主に入院患者の治療施設や農村地域で、その反面、若手医師の動向は都市部へと傾いていて、地方では慢性的な人材不足となっているのだ。それと同時に、地方での勤務な分、給料はなかなか需要に見合ってこないというのが現状なのだ。
14位 ホスピタリスト / 平均年収:約2,900万円
ホスピタリストとは、日本語で言うところの病棟総合医であり、比較的新しい種類の専門医となっている。要は、総合的な知識をもとに患者へ施術を施す医者で、これは米国の病院システムの中で生まれた専門医。
米国の医師は自らの専門に特化する体制のため、専門医が要らない患者などのケアがないがしろになりがちだった。そういった専門医の手にかかる必要のない患者のケア、一般外来などを担当するのがホスピタリストなのだ。
そんなホスピタリストの平均年収はいまのところ2,900万円ほどだが、医療の発達によって、その需要はますます高まっていくと予想されている。
13位 フィジアトリスト / 平均年収:約3,000万円
フィジアリストは、いわゆる施術後のリハビリを担当する専門医で、その年収は平均で24万4,000ドル(約3,000万円)となっている。慢性的な需要があり、今後予想される高齢化に伴い、その需要はますます大きくなっていくことだろう。
12位 産婦人科医 / 平均年収:約3,400万円
出産に関する一連の医療施術を担当する産婦人科医だが、意外と(個人的にだが)その給料は上位にランク分けされることなく、12位の27万6,000ドル(約3,400万円)にとどまった。日本では少子高齢化の影響か、産婦人科の数は減っているというのが現状らしい。
11位 神経科医 / 平均年収:約3,450万円
精神科医は、精神医学を専門とする医師であり、精神障害・精神疾患・依存症の治療を専門的に診察する医師免許を持つ。アメリカでは学士号を保持した後にも、4年間の精神科レジデントとしての研修を経なければならない。
10位 循環器科医(内科)/ 平均年収:約3,600万円
心臓を除く血管などの病気を担当する専門医が循環器科医(内科)で、その平均年収は29万1,000ドル(約3,610万円)。喫煙や飲酒、運動などの生活習慣から発生する病気に対応するため、生活習慣の指導なども循環器科医(内科)の仕事になってくる。
9位 呼吸器科医 / 平均年収:約4,100万円
呼吸器疾患をあつかう内科の専門医。気管および気管支、肺、胸膜のさまざまな病気が含まれる。すでに診断のついている患者のほか、咳、痰、血痰、喀血、息切れ、呼吸困難、胸痛などの症状をもつ人や、健康診断などで胸部X線写真の異常陰影を指摘された人などが訪れる。
8位 耳鼻咽喉科医 / 平均年収: 約4,150万円
耳鼻咽喉科医とは文字通り、主として耳や鼻から端を発する病気に対応する専門医で、平均年収は33万4,000ドル(約4150万円)。以前は気管・食道等も多く取り扱っていたこともあり、旧来の耳鼻咽喉科を標榜する医院等では「気管食道科」と標榜していることもある。
7位 一般外科医 / 平均年収:約4,200万円
日本では消化器外科とも呼ばれる一般外科医。その名の通り、消化器官を取り扱う専門医で、内科医に大別される。欧米等の一般外科学では消化器官以外に、外傷を取り扱う「Trauma surgery(外傷外科学)」という分野を含む場合も多い。
6位 救急医療医 / 平均年収:約4,300万円
外傷や感染症などの急な疾病・急性病態に対応する救急医療医の年収は、34万5,000ドル(約4,280万円)。しかし、アメリカでは国民皆保険制度が完全施行されていないにも関わらず、救急救命室には医療費支払い能力のない軽症患者も多く訪れるため、トリアージ(患者を優先度で選りすぐること)が行われることも少なくないという。
5位 皮膚科医 / 平均年収:約4,950万円
器具を使わずに見える範囲が皮膚科の担うところで、当然、皮膚を担当する専門医になってくる。とはいえ、皮膚といっても、範囲は爪や髪までに渡っている。つまり、目に見える全身が、皮膚科医の担うところとなっているのだ。
4位 泌尿器科医 / 平均年収:約5,100万円
これは言わずもがだが、泌尿器科医は、男性および女性の泌尿器の疾患と男性性器の疾患を対象とする専門医だ。詳しい詳細を知りたい方は、こちらを参照のこと(際どい表現を避けるため)。
3位 消化器科医 / 平均年収:約5,650万円
20分野の中でもトップ3に位置付けられる専門医・消化器科医の年収は、常識の域(一般人の)を超えた45万5,000ドル(約5,640万円)となっている。「胃腸学」がその語源であり、食道や胃など、消化を司る器官における疾患に対応する。
2位 整形外科医 / 平均年収:約6,150万円
49万7,000ドル(約6,160万円)の平均年収を稼ぐ専門医として、第2位にランクインされたのが整形外科医だ。アメリカにおける整形外科医への需要は年々高まるばかりで、それに比例して整形外科医の年収も上がってきているという。トップクラスの整形外科医は、年間80万ドル(約9,910万円)もの報酬を得ているという。
1位 循環器科医(心臓外科)/ 平均年収:約6,500万円
20分野の専門医のうち年収が最も高額だったのは、心臓外科を担当する循環器科医(心臓外科)で、その平均年収は52万5,000ドル(約6,510万円)となっている。人間における最重要器官を扱う専門医ゆえ、この高給も頷ける。
以上が米国における専門医別の年収ランキングだったが、1位の心臓外科を担当する循環器科医と精神科医では、年収の差が約3,200万円という結果になった。それにひきかえ、アメリカでの精神科医の需要は非常に高まっているともいう。
フォーブスのインタビューに対して、コンサルティング会社・Merritt Hawkins & AssociatesのTravis Singletonはこう述べている。
アメリカでの医者に対する需要は、内科医よりも外科医の方に傾いているというのが現状らしい。その一方で、精神科医に対する人々の需要も増えてきているというのもまた事実。これは、専門性に特化した医師体制であるアメリカだからこその問題だといえるだろう。
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