「正しいと思って使っていた敬語が実は間違いだった……」という経験をした人もいるのではないでしょうか。また、自分の言葉遣いに自信のない人もいるでしょう。
本記事では、間違いやすいビジネス敬語や二重敬語、「おっしゃられる」の正しい使い方などをご紹介します。
今一度、自分の使っている言葉が正しいのかを確認してみましょう。
- 正しいと思っていても、実は間違っていることも多い「バイト敬語」
- 使ってしまいがちな「二重敬語」
- 間違えやすいビジネス敬語について復習しよう
正しいと思っていても、実は間違っていることも多い「バイト敬語」
聞き慣れた言葉でも、間違っている敬語は多々あります。
以下では、ついつい使ってしまいがちな言葉や尊敬語と謙譲語の違いなどをご紹介します。
つい使ってしまいがちな「バイト敬語」
ファミレスやレストランに行くと、注文を確認するときに「~でよろしかったでしょうか」といわれたことがある人も多いのではないでしょうか。
よく耳にする言葉なので、敬語を使わなければいけない場面でついつい口にしてしまったことがある人もいるでしょう。しかし、「~でよろしかったでしょうか」は、バイト敬語ともいわれる間違った敬語のひとつです。
「よろしかった」は過去の表現のため、現在の行動に結びつけるのは適当でありません。「〜でよろしいですか」「〜でよろしいでしょうか」が適切な言葉遣いです。
尊敬語と謙譲語の違い
正しい言葉づかいをするためには、「敬語」の勉強をするのが不可欠です。
敬語には尊敬語・謙譲語・丁寧語の3つの種類があることを知っていますか?
以下では、尊敬語・謙譲語・丁寧語を詳しくご紹介します。「敬語を使うのが苦手だ」という人はぜひ参考にしてください。
尊敬語
尊敬語とは、話し手が相手に敬意を示すために使う言葉であり、動作をする人を高める言葉です。目上の人物を自分より一段高く持ち上げて話すと考えれば理解しやすいのではないでしょうか。
ビジネスシーンであれば、上司や社長、取引相手などが尊敬語を使う対象になります。
尊敬語は「お聞きになる」「お思いになる」のような「お〜になる」が基本です。しかし、「食べる」の尊敬語である「召し上がる」や「見る」の尊敬語である「ご覧になる」など変則的なものも多々あります。
謙譲語
対して謙譲語の主体は自分にあり、自らを一段下げへりくだった表現をするときに使います。行動を起こすのは自分であり、相手より一歩下に降りることで自然と相手を尊敬する表現になるとイメージしてください。
謙譲語は、尊敬語のようにこれといった傾向はなく、それぞれの謙譲語を丁寧に覚える必要があります。
例えば「聞く」の謙譲語は「拝聴する」、「思う」の謙譲語は「存じる」です。敬語を使いこなすためには、それぞれの動詞の尊敬語・謙譲語を覚えなければいけません。よく使う動詞の尊敬語・謙譲語を復習してはいかがでしょうか。
丁寧語
丁寧語は、「です」「ます」のように、相手に言葉を丁寧に伝えるものです。ビジネスシーンでは、丁寧語を使うことが常に求められています。
敬語の種類について改めて確認すると、知っている内容の用に思えますが、尊敬語と謙譲語の違いを把握できておらず、ごちゃまぜにして使っている間違いが多く見られます。
まずは、尊敬語として使う言葉、謙譲語として使う言葉を正しく認識することが大切です。
- 尊敬語:相手に敬意を示すために使う言葉
- 謙譲語:自らを一段下げへりくだった表現
- 丁寧語:相手に言葉を丁寧に伝えるもの
「おっしゃられる」は実は間違った敬語!
「〇〇さんがおっしゃられたことに関して……」のように使われる「おっしゃられる」という言葉を使ったことがある人もいるのではないでしょうか。
実は、「おっしゃられる」は間違った敬語。二重敬語と呼ばれる間違いをしています。
二重敬語とは、何なのかを以下で詳しくご紹介します。
二重敬語とは?
二重敬語とは、漢字のとおりに「敬語に敬語を重ねてしまう」という間違いのことをいいます。
「おっしゃられる」という言い方を今一度考えてみましょう。「おっしゃられる」は「言う」の尊敬語である「おっしゃる」と「〜られる」という尊敬語の2つの敬語表現を使っているのがわかるでしょうか。
このように、敬語に敬語を重ねる二重敬語は間違えやすいので、気をつけましょう。
敬語連結とは?
二重敬語と合わせて知っておきたい文法が「敬語連結」です。「先生がお読みになっていらっしゃる本」という表現は正しいでしょうか、間違っているでしょうか。
一見、「読む」の尊敬語である「お読みになる」と、「いる」の尊敬語である「いらっしゃる」を重ねて使っているから二重敬語なのではと思った人もいるでしょう。
しかし、「お読みになっていらっしゃる」は、二重敬語ではありません。敬語連結と呼ばれる手法で、「お読みになっていらっしゃる」は正しい表現です。
敬語連結とは、接続助詞の「て」によって、2つの敬語をくっつけたものです。別々に使っている2つの敬語を「て」によって結びつけたものなので、「お読みになっていらっしゃる」は間違いではありません。
正しい敬語の使い方に悩んだときには、二重敬語なのか、敬語連結なのか考えるとわかりやすいです。
おっしゃられるの正しい使い方
「おっしゃられる」は、二重敬語であることをご紹介しました。では、正しい言い方はどうなるのでしょうか。
二重敬語になっている「おっしゃられる」を正しく使うには、二重敬語ではなくす必要があります。「〜られる」をなくし「おっしゃる」とすると、正しい敬語になります。
つまり、「〇〇さんがおっしゃられたことに関して……」は「〇〇さんがおっしゃったことに関して……」が正しい日本語です。
使ってしまいがちな「二重敬語」
以下では、「おっしゃられる」のように日常で違和感なく使っているものの間違いである二重敬語をご紹介します。
二重敬語の間違いをしたくない人はぜひ参考にしてください。
「ご覧になられましたか?」
「ご覧になられる」は「見る」の謙譲語である「ご覧になる」と、「〜られる」という敬語表現を組み合わせた二重表現です。
そのため、「ご覧になられましたか?」を正しい表現になおすと「ご覧になりましたか?」となります。
「お越しになられました」「おかえりになられました」
「お越しになられる」「おかえりになられる」は、「お〜になる」と「〜られる」といった2つの尊敬語を組み合わせたものです。
「お越しになられました」は、正しくは「お越しになりました」です。また、「おかえりになられました」は「おかえりになりました」が正しい表現です。
間違えやすいビジネス敬語について復習しよう
二重敬語について詳しくご紹介しました。
二重敬語以外にも間違いやすい敬語はたくさんあります。以下では、間違えやすいビジネス敬語について詳しくご紹介します。
「ら抜き言葉」の敬語になっていないか要注意
「ら抜き言葉」には、気をつけましょうと言われたことがある人もいるのではないでしょうか。
「ら抜き言葉」とは、本来「ら」が必要な言葉遣いから「ら」を抜いて話す言葉です。
例えば、「お客様が来れない」「りんごは食べれない」のようなものが「ら抜き言葉」です。
正しくは、「お客様が来られない」「りんごは食べられない」です。
若者の間ではよく使われる言葉ですが、特にお年を召した人の場合は、聞き慣れない変な言葉に聞こえます。
そのため、カジュアルに話しかけられているように感じることもあるようです。
自分では自覚していないうちに「ら抜き言葉」を使っている場合もあるので、正式な書類やメールを作る際は、意識して確認するようにしたり、WordやGoogleドキュメントの校閲機能を使ってみてはいかがでしょうか。
「~の方」「~になります」
「~になります」という敬語も誤ってよく使われています。
例えば「商品はこちらになります」という敬語を聞いたことがある人も多いでしょう。
対象が変化するものなら「〜になります」といえるものの、変化しない対象に対して使ってはいけません。
「商品はこちらになります」は非常によく聞く敬語でありますが、間違いです。正しくは「商品はこちらです」か「商品はこちらでございます」といいましょう。
また、「ご注文の方(ほう)はこちらでよかったでしょうか」のように「〜の方」はよく間違って使われます。
「〜の方」は、「りんごよりみかんの方が好き」のように比較をする場合にしか使ってはいけません。とりあえず「〜の方」を付けるのではなく、比較をした場合にのみ使いましょう。
「お疲れ様です」「ご苦労さまです」
「お疲れ様です」「ご苦労さまです」は、よく使われる敬語表現です。
2つの言葉の違いがわかる人は少ないのではないでしょうか。
相手へのねぎらいの気持ちを伝える点では共通していますが、「お疲れ様です」と「ご苦労様です」は厳密に説明すると意味が異なります。
「お疲れ様です」は、部下が上司や目上の人間に対してのねぎらいを伝えるときに使われる言葉です。反対に、上司や目上の人が部下に使用する場合にも、「お疲れ様」というかたちで使用することもしばしば。世代を問わず使用できる、使い勝手の良い万能なフレーズなのです。
一方「ご苦労様です」は、目上の人間や上司が部下や年下の人に使用する言葉です。「お疲れ様です」と同様に、相手の苦労や頑張りをねぎらう意味が込められていますが、使用する際には相手との関係性を配慮しなければなりません。
- 「お疲れ様です」は、目下の人から目上の人に使用してもOK
- 「ご苦労様です」は、目上の人に使用すると失礼にあたるので注意
- 「ご苦労様です」は、「お疲れ様です」のように挨拶代わりには使用できない
「承知しました」「了解しました」「かしこまりました」「了承しました」
理解したことを伝える言葉は、たくさんあります。例えば、「承知しました」「了解しました」「かしこまりました」「了承しました」などがよく使われています。
「了解しました」は同僚もしくは目下に対して使う言葉なので、目上の人に使わないほうがいい言葉です。また、同様に「了承しました」は「それでいいですよ」という意味合いになるため、目上の人に使うのは避けましょう。
「了解しました」「了承しました」よりも、ビジネスシーンでは「承知しました(承りました)」を使うことが無難とされています。「承知しました(承りました)」は謙譲語であるため、取引先や目上の上司に対しても使える言葉なのです。
似たような言葉である「かしこまりました」もビジネスシーンで用いるのに適しています。
理解や納得をした際は、「承知しました」「承りました」「かしこまりました」を使うようにしましょう。
- 承知しました:ビジネスシーンで使うのに適している
- かしこまりました:ビジネスシーンで使うのに適している
- 了承しました:目上の人に使うのは避ける
- 了解しました:目上の人に使うのは避ける
正しい敬語を使うことは「マナー」ではなく「常識」
- 聞き慣れた敬語でも間違っている敬語があることを知る
- 尊敬語と謙譲語の種類を知り、二重敬語に気をつける
- 「ら抜き言葉」や「〜になります」のようなよくある間違いに気をつける
本記事では、間違いやすいビジネス敬語や二重敬語をご紹介しました。
「おっしゃられる」「おかえりになられる」などの二重敬語を聞いて、違和感を持てるようになるまで使い慣れるように意識して訓練してみてはいかがでしょうか。
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